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魔法少女、戦います!

 魔王系マスコットキャラ、プリティの説明の通り、貴公子は魔の手に掛かってしまった!


「てゆーか、現場が見えてたのに助けられないってどんな縛りなの……!」


 ようやっと、事件への介入を解禁されたのか、へろへろと下降するスティック。

 あんな愁嘆場見せられて、既にこっちの心にもダメージきてるよ……。


 胸を押さえ、よろよろとピンクのハイヒールで踏み締める大地。さっと乱れたピンクブロンドを背に払い、わたしは一気に、ビッチーナの側へと駆け寄る。

 ……そして、またわたしの心にダメージを与える、ビックイベントを乗り越えるのだった。


「悪の組織の色魔ビッチーナ! 観念なさい!! ……お、乙女の心を踏みにじりっ、恋人達の思いを汚す、色魔の悪はこのっ、ま、魔法少女ピュアリーラブラブリーが、ゆ、ゆ、ゆ、許さないんだからっ」

 噛み噛みなのは恥ずかしいからです。

 わたしがビシィ! と、キメポーズを取ると、魔王系マスコットが謎のパワーでバンクシーンを演出してくれるのだ。

 悪の怪人を前に輝くわたし!! 正直、泣けるね!?


 それにしても、なんていやらしい機能を備えてるの、この謎生物……。

「我は何でも兼ね備えた万能型なのだ。しかし、戦闘だけは出来ないがな!」

 わたしはじっとり睨むも、奴はご機嫌そのもの。そこは、胸はって威張るところじゃなーい!



 もう一仕事終えたような疲労感があるよ。はー、恥ずかしかった。

 わたしはひとまずプリティを安全地帯に置くと、モンスターの方へとダッシュする。

 恥ずかしいけど、あれをやらないと、魔法少女系格闘技(謎パワーで達人レベルの能力と怪力が手に入る) と、どんなシーンでもスカートが鉄壁防御してくれる機能が解禁されないのよねー。

 あ、わたし自身は特別強くないんだよ。謎パワーで底上げされるから、巨大モンスターなんかと戦えるわけで。

 それに、スカートの件も大事なの。足首見えただけで殿方がポッとなる中世風世界観で、ミニスカってだけでも恥ずかしいのに、さらに無駄な恥を掻きたくないし。




 わたしは芝生を蹴ってモンスターに飛びかかる。

「お、お前は、ピュアリーラブラブリー!」

 すると、悪の怪人ビッチーナがお約束に驚いてくれるわ。


「さて、今回の敵はっと……おー、流石はミツバチの国。真っ黒なハチかあ……黄色が消えるとあれだね、見た目地バチっぽい。でも、飛ぶし巨大だし手強そう。姫様と公子様の愛は深いものだったのねー」

 なーんて、モンスターに感心してると。


「オーッホッホッホ! アタクシの目利きは確かねっ! このカップルの破局から産まれる愛憎は、絶対に大きいと思っていたのよ!」

 と、高笑いする悪の幹部ですよ。


「おのれビッチーナめ、相変わらずラブラブカップルばかり狙って男を落としてるのか……! なんたる悪党ぶり!」

 これには、我がマスコットも憤ってるわ。でもラブラブカップルって言い方はちょっと、笑っちゃうんだけど。


 でも、わたしも気持ちは同じよ。モンスターを倒したら、ビッチーナをキッチリ懲らしめないとね!


 ☆ ☆ ☆


 ところでわたしこと魔法少女は、大技出すまでに溜めが必要なの。

 バチバチやりあって、謎パワーが貯まらないと魔法が解禁されないだよね、ちょっと不便。


 って、ことで。魔法少女ピュアリーラブラブリー(本当に恥かしいんだけど、この名前!) は、戦います!!




 ブーンと、ハチの羽音を響かせ突っ込んでくる黒い巨体。

 こちらに飛び込むように接近するハチに、まずは牽制の右パンチ!


「ハチッ!?」

 かーらーのー。


「えーい!!」

 大ジャンプから、足を揃えたダブルキック!


「ハッ……チ!?」

 わたしの魔法的パワーを込めた蹴りに、巨大な敵は吹っ飛ぶよ! 質量的にどーなってんの、なんて事は悩むだけ無駄なので悩まないでいこう。

 やり合えてるんだから問題なし!

 それにしても、広い場所で戦いになって良かったよ。周りの被害考えながらって、意外と大変なんだよね。


「ハッチハッチー!!」

 吹っ飛んだのを空中でリカバーし、お怒りの巨大ハチは器用に姿勢を変えると、お尻のトゲをガンガン向けてくる!


 うわあ、あんなの刺されたら大怪我だよ! わたしは横転バク転交えて、華麗に避ける避ける!


 でも、全避けは流石に難しい!

 腕に針が掠める! 鋭い針の痛みに、わたしは怯みそうになるけど。

「まだまだぁ、負けないんだからっ」




 そう、巨大な敵を見据えて、わたしが気合を入れていると、いつの間に移動したのか、ハーレム怪人のいるバルコニーの下から、ビッチーナの声が……。

「ちょっとぉ、モンスター、あんたぁ、もう少し頑張りなさいよぉ。ドエース様にぃ、今日こそご褒美貰っちゃうんだからぁ!」

 ビッチーナの気の抜けるコメントにがっくりきちゃう。あなた、さっきまで隣の貴公子を誘惑してたでしょ!? それって浮気じゃないの!?

 上に居るドエースは、バルコニーに優雅な決めポーズで立ってるわ。……彼は彼で、何をしに来たんでしょうね?


 特に手出しもしてこない、ただじーっと眺めてるだけ。

 ……本当、すっごく謎だ。


「ああっ、ジュレ様、なんておいたわしい……」

 貴公子様の封じられてるマニキュア風の檻の横では、マキュア嬢が泣いているっていうのに! なんて、酷い奴!!


 名は体を表すって、本当だわ……。あいつ、本当に許さないんだから!




 と、わたしが脱力したり怒ったりする、その隙を狙って、巨大ハチが体当たり!!


「ハッハッハーチー!!」

 巨大ハチの笑い声と共に、わたしは大きく弾き飛ばされる!


「いったーい、流石に効いたぁ……」

 五メートル級の巨大生物だもの、魔法少女として強化されていても、痛いものは痛いの!


「よくもやってくれたわね!」

 怒りでようやくスイッチが入ったのか、ようやくよ、魔法のペンダントとステッキがキラキラ光って、反応してる!


「プリティお願い!」

「うむ、心得た」

 マスコットが、謎パワーで演出開始!

 キラキラのエフェクトを纏い、わたしはパワーアップ。ピンクのロングドレスに純白の羽根を背にした姿に、変身するわ!


「清き心を汚す悪。人々の純情を弄ぶなんて、このピュアリーラブラブリーが許さない!」

 両手を組み、きりっと表情を引き締めて、バッとわたしは純白の羽根を広げ……って、と、飛べたの!? てっきり、羽根は飾りだと思ってた!!

 でも、これって好都合じゃない? 敵のアドバンテージを潰せるんだから!

 慌てた様子は何とか表に出さずに、ぶっつけ本番でいくわよ! 根性出せ、わたし!


「響け、ピュアハート。ネガティブは振り切って、そのピュアな心を取り戻すのよ!」

 わたしは光の矢になって、マキュア姫とジュレ様、二人の愛の象徴たる黒いハチに突き刺さるの!





「へえ、更に変身を残してたんだ。ますます、興味深いね……」

 ……そんなわたしを、悪の幹部はバルコニーから見下ろしていた。


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