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第三話 変質

「あそこで薬を買ったんだ。それでその薬が原因であたしと真也(シンヤ)が生まれたんだ」




 木村は少し納得しつつ言う。この言葉に川島は動きを止めた。




「真也?」




 川島は聞き覚えのない名前に驚きながら聞き返した。




「あれ? 真也まだ挨拶してなかったの? ちゃんと挨拶しなきゃだめだよ」




「挨拶?」




 川島はまだ状況が把握出来ずにいたが、脳裏に嫌な予感がよぎる。




深沢(フカザワ) 真也(シンヤ)です。よろしく」




 川島の嫌な予感は的中した。自分の脳内に木村とは違う得体の知れないものがもう一人いたのだ。川島の頭はもうパンク寸前だった。川島は冷静になるため家にすぐ帰ることにした。


 その帰り道でも、木村の声は絶えず聞こえてきた。ブティックやアクセサリー店の横を通り過ぎる度に、可愛いだの欲しいだのと言っている。川島はそんな木村の発言を聞き流しながら、ようやく家に到着した。




「へぇー、ここが健太の家なんだ」




 木村が言った。川島はこの木村の発言に違和感を覚えた。




「健太?」




「いいじゃない。これからはこの体で一緒に過ごすんだから。ねッ! 真也」




 木村がそう促すと、深沢も「あぁ」と言葉を返した。なんとも不思議な状態だった。一人の人間の体に三人の違った人格が存在するのだから。


 川島は今日一日で起こった出来事をベッドで横になりながら、思い返していた。大学の帰り道で急に現れた木村、秘妙堂に解毒剤がなかったこと、秘妙堂から家への帰り道で深沢が突然現れたこと。




「一体これから俺の体はどうなるんだ」




 川島はそんなことを心配しながら、眠りについた。








 翌日、この日は土曜日で大学が休みだった。目が覚めたのは昼過ぎでそれから昼食を取り、顔を洗うために洗面所へと向かった。そして、鏡を見た木村は大声を上げた。




「うわ! なにこれ?」




 自分の体を触る。胸がある。声も高い。顔も女性の顔。それもきれいに整った顔だち。髪の毛は肩より少し長いロングヘアー。服は川島が着ていた服だったため、少しだぼっとしていた。




「何これ? もしかしてあたしの体!?」




 木村の声は喜びに満ちていた。そこに川島の声がする。




「おいおい。どうなっちまったんだよ。俺の体は」




 今の川島に体はない。昨日、木村や深沢がなっていた状態になっているのだ。川島はもうわけが分からなくなっていた。




「とりあえず今日はあたしが自由にこの体使っていいってことよね?」




 そう言って木村は出かけるための準備をし始める。とは言っても、川島の家に化粧品などがあるわけもなく、顔を洗って少しサイズの大きい川島の服を着てジーンズをはき、町にくり出した。


 昨日の帰り道で気に入っていたブティックに行き、アクセサリー店を転々として女性ものの服やアクセサリーを買いあさった。


 その後はデパートへ行き化粧品など女性にはかかせない物を買った。そんな木村を見て、川島は財布の心配をしていた。


 家に帰ると、木村は試してみた化粧を落としゆっくりくつろごうとした。その時、急に体に異変が起こった。見る見るうちに体は男性のものへと変わり、川島の体へと戻っていった。


 一体何が起こったのか分からなかったが、川島の体へと戻ったことは事実だった。


 川島は自分の体に戻るなり、財布の中を確認した。案の定、財布の中身は空っぽに近かった。




「真衣! お前どれだけ無駄遣いするんだよ! もう金が無いじゃないか!」




 川島は嘆いた。木村は悪気なさそうに言葉を返す。




「だって女性ものは一つも無かったんだもん。仕方ないじゃん。それよりどうなってるの? いきなり戻るなんて」




「そんなこと俺に言ったってわからないさ」




 そんなことよりこれから定期的にこの異変が起こるのか分からないのに勝手に買い込みやがってと川島は思っていた。


 まずはこの異変がどうやって起こるのか様子見の期間はまだ終わりそうにないことは確かだった。そうして、ありったけの洋服やアクセサリー、化粧品を見ながら川島は服を着替えて眠りについた。


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