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プロローグ「女神様がみてる」

初めまして、小説は初の投稿となります。そのため、色々と言葉を間違えているかもしれませんが、拙いなりにも頑張っていきますので宜しくお願いします。

読んで興味を惹かれたと思ってくださった方は、感想をくださると嬉しいです。


では、こんな駄文でよろしければ読んでやってください。


※投稿した後に修正など加えた箇所もあります。後書きの話などと食い違っていたら多分そこだと思います。ご理解お願いいたします。


 突然で申し訳ないのだが、あなたは神様というものを信じるだろうか?

 

 それは人によって信じるも信じないも様々だと思う。


 ではあなたは、女神様というものを信じるだろうか?


 俺は後者、当然のように信じない派であった。


 だが、今の俺ならはっきりと声に出して言えるだろう。


 『女神様は存在する』と……。




 もうすっかり日も暮れ、下校を告げるチャイムが響き渡る。生徒たちの話し声を背中に、俺こと神谷(かみや) (きょう)は、いつものように帰路についていた。

 午後の授業の疲れが抜けきらずに、ぼーっとしながら歩いていく。いつもと変わらない日常。……ことが起こったのは、そうしていつもの小さい交差点を曲がろうとした時だった。

 信号の色は青で、俺に危険はないはずだった。一寸先は闇とはよく言ったものである。なんと赤塗りの車がいきなりこちらの方へ猛スピードで突進してきたのだ。

 もちろんそんなことを予想だにしていなかった俺には、避ける余地などある訳がない。俺は棒立ちでその車の突進を受ける。正に一瞬の出来事だった。

 吹っ飛ばれされ、まるでスローモーションのような世界が俺を包み込む。おぼろげに見えた運転手の顔は真っ赤に上気していて、明らかな飲酒運転だということを俺にわからせた。


 くそっ……!!


 こんなクソ野郎のために俺は死ぬのか……!?


 それが、俺が最後に思い浮かべた言葉だった。




 グシャッ、という鈍い音が夕暮れの路地に響き渡った。







『…………完』


「勝手に終わらすなっ!!」


 何処からかの声に、鋭く俺がツッコミを入れる。


『よかった。魂までは損傷してはないようですね』


 またも聞こえてきた声に、俺は顔を上げる。……そこには、真っ白い空間に神々しく佇んでいる一人の女性がいた。薄い布を基調とした服装で、一般人とはかけ離れている。


「……あんた誰だ?」


 とりあえず思ったままの疑問を口にする。すると女性は、柔らかく笑うと俺の質問に答えた。


『私は女神、そしてここは死後の世界です』


「死後の世界……?」


 そこまで言って、自然と自分で思い出す。……先程のことを。


「……そっか、俺死んだんだっけか。ということは、さしずめここは天国ってわけか?」


『まぁぶっちゃけそういうことですね』


「かっるいなぁあんた……」


 驚きながら、そんなたわいのない会話をしている自分に自分でびっくりする。第一、オカルト否定派である俺がこんな世界の存在を感嘆に肯定してしまっている時点でどうかしてる。それだけ、先程の光景が生を望めないほどの悲惨なものであったということであろう。


『蘇りたいんだったら、蘇らせますけど?』


 あっけらかんと女性は言った。……その言葉に俺は呆然とする。


 だってそうだろ?


 生と死っていうのはもっとこう、どうあがいても変えられないみたいな不可侵性を持っているじゃないか。それを今、この女神らしき人は普通に『蘇らせますか?』などと俺に聞いてきているわけで……。


『そんなもんですよ。別にあなた悪いことして死んだわけでもないですし~』


「うおっ! 読むなよ人の心ん中を!!」


 神様というものにはプライバシーなどという概念はないのだろうか。俺は思わず叫んでしまった。

 ……とはいえ、俺もわざわざ死にたいわけでもない。蘇らせてくれるというのならそれは喜ばしいことだ。


『まぁ楽勝ですよ~。せいぜい羊五百匹数える間くらいの時間で終わりま~す』


「いや、それ結構長くね?」


『冗談です。それじゃあ、逝きますよ~』


「ねぇちょっと待って? なんかいくの字がめっちゃ怖いんだだけど」


 そんな俺のツッコミも虚しく、女神が何やら呪文のようなものを唱えると元々真っ白な世界が尚更真っ白になっていく。まばゆすぎる光に、世界が歪んでいくのを感じる。


「う、うおぉぉおおっ!?」


 そして、そのまま俺は意識を手放した。







 目を覚ますと、俺はベッドの上だった。不思議に思い周りを見渡してみると、クリーム色のカーテンと何かの機材が目にはいる。若干鼻をつく薬品の匂いを嗅いで、俺はここが病院の個室であることをようやく認識した。

 まだ虚ろな頭でさっきのことは夢だったのだろうかと考えていると、ふと、いきなりドアが開く。


「……お、お兄ちゃん! 良かったぁぁぁ!!」


「おぉ、京! 気が付いたのか!!」


「京!! 本当にもう、心配かけて……!」


 そのまま俺の元へ飛びついてきたのは、妹をはじめとした……俺の家族だった。

 妹は俺に抱きついてわんわんと子供のように泣きわめき、母さんはポロポロと涙を流していた。見ると父さんもうっすらと涙を浮かべているようで。


「みんな……。心配かけて、悪かった……」


 俺はじーんと胸が熱くなって、心からの謝罪を口にした。同時に、こんなに大切な家族がいるのに一瞬でも生きることを諦めた自分を恥じた。さっきのが夢であろうとなかろうとそんなことどうでも良かった。


 今はただ、また『ここ』に戻ってこれたことが嬉しかった。







 一週間後の夕方、俺は愛しの我が家に帰宅した。俺の体は危険状態から奇跡的なまでの回復を遂げ、何の後遺症も残らずに晴れて退院することができたのだ。

 ……あながち、あれは夢ではないのかも知れないと思った。

 その晩は、俺の復帰祝いに母さんが豪勢な料理を振る舞ってくれた。俺は思いっきり食べまくり、家族との久しぶりの柔らかなコミュニケーションを楽しんだ。

 そうこうしているうちにあっという間に夜になり、ほど良い眠気が俺を襲う。疲れがたまってるとも自分でも思っていたので、『病み上がりだし』と冗談めかし、早々にベッドに入って眠ることにした。






 翌朝、俺は目覚まし時計の規則的な音で目を覚ました。まだ惰眠をむさぼっていたい俺はそれに眉をしかめ、目覚まし時計を止めた。

 ……今の発言には語弊があるので、訂正をする。正確には止めようとした、だ。

 昨日までは余裕の距離で届いた目覚まし時計上部のスイッチに、なぜか今日は届かないのだ。何回手を伸ばそうと、結果は同じであった。

 仕方ない、と思い俺はベッドからゆっくりと起き上がる。そして眠いながらも目覚ましのスイッチに手をかけようとするが、一足先に伸びた俺ではない手によって遮られてしまう。

 ……俺の部屋に何で他の人間がいるんだ?


 不思議に思った俺は寝ぼけ眼で、同じベッドにいる相手の方を見る。相手も同時に俺の方へ視線を向けた。


 そして、同時に言葉を失った。




 俺の眼に映ったのは、間違いなく『俺』自身だったのだ。

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