悪役令嬢、リフォームする。
楽しかったり内心頭を抱えたりしたドレス選びの日は、あっという間に去り。
今日はお母様の右腕こと上級使用人、ビネー婦人の監督の下、当日の茶会をするお部屋……サロンルームを飾り付けます。
あ、今日は魔王系マスコットはお部屋の隅のバスケットで待機中よ。掛け布の隙間から恨めしそうにこっちを見てるけど、人の目があるところで、自由に動かす訳にもいかないしねぇ。
庭園向きの日差しの入る大きめのお部屋、そこがわたし専用のサロンルーム。
ここを、完全にわたし色に染める事から始めるの。
なお、壁紙、壁掛け、カーテン、照明、カーペットといった内装から、テーブル、椅子などの家具、花瓶や花など装飾品。
と、もうリフォーム会社もびっくりの総入れ替えとなります。
……うわあ、本当これ、気が重いわぁ……。
こうして悪役顔のわたしがうんざり顔をしていても、傍目には何か企んでるようにしか見えないんだろうけど。
内心は引いてるのよ? 貴族の、贅沢すぎるお金の使い方や、その実、家の権力を誇るが為に散財せざるえないという、プライドの重さをね。
それに、今更ひるんでもいられない。
もう、招待状も送っちゃったし。
気の早い人はもうお返事があったとか。お母様が笑ってらしたわ。
『まあ、流石はバーバラさんね。去年の不幸から、貴女の処に沢山の婚約願いが届いているのを知って、貴女と同年代のご令嬢を持つご婦人がたが敵情視察に来るそうよ』
それはつまり、ライバルのわたしの出来を見るために、ですか!
ますます気が重いよ、お母様……!!
テーマは、あれね。
十代の若々しさと華やかさ、かな。
わたしが好きなのはパステルカラーだけど、お母様がいやがるのよねぇ。「そんなぼんやりした色では、我が家が侮られます」 とか言って。
だから、それなりにはっきりした色使いでないといけないかな。
「壁紙の柄はさりげなくかわいいのがいいわね。野苺に蔦……ですとか」
「はい」
わたしの呟きを、側に控えた上級使用人がすぐに手配しようとするが。
「今は、まだ考え中よ、保留しておいて」
「かしこまりました」
「カーテンも壁紙と近い配色で……。この部屋は天使の天井画が素敵だから、床にも天井画の華やかさに負けないものを置きましょう」
わたしは腕を組みながら、ゆっくりと部屋を回る。
絵やタペストリーなども、天使関係のものを探したらいいかしらね。
天使グッズ部屋。なかなか可愛いじゃない? うん、イメージが出来てきた。
「若いからこそ使えるデザインが良いわよね。ロマンチックな部屋にするのもありかしら」
十代にしか使えないデザインもあるしね。
どうせ、飽きられないよう何年か経ったらリフォームするんだし、「今」 のわたしに合うのにしてもいいと思うんだ。
ここに、家格に見合った豪華さや贅沢さをプラスする。
「家具は、白で統一しましょう。猫足のデザインなど、可愛いのがいいわ。でも使いにくい天板や座面はいや。いずれ手放すにしても飽きのこないものを。格が足りないなら金の装飾やを足せばいいわ……これが、わたくしのだいたいの考えになるけれど……どうかしら?」
ドキドキと、上級使用人の判定を待つ。
「宜しいかと存じます。ただ、壁紙や布類も同様に統一してはいかがでしょうか」
「それだと、十代の明るさというか……そういうのが足りない気がするのだけれど。素人考えなので、おかしいならそう言って頂戴」
「失礼致しました。では、地の色を揃えては如何かと」
「金色に近い……クリームイエロー? 悪くはないけど、今度は白い家具が浮かない?」
「お嬢様のお考えは理解致しました。ならば、完全に白でない、オフホワイトなど……」
貴族出身であり、お母様と共に茶会へも向かう侍女のビネー婦人。社交のプロである彼女の指摘は、いちいちもっともだわ。
彼女に学びながら、どうにか見栄えのする部屋にしないと。
茶会では、この道何十年の茶会達人のマダム達に、室内の調えも見られるから、センスあるインテリアやメニュー、お花の飾り付けすらもチェックが入るのよ。
これだから、当日まで気を抜けないのよねぇ、これが。
「はー、今日も疲れた!」
自室のベッドでのんびりしながら、籠に突っ込まれたままのプリティにグチを言いまくる。
あ、プリティを寝室に持ち込むのは、いつもじゃないよ。今日はグチにつきあってもらってるだけで、常はリビングの長椅子に籠ベッドで寝て貰ってる。
それに、わたしの夜着はセクシー系じゃないふつーのワンピだから。
寝てる時までセクシー悪役を勤めたくないので。
「もうね、美術書とか簡単に見られる「前」 の自分に文句を付けたいよ!! デザイン専門に通ってたのに、お前の知識はそんなもんかーって!!」
うわー、と叫ぶわたしに、魔王系マスコットはよしよしともふもふの手で腕を叩いてくれる。
「それはジャンル違い、というやつだ。ご主人はどちらかと言えばサブカル系に強かっただろう?」
柔らかい腕で労われているわたしは、がば、と、顔を埋めていたクッションから跳ね起きる。
「……何で、サブカルなどという単語を知ってるのかな!?」
「うむ?」
きょとん、と不思議そうな顔をするまんまる生物。
「我は何か、おかしな事を言ったか?」
籠の中で首を傾げるプリティ。
「わたしが好きだったとか、サブカルとか! おかしいでしょ!」
何で、この世界の生き物が、前世のわたしを知ってるような言い回しをするのだ。
「ふむう? ……おそらくは我を作られた神様がお好きだから、だろうな」
腕を組み首をかしげて、何でもない事のようにプリティは言うけれど。
わたしは驚愕せざるえない。
だってそれって。
「ええっとそれは……この世界を作ったとかいう?」
ついでにわたしを魔法少女に据えた、元凶とかいう?
……悪役令嬢兼魔法少女に転生させられて苦労させられているわたしにとって。
わりと、日頃恨みに思ってる――。
問題の張本人、いや張本「神」 じゃないのですかね!?




