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神殿が実家なオッサンです  作者: アッサムてー
ヌシラタミのお姫様
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三人の動画投稿者達

 その森には、オバケが出るという噂があった。

 モンスターでも、所謂アンデッドでもない、【オバケ】が出るのだという。


 「はい、それでは今日はね、アレですよ。

 心霊スポットシリーズでございます!」


 車の中、ナビのアプリを入れて使用している携帯電話。

 それを固定、起動させて動画を撮っているのは、二十代ほどの男性だった。

 所謂、動画投稿サイトに動画を作成して投稿しその再生数によって広告料を得ている者である。

 その動画サイトでは、それなりの知名度を誇り、人気投稿者の一人でもある。

 ちなみに、ユーザー名は、エンドカイチョーという。


 「一緒に、現場に言ってくれるのはこの人!

 賢者のダンダン(ユーザー名)さんです」


 助手席に座った神官服を着た青年を紹介する。

 紹介されたダンダン(仮名)は、カメラに向かってハイテンションで挨拶した。


 「どもー、ダンダンです!

 先日、目出度く転職(ジョブチェンジ)したので、スキルの試運転も兼ねてこの企画に参加しました!

 よろしくお願いします!」


 「それと、何故かくっついてきた投稿仲間のミライノトークさんです」


 次に後部座席でソワソワしている女性が映し出された。

 女性ーーミライノトーク(ユーザー名)も有名投稿者の一人である。

 たまに、エンドカイチョーとこうして合同で企画動画を投稿している。


 「はーい、よろしくお願いしまーす!」


 全員の紹介が終わり、エンドカイチョーが今回の企画の説明をする。


 「では、今回の目的地はですね。

 数年前から話題になっている、オバケが出る森として有名な【チャーチヒル】です。

 えー、このチャーチヒルという森で、今から数年前に古城が発見されたらしいです。

 で、そこの調査をしようと依頼が冒険者ギルドに出されたものの、この依頼を受けた冒険者達は次々に謎の失踪を遂げたとか。

 中には無事、生きて帰ってきた人もいたけれど精神を病んで長生きは出来なかったという話や、森に棲むオバケに取り憑かれて連続殺人を起こしたという噂があります」


 「こわいなぁ!」


 わざとらしく、ダンダンが言った。

 エンドカイチョーの説明は続く。


 「で、色々自分なりに調べたんですよ!

 そしたら、この周囲の村に伝わる怪談、まぁ昔話で興味深い話を入手することができました」


 「ほほぅ?」


 わくわくとミライノトークが反応する。


 「そのお話というのが、全部で三つありまして。

 一つはこの森には悪さをした子供を攫って食べてしまう人喰い鬼のお姫様がいる、というもの。

 二つ目は、昔この森にはエルフの村が点在していて、そのエルフの村から美しく若い娘がかつて古城に出仕していて、その美しさを手に入れたいと願ったお城に住むお姫様が、そのエルフの娘を殺して生き血を飲んで不老不死になり、いまだにこの森をさ迷っている、というもの。

 最後の三つ目は、前の二つの話を合わせたような内容で、人喰い鬼のお姫様はとても美しさと永遠の生命に執着していて、エルフでも人間でもとにかく、穢れを知らない少年少女を攫ってきては食べて、その血を浴びていた、というものです」


 「やっばくない?

 いや、それ絶対やばいですよね?」


 目をキラキラさせて、実に楽しそうにヤバいを連呼するミライノトーク。


 「でも、これはあくまで昔から伝わっている話です。

 その前に話した数年前の話なんですけどね、こちらはもっとヤバいです。

 何がヤバいか、というと。

 話題が出た数年前のリアタイの時期ですね、それに関する全ての情報が消されるか閲覧制限がかけられていて調べることが出来なかったんです。

 ただ、時折ネット上でこの件だろうと思われる曖昧な書き込みがされているんです。

 それによると、無事助かったという冒険者の方が発見された時、なんと一緒に調査をしていた仲間の生首を持っていたというんです。

 その生首は、冒険者の方が保護されると同時に閉じていた目を見開いてケタケタと笑いだして、どこぞに飛んで行ったとか。

 当時は、その首が飛行する画像や動画もあったらしいのですが全て消去されたということです」


 そこで、言葉を切ってエンドカイチョーはミライノトークとダンダンをそれぞれ見て楽しそうに続けた。


 「で、まあやってきたわけですよ!

 その噂の舞台に。

 ただ、これだけ言っておきますが、あくまでこのチャーチヒルという場所は、その古城が発見されたという場所の有力候補の一つであるということです。

 というのも、とにかく情報が無くて様々な考察からその場所されているんです。

 ただ、周囲の村に聞き込みを行ったところ、昔話の存在などからおそらく、まぁ、おそらくですけど、信憑性は高いかなと思われます」




 そうして、三人は車を出てすぐ側の森へ分け入っていく。

 有刺鉄線や、私有地のため入らないようにと書かれた縦看板などは当然無視である。

 時刻は、雰囲気を演出するため深夜である。


 そして、ある程度進むと明らかに空気が変わった。

 体感温度がグンッと下がった気がしたのだ。


 灯りは懐中電灯をそれぞれが持ち、先頭からエンドカイチョー、ダンダン、ミライノトークの順で進んでいく。

 いや、進んでいったはずだった。

 ミライノトークが消えたのだ。

 先程まであった、気配がいきなり消えた。

 最初からそんな人間などいなかったように、跡形もなく消えてしまった。


 「あれ?

 ミライさん?」


 「どこ行ったんだ?」


 「つーか、え、山ってこんな冷えるのか?」


 そんな会話をしていると、何かが森の奥で光ったように見えた。


 「?

 なんだ、アレ?」



 その光が、こちらに向かって飛んできたかと思うと、二人の首を風が撫でた。


 「?」


 「???」


 二人が首を傾げようとすると、その視線が急速に落下して地面に近くなった。

 そして、二人はそれぞれ自分の、頭のない体が倒れるのを見た。




 この後、動画投稿が行われることはなく。

 ネット上でも現実でも、彼らのことは失踪扱いとなってしまった。

 現実では、未だに発見に至っていないという。


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