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魔法少女、出動です!

ここから新しいエピソードです。

 さて、張り切って変身して、現場上空まで飛んで来たものの。

 どこに居るのかしらね? 肝心のマキュア姫に貴公子ジュレ様は。


「それにしても、相変わらず、派手な国ねぇ……」


 ふわふわと魔法のスティックで上空を飛ぶわたしは、見下ろす。

 このマヌカルハニー国は、ミツバチをイメージにしたファンシーな国。

 どこかの夢の国のアトラクションのように、色鮮やかでポップな街並みに胸が躍ります。

 さ、流石はファンタジー世界だ!


 道行く……じゃない、自分の羽根で空をブンブン飛び交う人々の、黄色と黒のストライプなドレスや紳士服が眩しいわ。

 ……えっ、みんな似たような顔してるんだけどなにこれ怖い。

 まあそれは、置いといて。

 この国は、代々女王様が治める国で、見事な括れと豊かなヒップの女王蜂、いや女王様が、働き蜂……いやいや忠義な臣民らを率いているのよ。


 この国の城は、大きな木に下がった、クマンバチの巣を彷彿とする丸いフォルムなの。

 お城の真下、綺麗に整えられた芝生の上で、公子様と姫様は対峙していて……って。


「えっもう始まってる……!?」


 まだ、人の姿は豆粒大ほどにしか見えないけど、二人はなんか言い争ってるっぽい。


 わたしは急げ急げと魔法のスティックに念じるけど、どうにも、このスティックったら、決定的瞬間を待っているようで……のんびりした飛行だ。

 これは、あれかな? 番組構成上、巨大モンスターが出てくるまでは魔法少女は到着出来ないという縛りなのかな!?


「幾ら魔法少女だって言っても、生身で数百メートル上からロープなしバンジーする勇気はありませんけど!?」

 どーいうつもりよっ、責任者出てこーいっ。

 思わず叫んじゃうわ!


「ちょっと、プリティも何とか言ってやってよ! この魔法のスティック言う事聞かないんですけど!」

「そう我に言われてもな。運命の紡ぎ手の描き出す流れというものは、我であっても阻めぬのだ」

 ちゃっかり人の膝の上に乗ってる、まんまるいマスコット顔に、器用に渋面など浮かべ、短い手を組んだ魔王系マスコットがふるふると首を振る。


「か、肝心な時に役立たずだコレェ……」


 ☆ ☆ ☆


 上空でわたし達があーだこーだと言ってる間にも、地上ではドラマが展開されてます。

 スティックは相変わらずの非協力ぶりで、ノロノロ降下だけど、表情はだんだん見えてきた。


「……は、女王の座が決まってるからと、上から目線の貴様は昔から気に入らなかったんだ! 何かと言えば王族の務め、まだ足りぬまだ足りぬと、僕に対して多くの事を望む、君の隣は息もつけぬ。私の運命の人ビッチーナの事も、身分違いだ何だと虐めていたそうだな! なんて卑劣な女だ……!」


 姫を冷たい目で睨む、黒ベースに黄色をアクセントにしたドレススーツ姿のジュレ様。

 何で上空で声が聞こえるのかって? どういう仕様なんだか、スティックがわざわざ地上の音を拾ってるっぽいのよね。


「ど、どうしましたのジュレ様、先程まではあんなに暖かく、不出来なわたくしを励まして下さっていたのに……」

「過去の私は彼女を知らなかったからさ、今は愛する人がいる。君など、そう……過去の事だ」


 ほろほろ泣く姫に、彼は眉ひとつうごかさず、派手メイクのアゲハな感じの嬢の肩を抱き寄せる。

 うっ。あの特徴的すぎる派手な姿は……。


「あれは、間違いなく色魔怪人ビッチーナだわ!」

 ビッチーナは、悪の組織の女性形怪人よ。

 今までもさんざん恋人たちの邪魔をして、わたし達を苦しめてきたの。

 普段の姿は、パステルカラーのドレスにナチュラルメイクで、清純派を演じているあの怪人、貴公子達の心を射止めに、あちこちの国を巡ってるんだけど……。


「今回は、ジュレ様を狙いにやって来ていた、ってことね……。しかも、あの姿って事は」

 わたしは上空で焦る。

 あの怪人が、清楚系ヒロイン姿から本性をあらわしてるってことは、本当にクライマックスじゃない!




「ジュレさまぁん、もぉーっと言ってやってぇ。あの女と完全に切れてしまえばいいの、それで貴方は楽になれるわぁ」

 黒と紫を主体のドぎついメイク。ねっとりとしたいやらしい口調でしな垂れ掛かる姿も、まあなんとも男に媚びた態度で。


「……ああ。愛する人、君の言葉通りに」

 その声に、ぼうっと頷くジュレ様。恋人の為にもっと頑張って抗いなさいよって、わたしは思うけど。

 もうビッチーナの呪いのキスを受けたのかしら?

 怪人のキスは、呪いのキスで。それを受けてしまえば、どんなに熱愛のさなかでも、瞬時にして彼女に恋をしてしまい、彼女への思いは冷めてしまうというの。


「ジュレ様! そんな……! どうなされたのですか!?」

 姫は驚愕し、ジュレ様はそんな彼女の声など聞かないそぶりで、ビッチーナの事を抱きしめる。

 ……受けたのね、この流れだと。


「さあジュレさまぁん。アタクシがドエース様に褒めて貰えるようにぃ、シッカリお姫様と縁を絶ってちょうだいなぁ」

 ビッチーナが見上げる先にある、お城のバルコニーには、すらりと背が高く、悪趣味な紫のスーツがキマってる退廃的な美形が立っていた。


「む、あの青年、この距離からも我に存在感を見せつけおる……。なかなかやるな」

「ちょっとそこのマスコット。何を張り合ってるのよ……」


 銀髪、紫のスーツ、キメポーズ持ちときたら、あいつは……悪の幹部、ハーレム怪人ドエース!

 アシメの銀髪にアンニュイな表情が、ビジュアル風のイミフな立ち姿をやけに際立たせている男だ。

 その名の通り、自らのお取り巻きのビッチヒロイン怪人(凄い響きだ) たちを使って、謎のパワー『ブレイクハート』 を集めてる組織の幹部で。


 ……今更ながら、テキトーすぎるなぁ。ブレイクハートってなんだよ、ブレイクハートって。


 とは言っても、彼の事はよく知らないのよね。

 わたしが具合を悪くして、友人に企画を任せてから作られた設定のようで。

 あのキャラ、もとい悪の怪人の事はよく知らないのよねえ……。せいぜい、ビッチーナの上司で、現場でヒロイン怪人達を監督する役目て事ぐらい。


 そんな、悪の幹部が見下ろす中で、とうとう貴公子は言っちゃった。




「もう我慢ならない、お前とは、婚約破棄だ!」




「あっ、ダメよ、そのセリフは!!」

 わたしが思わず声を上げた時。


 ガガーン! 突如空に現れた暗雲から雷が落ちる!

 公子は雷に撃たれ、心臓を抑えながら倒れ。

 さらに、地面からマニキュアのボトルのようなものが生えて、公子を飲み込んでしまう!


「ああっ、怪人の呪いのキスを受けた貴公子の心は今まさに悪に染まった! ブレイクハートから、モンスターが生まれてしまう!」

 プリティは悠長に解説セリフを言うの、やめてくれないかな。


 それを、遥か上空から眺めてるわたしときたらね。

 もう、見てるだけなんて辛いんですけど!?

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