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シーズン1 第一話 疑念

 一人の女性が研究室にこもり、パソコンを触っている。部屋の中は薬品のビンやフラスコ、試験管といった理科室を思い出させるような器具であふれている。


 彼女の名前は新山(ニイヤマ) (マナミ)。科学者であり、整形外科医としての資格も持っている。年齢は二十五歳。キーボードのエンターキーを二回リズムよくたたき、彼女は声を上げた。




「できた! やっぱり私って天才だわ」




 声をあげると同時に立ち上がったので、着ていた白衣がひらひらと舞った。彼女は休む間もなく、試験管を持ち出し、紫色をした液体を試験管に注ぐ。


 そうして試験管立てに立てかけ、もう一本試験管を用意する。今度は緑色の液体を注ぐ。初めの試験管に緑色の液体を注ぎ、軽く振り始める。音を立てて爆発することもなく、穏やかに混ざっていく。


 彼女は納得の表情を見せながら、注射器を手に取る。液体を注射器に吸引していく。ある程度量を採ると、試験管を立てかけて注射器を持って移動する。


 やってきた部屋は実験室と書かれていた。部屋の中には数百ものケージがあり、モルモットが飼育されていた。その中の一匹を取り出して、注射器を当てる。


 モルモットは鳴きながら新山の手に掴まれている。新山はモルモットに濁った色の液体を注入し、足に印をつけた。




「うまくいってよ。理論上は完璧なんだから」




 そう呟いて、モルモットをケージに戻し、実験室を後にした。


 翌日、新山は実験室へやってきた。新山は例の足に印がついたモルモットを掴み、念入りに調べ始めた。モルモットは鳴きもせず、静かだ。新山はモルモットの体中をじっくりと見てからこう言った。




「完璧! 理論通りだわ」




 新山は研究室へ戻り、昨日液体にするために溶かした粉末をカプセルに注入する。試作段階として新山は同様のカプセルを四錠作ることにした。


 数時間後、カプセルは完成した。新山は出来上がったカプセルをカプセルケースに入れ、机の上に置いて研究室を後にした。


 新山が研究所を出て行ってから数時間後、ある男が研究所へ入ってきた。






 ある男性が道路を歩いている。




「あー、退屈だな」




 彼の名前は川島(カワシマ) 健太(ケンタ)。私立深川大学法学部二回生。年は二十歳。ある田舎から都会へ引っ越して来て一人暮らしをしている普通の大学生だ。今は大学の授業を終え、帰路につくところだった。


 彼はふと、今日は違う道を通って駅まで向かおうと思った。いつもと違う帰り道は雰囲気が異なり、あらゆる店が新鮮に見えた。そこで、ふとある店が川島の目に入った。


 店の看板に『秘妙堂(ヒミョウドウ)』と書かれていた。川島は自然とその店に足を踏み入れていた。商品を見渡す限り、雑貨店のようだった。


 商品には香水やアンティークな小物、奇妙な薬品などがあった。その中のあるものが川島の目に止まった。


 それは薬品の分類棚に置かれているたった一錠しかないカプセル剤だった。




「おい、おやじ。この薬は何なんだ?」




 店の店主と見られる男は高齢で白いひげを生やしていた。店主は川島の近くへやって来てその薬をケースごと持ち上げた。




「こいつはな、ついさっき入ったんじゃ。五十代くらいの白衣を着た男が一錠だけ置いていきよった」




「効力は何なんだ?」




「さぁて、なんと言ったかな。何やら体が男から女に女から男に変わると言っておったかの」




 川島は性別が変わると聞いて疑わずにはいられなかった。男から女に変わると言えば、今は手術やおネエキャラになるくらいだろう。


 こんな一つのカプセルで性別が変わるなんて、ありえないことだ。でも、もし本当ならすごいことだ。川島は好奇心から店主に聞いた。




「これ、いくらだ?」




「うちは、商品に値札はつけとらん。客が買いたい値段で売る。いくらで買うかの?」




 川島は少し考えた。もし本当に性別が変化するなら、安い値段をつけるのは人が悪い気がする。


 無難な値段をつけるのに苦労したが、結局彼はこう言った。




「五千円」




「よし、売った。しかし、これは薬物じゃ。多少取引に手続きが必要じゃ。とりあえずこれを書いてくれ」




 そう言うと、店主は川島に一枚の用紙を差し出した。その用紙には氏名、性別、年齢、職業などの項目があった。


 面倒だなと思いながら川島は項目を埋めていった。店主に用紙を提出し、カプセルケースを受け取った。




「本当にこんなもので性別が変わるのか? 第一、体が変化するのかよ。怪しすぎるぜ」




 川島はこんなことを思っていた。家に帰り、川島はベッドに横になりながらカプセルケースを睨んでいた。数分後、腰を上げ夕食の準備をして、食事を済ませた。


 そして、半信半疑ながらも薬を飲むことを決意した。薬を手に取り、コップに水を注ぐ。じっと薬を見つめた後、口に薬と水を同時に含み飲み干した。


 変化がみられないうちに川島は眠ることにした。


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