表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/70

悪役令嬢、アウェイな場に置かれる。

少々ストレス展開が続きますので、終わるまでは毎日投稿します。

 執事を通じお父様への連絡を取り付けたその後。


 わたしが夕食の為にダイニングに向かうと、なぜかわが魔王系マスコットが……。


 上座に座ってた。


 とりあえず言いたい。

 なんで貴方が、そこにいる。



 わたしはくらくらする頭を抑えながら、状況を考える。

 ……ああ、絶対夜中に熱が上がるわよ、これ。

 そんな事は後回しよ、とにかく状況を判断してからよ。


 まずは晩餐のセッティングからね。


 この晩餐の主席はプリティ。

 その後ろに、母の側近中の側近、ベネー婦人がいる。

 つまりこの席は、ベネー婦人が取り仕切る。


 わたしの席は、一見プリティの間近でありながら、一番の下座……入り口付近に用意された。


 この席順で、客として最低ランクの人間という事を示してる訳だ。



 わたしは、晩餐室の壁際を、わざとのようにヒールを鳴らして歩き回りつつ考える。

 勿論、胸を張り、顎を引いて……誰が見ても恥ずかしくない貴族の娘の見本のような優雅さで、ね。


 席順を理解し、クスクス笑ってる少女メイド達。

 彼女達は、小声でささやき交わす。

(「偉そうな顔してるけど、いいざまよねぇ」)

(「奥様と違って無能な女のくせに、生意気だわ」)

(「あの憎たらしい生意気な顔と比べて、我らがベリル様のお可愛いこと! やはりこの家の血筋がだめなのよ、我らがグッラ子爵家が正してやらねば!!」)


 ……自白ありがとう、あなた達。


 彼女らは間違いなくお母様の実家、我が家と似て裏社会で有名なグッラ子爵家の者と分かった。


 しかし、まさかの乗っ取り計画?

 お母様の実家は家格に見合わない権力を持つ子爵家だけど……「あの」 男性貴族界のドンを蹴落とし座すなど、無理が過ぎるでしょう。

 わたしが居なくなっても、身内から誰かが立つだけの事でしょうに。


 だいたい、お父様のシンパは高位貴族がほとんどよ。お父様贔屓、アヴァリーティア家と昔から仲のよい彼らが、むざむざと子爵家の乗っ取りを見逃す認と思うの?


 ……正直、理解出来ないレベルの無謀な挑戦ね。

 まあ、お母様派にも何かしら仕込みがあるのでしょうけれど、わたしには正直分からないわ。


 それにしても、顔も見た事もない事からおそらくは新入り、それも見習いのメイドなんでしょうけど。

 領主の娘に対していい態度ね。


(「えっらそうな態度してるけど、誰も貰ってくれない恥かしい「傷物」 なのよ? あの女」)

 クスクスと。

(「もっとコソコソしなさいよね、奥様からも見放されたくせに」)

 ニヤニヤと。

(「そうよねぇ、「傷物」 の分際で。さっさとこの家から「売られて」 しまえばいいのに」)

 愛する奥様……己が主の嫌う実娘を、笑い物にする女達。


 口さがなくわたしを笑うこの娘達は、ほぼ確実にお母様派の、グッラ子爵家肝いりのスパイ達だろう。

 まあ、こんなわかりやすい態度だもの、お父様はこの状況を知ってるわよね。

 その上で泳がしてる。


 だって、考えなくとも分かることよ。

 主筋を睨みつけてせせら笑う、そんなメイドがどこの家で雇われ続けるの?

 ありえないでしょ。

 自家の者ですらこれでは、お客様に対しどんな酷い態度を取るかと、ぞっとするもの。


 こんな質の悪いメイドが、少なくとも十名は潜り込んでいた、ってことは……。

 お母様とお父様の対立って、実は以前よりかなり深刻だったのかしら?


 ――わたしの処遇を争うせい、で?

 思わず眉間にしわを寄せる。


 ……こんなものを陰で用意してたってことは。

 そういう事、なのかしらね? お母様。



 まさか、だけれど。

 実は、プリティ……ベリルの魔法による影響は軽微で。

 あれは、ただのきっかけに過ぎなかったとか?


 代用品(スペア)さえ見つかればいつでも動けるようになっていた?

 わたしを売り払う先はすでにあるようだし。

 すでに手の者は以前から、わが家に潜り込んでいるし。

 状況的には噛み合うけれど……。わたしならともかく、お父様まで裏切って、こんなことを進めていたの?

 そんな酷い事が、あっていいのだろうか。



 確かに、もともと両親は政略結婚だったわ。

 それでも記憶には、お互い歩み寄った時期があったように思うのだけれど……。

 あの優しい記憶さえも偽りなの、お母様。



 やはり、お母様がわたしを嫌った事が、始まりなの?

 すべては、一年前の「あの」 婚約破棄からのこと、で。

 ああ、ぐらぐらと頭が煮えるようだ。だからきっと、こんなおかしな事を考えてしまうのよね。


 わたしは酷い頭痛を堪えて、考え続ける。



 ――これはそう。熱のせいで思い浮かべただけのだだの妄想よ、きっと。


 一年前。傷物となった娘を棄てて、そんな傷物の娘をまだ支え続ける夫を見限って。

 実家の権勢を強める為に。

 そこから、グッラ家のアヴァリーティア乗っ取りの為の、水面下の動きは始まっていた。


 ……わたしの考え過ぎであって欲しい、けど。



 彼女らは、更なる情報をわたしにくれる。


「この「傷物」は、あの有名な「幼女男爵」 に売られるのでしょう? 何年正気を保てるのかしらあ、ウフフ」

「未熟な女性しか好きじゃない、あの男ね? 二十過ぎたら男爵夫人が「病で死ぬ」 という、あの」

 それはまた。物語で聞いたような酷い人物ね。


「そうよ。でもこの「傷物」 は育ち過ぎじゃない? 打診があったのは随分前の事だと言うし、その頃は奥様に似て可愛らしかったらしいのだけれど」

 ……自分で見てもお母様似なのだけれど、この子達の目は曇ってるのかしら。


「今はもう、奥様にも似ず憎たらしいだけの酷い面相ですものね! 見なさいよ、この冷酷な顔ったら!」

「ええ、全くね。この血も涙もない顔つき。アヴァリーティア女の顔だわ! これだもの、わたくし予想ではすぐ「病で死ぬ」 と思うの」

 あらあら。わたしが死ぬのがそんなに嬉しいの。人の不幸を喜んで、なかなかに酷い顔つきよ、あなた達。


「それはいい事ねぇ。もうあちらの領では受け入れの用意が出来ているそうですもの、もうすぐ奥様の苦しみはこの世から消えるのね」

 一応声は低めて。でも、はっきりと。

 隠しもせずわたしが通り掛かる度に、お母様の信奉者は、これみよがしと聞かせてくれる。


 冗談みたいな事を、嬉しそうに。


 お母様の嫌う「傷物(わたしは)」 は金満家に「売却」 されると決まっている。

 わたしの嫁入りの用意……大金の用意すらされているというの、そう。

 ……これまたおかしな事を、彼女らは教えてくれたわ。


 一体、どこの世界の貴族家では、当主の認めなくして娘の嫁ぎ先が決まるようになるのかしらね。


 この世界では、少なくともありえないのだけれど。


 わたしはパラリと扇子を広げて、その陰でため息を吐いた。

 ああ頭が痛い。また、連絡事項が増えたじゃない。



 パチン。わたしは手に持っていた扇子を閉じる。

 小気味よい音が鳴る。

 ――その時、ダイニングルームの外では、誰かが歩み去った気配がした。



 まだまだ、部屋の中では楽しいおしゃべりが続いている。


「ああ、楽しみね。奥様をあんなにも長年苦しめた「傷物」 だもの。苦しんで苦しんで苦しみ抜いて! 死ぬがいいのよ!!」

 そんなにも嫌いなのね。

 そんなにも憎かったのね? ……お母様。

 お母様は何を、彼女達信奉者に聞かせていたのかしら?

 わたしを呪うように、わたしを嫌う言葉を、どれだけ聞かせていたのかしら……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ