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第六話 自在

「はぁー」




 川島は重い服を着たまま、ベッドに腰を下ろし、力を抜いた。


 そうして、しばらくの間ボーッとしていた。どれくらいの時間が経っただろうか。不意に脳裏に声がこだまする。




「ところで、どうしてあの時、真衣と健太が入れ替わったんだろう」




 深沢の声だった。あの時、一切出てこなかった深沢は疑問に思っていた。




「確かに。あの時どうして……」




 木村の声もこだまする。そして、川島が声を発する。




「あの時確か怒りと意志が強くなって……」




「もしかして、意志で変身可能になったんじゃないかな?」




 木村は一つの仮説を立てた。そして、深沢がその仮説を証明するように促す。




「試してみよう。意志で変身出来るかどうか」




 そこで川島も首を縦に振った。




「分かった。でも、ちょっと待て。先にこの重い服を脱がせてくれ」




 そう言うと、川島は木村が着ていた重い服を脱ぎ、ロングTシャツとジャージへと着替える。身軽な部屋着に着替え終わると、川島は深沢に言った。




「真也、試してみろ。意志は強くないとダメだと思うぞ」




「あぁ」




 そう返すと、深沢は体が欲しいという強い意志を入れる。すると、みるみるうちに顔は整った顔立ちになり、スタイルのいい男性の姿になっていく。




「できた。やっぱり意志で変身出来るようになってる。あの時ので覚醒したんだ」




 深沢は少し興奮ぎみに言った。これで強い意志さえあれば、変身が可能であることが判明したのだ。こうなると一つの問題が生じてくる。その問題に真っ先に気付いたのは川島だった。




「ということは、まさか……」




「ちょっ、ちょっと! あたしにも試させてよ。真也だけが出来るなんてことないよね?」




 川島が続きを言おうとした時に木村が間に割って入った。すると、木村は深沢と交代したいという強い意志を入れて念じる。


 川島が深沢に変身した時のように深沢から木村の顔と体へと変わっていく。




「ほんとだ。あたしにも出来る。意志で変身出来るようになったんだ」




 今度は顔と体は木村のままで脳裏に川島の声がこだましてくる。




「いつでも変身出来るようになったからと言って一概に喜んでもいられないだろう」




「どうして?」




 木村は声を発して、川島に聞く。川島は先ほど感じた問題について話し始める。




「だって考えてもみろ。俺が大学に行ってる間に急に変身されたら困るだろう」




 その言葉を聞いて木村は反論する。




「そんなことするわけないじゃん! ちゃんと出ていい所と悪い所ぐらいわかるよ。ねっ? 真也」




 深沢は急に話を振られたが、冷静に答える。




「もちろんだ。急に変わったら怪しすぎるだろうし」




 二人の反論を聞きながら、川島はまた交代したいという強い意志を入れる。徐々に川島の体へと変わっていく。




「ダメだ。信用出来ないからな。それにこの体は元々俺のだ」




 川島の声が部屋の中に響く。




「じゃああたしたちはもう体を使えないってこと? ヒドいよ。そんなの……。だいたい薬飲んだ健太が悪いんだしさ」




 木村はブツブツと小言を並べている。




「確かに真衣の言うことも一理あるな」




 川島は薬を己の好奇心で飲んだことを少し後悔した。しかし、こうなってしまっては仕方がない。


 そこで川島はある案を思いついた。




「分かった。じゃあ、こうしよう。三人それぞれの分担を決めよう」




 川島のこの言葉に木村と深沢が同時に反応する。




「え?」




「は?」




「つまりだ。大学に行っている間、バイトをしている間は俺だ。その他の土曜や日曜、バイトが休みの日は二人のうちどちらかが使えばいい」




 意外なこの川島の提案に木村と深沢は快く承諾した。そして、川島はこの案をより具体的にしていった。


 月曜から金曜までの予定は大学の授業が毎日入っていた。バイトは週に二回、火曜と木曜だけだった。その予定から空いている時間を三人で振り分けていく。


 まず月曜の予定からだが、月曜の授業は昼までで終わるものだった。この後の昼からを誰が使うかと討論になったが、結局木村が使うことに決まった。


 火曜はバイトが入っているため全ての時間を川島が使うことになった。


 水曜は夕方まで授業があったので夕方以降の時間は深沢が使用することとなった。


 木曜は火曜と同様バイトが入っているため川島が使う。


 土曜と日曜はこれまでと同様に土曜が木村、日曜が深沢ということになった。余った金曜は元々川島の体であるというのが要因になり、一日川島が使うことになった。


 こうして、問題を解決していった。


 川島はこの計画をスケジュール帳に記入した。スケジュール帳を他人が見ると、曜日毎に名前が記入されているため、まるで何人もの女性と付き合っているようにも見える。


 そして、川島はスケジュール帳を閉じて大きくため息をついた。




「はぁー。今日は疲れたな」




 そう言うとベッドに横になり、気がつくと静かに寝息を立てていた。


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