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小噺  作者: 間宮 要
1/8

1〜3

1 ケッペキ

2 アブナイ

3 シアワセ?


1 ケッペキ


目の前で交通事故が起こった。軽自動車と、女性の接触。事故が多い道だと噂ではあったが、まさか事故の瞬間を見るとは思わなかった。

宙に舞う女性の姿と、何事も無かったかのように去って行く軽自動車に、一瞬、何が起こっているのか分からなかったが、すぐに我を取り戻す。

(助けなきゃ)

逃げた自動車を追おうったって無理な話だ。自分にできるのは、人命救助の為の応急処置。救急車を呼び、すぐに女性の元へ向かう。そして、女性の容態を確認する。

出血が酷い。腕や脚、頭も少し切れているだろうか。とにかく止血をしないと。

「……いで」

女性から声が聞こえる!意識はあるみたいだ。

「大丈夫ですよ。もうすぐ、救急車が来ます!」

意識があるなら助かる見込みはあるだろう。しかし、気は抜けない。しっかりと止血をしないと……

「触らないで」

「え?」

「止血は続けてほしいですけど……せめて手袋を……それも綺麗なので……」





2 アブナイ


(急がなきゃ……!)

午後2時頃、病院から連絡があった。もう80歳にもなる父親の容態が急変したそうだ。

ヘビースモーカーだった父は、二ヶ月前にとうとう肺がんを患った。毎日二箱を消費する吸いっぷりで、むしろ今まで肺がんにならなかったことの方が奇跡だ。

歳をとって、身体だってあんまり強くなくなったっていうのに、「いつ死んだっていいべ」とか言って、タバコを控えることを全くしなかった。俺や母が「少しは控えたら?」という勧めだって、一切耳に入れなかった。

(だからってよ、今死ぬこたぁねぇじゃねぇか)

仕事の真っ最中だったから、慌てて上司に断って、ものは散らかしたまま、サイフとスマホだけ持って車に乗ったのだ。

(頼む……間に合え)

ロクでもない人だったけれど、それでも俺の親父だ。感謝しても仕切れないものっていうのがある。死に目にも会えないようでは、息子として恥ずかしい。

国道に入ったところで、アクセルを踏み込む。焦る気持ちと、事故を起こしてはいけないという気持ちが交錯して、いつにない集中力が生まれる。一刻も早く、病院へ行かねば……!


ピーポーピーポー……

「そこの車。止まりなさい。黒の……」

残念なことに、親の死に目にも会うことはできなかった。




3 シアワセ?


「ねーねーB君!このバッグ欲しいんだけど〜」

僕の彼女は、上目遣いで僕のことを見る。彼女の視線の先には、少し高めのブランドもののバッグ。

全く、彼女にねだられたら、嫌と言えないな。

「買おうか?」

「良いの!?ありがと〜!」

そう。この嬉しそうな顔。この顔を見る時、僕は彼女と一緒になれてよかったと思う。

「君の幸せが、僕の幸せだよ」

「そう。じゃ、あなたといるより、A君といた方が幸せだから、彼の所に行くねー!」

今までで一番の、とびっきりの笑顔だった。




1はもはや狂気

2は運がなかったね

3はとってもやりきれないね

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