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数日後。
ライの私室に来客があった。
イルリスと、迷探偵である。
「さすがに、これは掲示板じゃ報告できないからねぇ」
そう言って、イルリスからもたらされたのは、【されこうべ様】事件の後、さらに一人、死者が出たという報告だった。
その死者は、掲示板でBと呼称されていた虐めの被害者だった少女である。
「たぶん、呪詛返しにあったんだと思う。
されこうべ様は、占いの形をとっていたけれど、対象者を呪い殺せるように改造されていたんだ」
イルリスの説明に返したのは、リムだった。
「よくそんなことがわかったな。
チート術式だったんだろ?」
イルリスが苦笑した。
「あぁ、たしかに、術式としての証拠はなにも無かった」
イルリスの言葉を、迷探偵が引き継ぐ。
「優秀な人材を、捜査局は手に入れたらしい。
古くは魔眼とか神眼とか言われていた、とても性能のいい眼を持つ人材だ。
その人材、人物の協力を得ることができた。
そして、捜査が一気に進んだ」
その優秀な目を持つ人物の協力によって、事件の全貌が明らかになった。
飲食店にて、Bが置き去りにされた日から、この事件の全ては始まっていたのだという。
その日、Bに話しかけた少年。
少年は学校にまことしやかに流れる噂として、【されこうべ様】の話をBにした。
そして、こう付け加えたのだ。
「君の家のおばあさんのおばあさん、つまり曾お祖母さんが、悪者を退治した英雄なんだよ」と。
Bはその日のうちに、まだ存命である祖母へ確認した。
すると、少年から聞かされた話が真実であったことを知る。
そして、祖母から【されこうべ様】のやり方を聞き出したのだ。
その占い遊びのことを、Bは味方になってくれた少年へ話した。
すると、少年は、こう提案する。
「流行らせて、アイツらの興味をひかせよう。
で、エルフは他の種族よりも優れてて特別だっていう考えは、間違っているって教えてやろう。
されこうべ様は正しい人の味方なんだよ、きっと間違った人のことを退治してくれるよ」
と。
そして、その目論見は成功する。
Bにしてみれば、散々バカにしてきた存在が、本当に馬鹿であることを証明して死んだ、という認識だった。
そして、自分より劣っているくせにバカにしていたクラスメイト全員を処分することに成功してしまった。
しかし、Bに協力していたその少年も、バラバラ事件があった日に被害にあい、死亡している。
そのことにBはとても戸惑ったようだ。
でも、すぐに少年も陰で自分のことをバカにしていた、と考え直したらしい。
そして、神殿達が召喚された【されこうべ様】を送り返したことによる呪詛返しによって、Bは死亡することになったようだ。
「なるほど、めでたしめでたしってわけか」
イルリスがそれに待ったをかける。
「ところが、そうはならない。
協力者曰く。
その少年は死を偽装していた。
つまり、生きていることが判明したんだ」
そして、イルリスは迷探偵を見た。
苦々しい表情で、彼女は自分の手を握りしめている。
「…………」
「その少年が、お前が探している人物か?」
迷探偵は、リムの言葉にフルフルと首を横に振った。
「いいや、手がかりだ」
そして、また、イルリスが口を開いた。
「今後、もしかしたら同種の事件に関わるかもしれないからね。
その時はまた協力してもらうよ、三人とも。
まぁ、幸いなことに、この子が探している人物が関わってるだろう事件の特徴は把握してる。
今後、ライとリム、君達が受ける仕事の中に少しでもその特徴があったのなら直ぐに報告してほしい。
あとは」
そこで、イルリスは写真を一枚取り出した。
写っているのは、ライとリムには初めて見る顔である。
眼鏡をかけた、十代半ば頃と見られる少年の写真だった。
「この子がさっき話した、優秀な人材、ツカサ君だ。
今後、協力してもらうから、ちゃんと顔覚えておいてね」




