第3話 アレイスターという青年
11/15(水)の投稿となります。第3話です。
「やぁ」
煙の中から出てきた胡散臭い匂いのする青年はそう言って近づいてきた。
「え……?あ……!?」
僕は犬だったはずのものからいきなり人間が出てきたことに驚き、何も考えられなくなった。口から意味をなす言葉は出てこない。
青年が近づいてきたので後ずさろうとすると、足が絡まり、何も無いところでみっともなく転んでしまった。
「いった……」
「あははは!大丈夫かい?」
そう言って軽快に笑いながら、青年は僕に手を差し出す。
僕は気付くと、差し伸べられたその手を掴んでいた。
「ごめんね!驚いたよね」
「あ、はい……」
青年の手を掴んでから、僕はいつの間にか平静を取り戻していた。恐らく、幽霊などではなくちゃんとした実体があり、人間であろう事が予想できたからだと思う。
ただ、平静を取り戻せば取り戻す程、この不気味な笑顔を保ち続けている青年に不信感が増していく。犬からいきなり変化したことも全く理解できない。しかし、黙っていても仕方がないので思い切って話しかける事にした。
「えっと、あなたは……?」
「あ、ボクかい?ボクは国家魔術師のアレイスター。アルでいいよ。君は?」
「僕はゼロ……です」
魔術師と名乗るアルという青年に、流れでゼロと名乗ってしまった。僕にはアルのような肩書きはないので、ゼロだけで十分だろう。
それにしても国家魔術師?魔術師はなんとなく聞いたことはあるが、国家魔術師は聞いたことがない。
すると、今度はアルという青年の方から話しかけてきた。
「ゼロ……。それは額のQが0だからかい?」
「Q?」
「あ!そっか。Qって言われても分かんないよね。Qは潜在力の事だよ」
「なるほど……。そうです、潜在力……あ、Q?が0なのでゼロと名付けられました」
「そっかそっか。あるあるだよね!」
あるあると言われても、俺の回りに潜在力……いやQか。Qが0の人は他にいないので分からない。だけどまあ、これは口に出さなくてもいいだろう。
そんなことを考えながらアルの方を見る。
すると、アルは未だに笑顔を崩さず、何か品定めをするかのようにこちらをじっと見つめ続けていた。
最後までお読みいただきありがとうございますo┐ペコリ
アルくんとの絡みはまだまだ続きます笑