【幕間】寵愛を受けるのは、いつも魔女。だから、退治しなければならない。どんな手を使っても。
何もしない子だった。
でも、なんでも持っている子だった。
それが、憎くて堪らなかった。
それだけ。
言ってしまえば、それだけの事だ。
何もかもが憎くて堪らない。
どうして、ほかの女が産んだ子供を育てなければならないのか。
どうして、あの人は私の娘を見てくれないのか?
いや、理由は分かっている。
あの娘が悪いのだ。
なぜ早く死なないのだ。
さっさと死ねば良いのに。
生きてても、迷惑で邪魔でしかないのに。
それよりも、私の娘だ。
元気で朗らか。
誰からも、愛される。
そんな、愛くるしい私の天使。
でも、あの娘のせいで、あの、悪魔のような娘のせいで、私の天使は愛してもらえない。
自室の窓から、ふと外を見る。
そこには、あの娘。
おぞましい、血の色をした髪と瞳を持つ女。
前妻の、娘。
アレは魔女だ。
だから、退治しなければならない。
実の父親を誑し込む、魔女。
私と、私の娘から父親を奪い、その寵愛を一心に受ける魔女。
魔女の近くには、常に騎士が侍っている。
エルフの気高く、美しい、そして何よりも強い騎士が。
あの騎士だって、魔女よりも私の娘の横が相応しい。
魔女は退治しなければならない。
それには、まず証拠が必要だ。
しかし、魔女は狡猾だ。
そうだ、無いなら作れば良いのだ。
病気がちだという、魔女の顔はとても血色が良かった。
きっと、あの騎士の生気を吸っているのだ。
なぜなら、彼女は魔女だから、絶対そうなのだ。




