KFC 〜壊しましょう!二人で楽しむ、クリスマス〜
自分で作った設定を忘れていたこのに気づいたので、成田→小泉 と変更します。
以後、きをつけます。
「いやー、めでたいね!クリスマス!今年も欠員なく祝うことが出来て!」
「ほんまやねぇ、ワイも抜け駆けしよるクソ野郎のいないこのメンツがほんっとうに好きやわぁ!」
「お前ら、言ってて悲しくなってこないのか?」
「「いや、全然?」」
毎年恒例となっている俺の家でのクリスマスパーティー、もとい、傷の舐め合い会。彼女いない歴=年齢が最低条件で、イヴだろうが女の子に誘われたやつがいたら、ぶっ飛ばすのが会則となっている。
俺は、渋先涼也。いわゆるフツメンだが、コミュ力の低さで女子と話せたことは無い。
最初に発言していたのが、小泉和宏。こいつはイケメンで、コミュ力も高いが、小学生の頃から実妹を愛しているために女子と話すことは無い。なお、実妹は本日彼氏と一緒にイルミネーションデートらしい。この会が始まる前の30分間愚痴られたのだから、確かだ。
和宏に対して返答していたのが、京島岳。東京生まれ東京育ち、両親の実家も関東だというのに、エセ関西弁を使う変人だ。中学2年の頃に突然こうなり、理由を聞いてみたところ、
「いやー、黒井先生にハマってしまってな?」
とか、言われた。どういうことなのかは未だに分かってない。分かってないが、どうせアニメだろう、ガチオタだからな。こいつが今日この場にいるということの理由は、言う必要がないだろう。
まぁ、そんなんで集まってるこの回も、始まりの中学一年の頃から数えて5年目となった。
「お前らさぁ、どうにか頑張って彼女を作ろうとは思わないのかよ?俺はできないだけだけどな!」
「実妹さえいればいい!」
「ワイの彼女はPCの中に閉じ込められてるからな、浮気なんかできひん!」
「どっかの野球ゲームポケットの12でそんなバッドエンディングあったよな」
「蓮ちゃん好きやったんやけどなぁ……」
「ところでさ、クリスマスって聖なる夜っていうじゃん?あれ少し納得いってないんだよね」
「ああ、性なる夜な。でも、実際のところかなりの数ヤリあってるらしいで、事実がそうなってるんやから仕方ないやろ」
「京島、おそらく和宏と漢字が違うぞ……」
「ハハッ、涼也は分かってくれたか」
「あんな年中脳内ピンク野郎と一緒にしないでくれ、で、どうしておかしいって? まさかお前も性なる夜が、とか言い出さないよな?」
「それもあるんだけどさ、サンタの正体が―――ってことはもはやみんな知ってるわけじゃん?それなのにわざわざ隠していくのって、嘘を無駄についてるってことじゃん。それのどこが聖なる行為なのさ」
「嘘を無駄につきあい、他のものでも突き合う。性なる行為やないか。なぁ、渋先?」
「お前は一回黙ってろ。どうして冬なのにお前の頭の中は春仕様何だ?それでだな、和宏、分かっていたとしても夢を見させてあげるっていうのは、優しさ、聖なる行為じゃないか」
「ブハハ!何カッコつけて普通の事言ってんねん、渋先。本当のことを言うとやな、キリスト教信者でも何でもない日本人が、意味もなくお祝いするっていうのが、聖なる行為なんや」
「どういうこと?」
「つまりやな、信仰はないが、その神に向けてその日だけは真剣にお祈りする。この姿はメッチャ滑稽やけども、信者から見たら幸せなシーンや。信者が爆増してるわけやからな。そして、お前の言っている嘘っちゅうのも、聖ニコラスを信じているって考えることも出来るんや。分かったか?」
「つまり、無宗教の俺らが1日キリスト教徒体験を毎年やっているっていうのが滑稽だ、ってことだな。それ俺たちにもブーメランじゃねぇか」
「そんなん楽しけりゃいいってモンやないかい、気楽にやりましょうや」
「なんで和宏はそんなこと言い出したんだ?去年まで何も言ってなかったじゃないか」
「いや、実妹が『聖なる夜ぐらいはお兄ちゃんと一緒じゃなくてもいいでしょ!』って。なら、聖なる夜という表記を無くしてしまえばいいんじゃないかって。」
「発想がぶっ飛んでんな、さすがシスコン、略してさすシス」
「うっわ、さっむ。室内なのに氷点下の気分やわ」
「う、うるさい!」
「略して、さすシス。キラーン!」
「京島、てめぇ殺す」
「ふふっ、ワイが遊びで鍛えた蟷螂流拳法に勝てると思うなよ」
「いざ、尋常に」
「「勝負!」」
「ワイの蟷螂流拳法奥義、シザークロスを耐えるとはやりよる……」
「お前こそ俺の最終兵器最終兵器、とびひざげりをかわすとはやるじゃねえか。あれで膝が割れて、HPが半分減ったぜ……」
「2人とも終わった?いい歳してごっこ遊びはないと思うよ?」
「何言うとんねん!ごっこ遊びやない、ワイがストラックで、あいつが沢村の、ロールプレイングや!」
「カタカナ表記にしただけだと思うんだけどね。それで、一段落した所で外に行かないかい?」
「いやや!なんでリア充の巣窟に飛び込まないといけないねん!」
「いや、試してみたいことがあるんだけど、1人でやるのは恥ずかしいし、2人なら付き合ってくれると思うし」
「ふーん、何をしに行くつもりだ?一昨年やったラブブレイカー活動ならもうイヤだぞ。周りのリア充共からの哀れみの視線が痛かったからな」
「ホンマな、いい雰囲気の公園で六甲おろしを大声で歌うの恥ずかしかったんやぞ。腫れ物を見るような目に晒されたからな」
「お前そんなことしてたのか、俺はクリスマスカップル限定商品を1人で買おうとし続けてたがな、あの時の店員の目を俺は忘れない」
「うっわ、哀れやなぁ……」
「二人ともそんなことしてたんだね、そりゃ嫌になるよね」
「和宏はなにしてたんだよ?」
「えっ?男が女の子のために何か買いに行ってる隙に話しかけて、ナンパして、名前を聞き出す。男が戻ってくるときに、名前を呼び捨てにして、夜俺ん家で待ってるから!って言ったぐらいかな。いやー、その後のギスギス具合だとか、俺への殺意のこもった視線は今思い出してもゾクゾクしちゃうね!」
「真っ黒だな」
「真っ黒やな、自分がイケメンなのを理解してる分タチが悪い」
「褒めてもらえて光栄だよ。で、涼也には勝負服を着てもらいたいんだ。岳はこれを着てね。俺もこれから着替えるからさ」
和宏は持ってきていた紙袋のうち片方を京島に渡す。もう片方は自分のものらしいな。
「まぁ、暇やしな。付き合ってやるわ」
「折角だし、着替え場所は別にして、せーので見せ合うことにしよう。」
「よく分からないが、そうしたいならそうしてやるよ」
和宏と京島が部屋から出ていく。……ここ俺んちなのに、俺の部屋以外のどこで着替えるつもりなんだ?
俺の着替えが終わって少し経つと、京島?が現れた。
「なぁ、渋先。なんでお前は普通の服装で、おれはトナカイなんだ?」
そう、京島はトナカイの仮装をしていた。ご丁寧に赤鼻までつけて。いや、でも、
「似合ってると思うぞ?」
「ワイも同意見なんや、不思議なもんやなぁ」
「和宏はどうした?」
「おばさんにドレッサーの使用許可を取ってたで、あいつはサンタの仮装やないか?」
30分後。ドアをノックする音が聞こえてきた。
「和宏か?普通に入ればいいじゃないか?」
「ノックなんて水臭いのぉ」
ドアを開けて入ってきたのは、かなり可愛い女の子だった。
「えっとー、和宏君に相手してやってくれって言われてやって来たんですけど、渋先さんで間違いないですか?」
「は、はい!おい、京島!お前も返事しろよ!」
「……マジか?渋先、お前分からんのか?」
「状況がか?確かに和宏はいつ帰ったんだろうな?」
「はぁ、渋先、お前は女に飢えてるんやわ」
「脳内ピンク野郎のお前には言われたくねぇよ!」
「じゃあ、なんで女装した小泉に気付かへんねん!女装した成田」
「あれ、岳にはバレちゃったか」
「声真似のうまさも、見た目の可愛さも認めてはやろう。元がイケメンやと女装も可愛いっていうのはよく聞くしな。それに、ミニスカ、黒ニーソにムダ毛処理までされてる、オマケに黒髪長髪のウィッグ、よぉ頑張ったと思うで。それこそ獣1匹が騙されるほどにはな。だけどな!お前からは女の子特有の柔らかさを感じないねん。ギャルゲー百戦錬磨のワイからすると、まだまだ荒削りやな」
「一ヶ月の練習程度じゃあ、長年の蓄積には勝てないか」
「ちょっ、ちょっと待てよ!お前本当に和宏なのか?」
「えー、分かんないのぉ?きーもーいー!」
「その声でそうやって言うのはやめてくれ。マジで傷付く」
「じゃあ、やめてあげるよ。僕がやりたかったことは、僕と涼也が恋人役で、岳がその付き添い兼賑やかし。これで、クリスマスカップル限定商品を堂々と買いに行こうと思ってね」
「一人称が『俺』から『僕』になったのはどういうことだ?」
「さすがに『私』って言うのには拒否感があったから、僕っ子設定でいかせてもらうよ」
「で、本当の目的は?」
「実妹カップルを見つけて、邪魔をしてやる。俺の大切な実妹に手を出したことを後悔させてやる」
「どこにいるのか知ってんのか?」
「実妹の服にGPSを付けておいた。今も動いてるからバレてない」
「お前妹ちゃんの事になると、ホンマにキモイなぁ」
「岳の画面の中への愛と一緒だよ」
「一緒にしないでもらいたい所やけど、傍から見たら同じなんやろなぁ」
「じゃあ、さっさと行こうぜ」
「見つけた!遠くから見ても実妹はかわいいなぁ」
「今のお前の方が俺は好きだけどな」
「あれ?渋先、男もいける口やったんやな。ワイは否定せぇへんから安心してな」
「女装した和宏が、ってことだよ!変な事言うな!」
「男の娘ならオーケーってことやろ?ワイも好きやで、男の娘」
「黙れ!ピンク野郎!」
「二人とも静かにして。実妹が動いた」
妹ちゃんが楽しげに話しながら、歩いていく。この先にあるのはー、巨大クリスマスツリーのイルミネーションか。
「なぁ、小泉。わいのこの格好、悪目立ちするから他のやつの方がいいんやなかったんやないか?」
「面白そうだから着せただけだよ。似合ってたから面白くなかったけどね」
「そうか、そりゃ悪かったさかい。堪忍してな。あと、お前のそのペッタンコな胸、詰め物とかせぇへんでよかったのか?」
「ずれやすいって言うのと、岳もよく言ってるじゃないか」
「『貧乳はステータスだ! 希少価値だ!』か? あんなん現実逃避の言葉に決まっとるやろ。ニーズがあるのは認めるけど、やっぱあった方がいいもんやで?」
「お前ら、その格好でその話をするな。周りから変な目で見られてるぞ、それに、妹ちゃんもう少しで着いちまう」
「じゃあ、少し急ごうか。この場での作戦は、どうにか二人が別れた隙に、俺が彼氏の野郎に話しかける。で、デレデレしている彼氏の野郎を見て、実妹幻滅ってものだ。」
「穴しかない気がするな」
「突っ込んでやろうか?」
「京島、少しは真面目に話をしろ」
「今のは普通に指摘してやろうか? っていう意味やったんやけど、すまんかったな、渋先。思春期のお前には変に聞こえたか」
意図的に無視して、妹ちゃんの監視を続ける。
これって、ストーカーだよなぁ……大丈夫なのか?
「おい! いきなり別れたよ、あの2人! じゃあ行ってくるね。適当なタイミングで実妹を連れてきてくれ!」
「行っちまったな」
「そうやなぁ、よし!帰るか!」
「いや、何となく面白そうな気がする、見ていこうぜ」
「お前も気づいてたんか、さっきから、多分やけど」
「「妹ちゃんこっちに気づいてる」」
「こっち見てたもんなぁ」
「タイミング良すぎやしなぁ」
「どこから気づいてたと思う?俺は、イルミネーションに向かって歩き出したとき、にジュース1本でも賭けるか」
「そんじゃわいは、彼氏と付き合い出したときに、既にこの行動を読んでいた、にジュース1本や」
「大穴を攻めるなぁ」
「攻めてナンボの人生やろ」
「おっ、和宏のヤツ、彼氏くんに話しかけてるな」
「彼氏くん戸惑っとるで」
「妹ちゃんはどうしてるかな、っと」
「ガン見しとるの、タイミングはかっとるんやろな」
「彼氏くん笑いこらえてるように見えるぞ」
「妹ちゃんこっちに向かって会釈しとたで」
「歩いていってー、呼びかけてー、怒ってるねぇ」
「小泉顔真っ青や、カカッ、笑えるのぉ」
「あっ、二人どっか行っちゃった、和宏立ち竦んでるぜ」
「ほな、そしたら救出に行きましょか。」
俺たちは、ニヤニヤしながら和宏の元へ向かう。
「で、どうなった?」
「いや、『最初から分かってたし、GPSだって気付いてた。こんな日に、わざわざそんな格好してまでついてくるなんてやめてよ、恥ずかしい!友達にまで迷惑かけてさ、何あのトナカイ、ふざけてるの?家に帰ってもしばらく話しかけないで!』だって……」
「いつごろ気づいたかは教えてもらえなかったのか?」
「彼氏くんが、実妹が来るなり、『僕実は、今日のために付き合ってくれ、って頼まれてたんですよ。クリぼっち悲しいですし、そんなことなく普通にデートが出来ると思って了承したんですけど、本当に来ちゃって。すいません、面白かったです。』って、苦しそうに言ってたよ……」
「それじゃあれか、ワイらは二人とも賭けに負けたっちゅー事やな」
「意外とお前が近くてびっくりしてるぜ?俺は」
「あれだけ攻めて攻めが足りんなんてな、勉強になったわ」
「お前ら他人の不幸で賭けすんなよ……」
「気づいとらんのか?お前の妹ちゃんは付き合ってなかったっていうことだぞ?不幸っちゅーより幸いやろ」
「そうそう、しかも、お前のことを深く考えて、その上でそういう行動を取ったんだ。喜ぶべきだろ」
「お、おぉ! 確かに! 俺のことをそんなに考えて、なんて可愛いんだ! 俺の妹がこんなに可愛いわけがある!」
((その代わり、話しかけるのを拒否られたがな))
「こうしちゃいられねぇ! 祝賀会やるよ! 涼也家で!」
「勝手に決めんなよ、まぁ、いいけどよ」
こうして、虚しい男3人のクリスマスは続く……
仲間同士のクリスマスも、悪くないですよね!まぁ、仲間すらいない私は家で画面と対話ですけど……
もしよろしければ、連載中の『下剋上少女』もよろしくおねがいします!