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魔法少……悪役令嬢、困惑です!

「ハーチー!」


 ズシンと音を立てモンスターが倒れると、公子を拘束していたマニキュアボトル型の檻が粒子状となり解けていく。


「やったわ! ブレイクハートは、ピュアハートに戻ったのね!」

 ……我ながら意味不明過ぎる説明だけど、囚われの公子の本当の愛を取り戻したってことよ!!


 そして、恋人達は愛を確かめ合う。


「公子様……!」

 目を開けたらそこには愛する人が。

「マ、マキュア姫。僕は一体……?」

 ふらふらとしながらもジュレ公子は、しっかりとマキュア姫を見つめて。

「……ああ、良かった。貴方が親しげにわたくしの名を呼んで下さるなら、もういいのです。きっと、悪い夢を見たのですわ」

 あの、公子の憎々しげな視線はもうなく、二人は仲良く寄り添い合うの。


 恋人達は、めでたしめでたし、と。





「よし、わたしはビッチーナを追おう!」

 そう思って、スティックで飛ぼうとしたら……あれえ?


「な、何で肝心なところで、変身解けちゃうの!? わたし、スティックがなきゃ空も飛べないし、家にも帰れないんだけど!」

 アワアワと、フリフリミニスカ姿の変身が解けて、悪趣味ゴテゴテドレスな悪役令嬢スタイルに戻ったわたしは、隣の国のお城のお庭で慌てる。


 誰にもナイショで部屋の窓から出て来ちゃったから、門限までに帰らないとお母様に大目玉食らっちゃうよ!


「おや、それは大変だ。俺の馬の後ろに乗るかい?」

 わたしが慌ててたら、カポカポと馬蹄の音を響かせて、謎のイケメンが立派な黒馬に乗ってやって来た。

 うわあ、すごい強そうなお馬ですね。


「そ、その申し出はありがたいですけれど、知らない人に付いて行ったら怒られてしまいますわ!」

 ツンとわたしは横を向いて謎のイケメンにお断りする。これでも伯爵令嬢なので、殿方との二人乗りなんて気軽に出来ないの!


「いやいや、俺達は知らない仲じゃないでしょ? ね、ピュアリーラブラブリー」

 ニコリ、と笑う銀髪アシメに全身黒づくめの白皙の青年。

 その艶っぽい笑みは、確かにどこかで、見た事のある……。


「ど、ドエース……?」

「そ、正解。どうだい、安全運転で送ってくよ、乗ってかない?」

 気だるげな表情のまま、僅かに口角を上げて、ドエースはそう誘ってくる。

 た、確かにこの立派な馬なら、それはもうサクッと門限にも間に合うでしょうけど……。


「主よ。悪魔の囁きなどに乗ってはならん。母御には必ず使い魔たる我が責任を持って説明するから、正規の手段で帰還するのだ」

 いやいや、わがマスコットよ。君は家ではただのぬいぐるみ扱いであって、わたしは内緒で魔法少女してて……。

 ……説明役とか、無理でしょう。

 思わず分かってるのか、と、肩に乗るマスコットを眺める。


 それを馬上から眺めるドエース。

 ……ええと。


「おっ、お断りしますわっ」

 わたしは、気弱になる自分を叱咤しつつ、ツーンと、ドエースに返す、のだけれど。


「ふーん、あっそ。ところでさ、君ってちゃんと越境の手続き取ってるの?」

「……そ、そこを責められると弱いのですわぁ……」


 ☆ ☆ ☆


 結局、敵の手を借りる事になってしまいました、不覚!

 だって、高位貴族の娘が国境破りだなんで、真面目にヤバすぎるし、何故かあいつったら、つてがあるって言うんだもの!!


「お姫様、お手をどーぞ?」

 そして黒馬の上から、小首を傾げ手を差し伸べる白皙の美形。やだわ、絵になるわあ……。


 いつの間に着替えたものか、黒のジュストコールを着た紳士風ドエースは、悪の幹部らしくなく物静かでオトナなエスコートでわ たしを誘う。誘惑されるかなとか、警戒していたわたしは何だか拍子外れだ。


「この裏切り者め! 我はマスコット界の者として、主に猛烈に抗議ぶぎゅる」

「煩い、黙って」

 魔王系マスコットの講義の声も叩き潰し(物理)、わたしは悪の幹部と馬の背で揺られる。


「……何で、助けてくださいましたの」

 少女らしく横座りで後ろに乗ったわたしは、そう聞くけれど。


「えー、気まぐれかな? あと、キミのイジワルそうな顔が、好みなんだよねー。普段のツンケンした感じもいいと思うよ?」

 ドエースときたら気楽なもの。えっ、素で高飛車令嬢好きなの!?


「な、な、何を考えてるのです、貴方は悪の幹部でしょう! わたくし達、敵同士なのですけど!?」

 今世のわたしのデフォな姿を気に入ったとか、普通に動揺するし、赤くなるわ!

 二十代ぐらいでスマートな紳士風とか、ちょ、ちょっと好みだし……本気で困る。口調はすんごくかっるーいけど、わたしの内心も似たようなもんだしなあ。


「はは、まあ、僕自身は、君の事ちょっと気に入ってるってことで。ちょっと考えといてよ」

「う……まずは親を通して下さいな」


 そんな調子で、暮れなずむ空の上。

 魔法少女稼業のアクシデントで起きた敵の幹部とのタンデムは……。

 わたしの心に強い印象を刻み付けたのでした。




 ところで……。この、魔法少女に恋慕する悪の幹部って、誰が付けた設定なのかしら……。

 余りにわたしのツボ過ぎて、友人の影が見え隠れするのだけれど。


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