表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/70

悪役令嬢、ドレス選びをする

「む? 今日は珍しく機嫌が良いのだな」

「プリティにも分かっちゃう? ふふー、今日は、ドレス選びの日なんだよー」


 ドレスに着替え、リビングで日課となった魔王系マスコットのパワーアップ計画に朝から励むわたしに、プリティは不思議そうに首を傾げている。




 あれからも、お茶会の準備は続いている。

 手の痛くなる招待状書きは何とか三日程で終わらせて。

 今は、上級使用人のアドバイスを聞きながら、お茶の銘柄や茶器、お皿など陶磁器を選んでいるところだ。


 銀器と言われるナイフやフォークもだけど、陶磁器類も、貴族の財産の一つとされているの。

 わが家も美術品のような美しい陶磁器を沢山持っているわ。それは、貴族としての自慢ね。


 目録を見ながら、季節や家格に合わせての選定が、ほんとうに大変なんだけど……。

 まさか良家の娘が倉庫に突っ込んで端から箱を開けて回るのはアレだし、タイトルで目星を付けて、よさそうなのを幾つか上げて。

 家財の管理係である執事にいちいち出し入れして貰い、本物をじっくりと見て覚えて、を繰り返しているところ。

 お母様なら、お茶会も開くしある程度は把握してるのでしょうけど……わたしは、家財に詳しいわけではないし。

 これは、しばらく掛かりそうな予感だわ……。




 そんな、憂鬱になるような時間の中。

 もっとやる気を出せとでも言いたいのか、お母様が新しいドレスの手配をしてくれたというわけ。


「ご主人は、毎日着ているドレスに悪趣味と文句を言う割に、ドレス作りは好きなのだな」

「それはそれ、これはこれよ。これでも女の子だもん、服を見るのは楽しいんです!」

 だって、いつも用意されるのはわたしの趣味に合わないのよ。色は派手な赤とか青とか原色ばっかり、形は成人女性が着るような大人っぽいもので。

 もっと、落ち着いてて可愛い色がいいんだけど……部屋着や普段着のドレス以外は「それでは、大人し過ぎてバーバラさんには似合いません」 とか言って、お母様が許してくれないんだよね。

 むくれるわたしに、そんなものか? と、プリティはまた首を傾げていたのだった。




 今日は、楽しいドレス選びの日。

 朝から、客間を開けて臨戦態勢でわたしはデザイナーの来訪を待っていた。

 デザイン画を広げる為に大きめのテーブルが用意され、それを囲むようにソファが置かれ。

 前世オタク気味だったわたしだけど、まあ女子ですし。お姫さまドレスってやっぱり嬉しいものなのだ。


 それほど時間を置かず、にこにこと笑うお母様ぐらいの歳のご婦人は、数人のお針子を引き連れて客間にやって来た。

「本日も我が商会をご贔屓頂きまして、嬉しゅうございますわ」


 そう言ってスカートを摘み礼をする、マダムエッタ。

 ご婦人が纏う、スカートの膨らみが控えめな品のいいドレスは、彼女のお手製だという。

 布地やレース地こそ男爵家の者らしく質を落としているが、染め色も鮮やかでいいなあ。あのレースの付け襟、真似したい。


 彼女は、商家上がりの貴族の家の娘で、良家で使用人を勤めるうちに社交の場で見るドレスの美しさに惚れて、独学でデザイナーをめざしたという、見上げた根性の職人さんである。

 彼女がラッキーだったのは、お家が手広く仕事をしているからか、様々な国のトレンドをいち早く取り入れ、時代を先取りしたドレスを作れるところ。

 当然、社交界のトレンドリーダーの一人であるお母様が、ご贔屓にしてる人なわけ。


「おはようございます、マダムエッタ。今日は貴女の最新のデザインを見せて頂けると聞いて、わたくしとても楽しみにしていたの」

 わたしが笑顔で言うと。

「バーバラ様にそう言って頂けるとは光栄です」

 にこりと、極上の笑顔を返してくれる。


 お茶を一杯頂いてから、早速商談に入る。

 採寸はついこの間、普段着を作る時にしていたから、今日は新しいデザインや試作品のドレスを見せて貰い、色や素材などを決めるまでが、わたしの仕事だね。


「早速ですが、丁度バーバラ様がお似合いになるドレスの試作品をお持ちしましたの。気にいって頂けたら是非……」

 きらきらと目を輝かせる婦人に、わたしは悪い予感を覚える。

 ああ、この目はやばい。

 絶対、原色ド派手お色気ドレスを思いついたって顔だ……!!


 この世界は中世ヨーロッパ調の背景ではあるけれど、書き手が現代を生きていたからか、衣装デザインについては、結構フリーダムだったりするんだよね。

 コルセットがちがちの宮廷風もあれば、民族柄やモチーフを取り入れた折衷デザインもあり。

 あ、流石にパンツスタイルは許されないよ。

 一応、マナーとして手足は隠すけど、割合と幅が広いの。


「用意したドレスは、これですわ!」

 満を持して、トルソに着せ掛けられて出されたのは、スカートに背びれのような飾り布を付けたマーメイドラインのドレスだ。

 確かに綺麗なシルエットだけど……それは夜会向きじゃないかな!? それと当たり前のように深紅で作るのやめて欲しいんだけど!?


「ま、まあ、おほほ。マダムは冗談がお上手ね。わたくしは昼の茶会の為のドレスをと言ったはずよ?」

 思わず笑顔がひきつっちゃうよ。

「まあ、それは失礼致しましたわ」

 にこりと微笑んで、すぐに大きなテーブルの上に、デザイン画を並べ始める。

 ……よかった、こっちはちゃんと昼向きの比較的に大人しいデザインのだ。


「わたくしとしてはこの丸襟の、胸元にレースと飾りボタンを付けたデザインが好きね」

「まあ! そんな平凡なデザインではバーバラ様の美貌が引き立ちませんわ。そうですわね、代案と致しましては、丸襟は総レースの立ち襟に、首から胸元に掛けてを透け感のある布で覆ったドレスはいかがでしょう?」

 ……おや? やっぱりセクシー系から抜け出せないのだけれど、おかしいな。

「じゃ、じゃあこちらのスタンドカラーの異国調のはどうかしら。刺繍もたっぷり入っているし華やかで、いいと思うのだけれど……」

 アオザイ風のデザインのドレスを指す。とてもシルエットが綺麗な民族衣装よね。

「まあ、お目が高うございますわ。それは小国より取り寄せました、わが商会の最新作ですの。アンダースカートの色を変えたり、グラデーションにしたりしてもとても綺麗で……」


 双方の考えの相違もあり、結局、デザインが決まるまで半日がかりになったよ。

 しかも、ドレスの形や色はこちらの意見を汲んで、丸襟に飾りボタンのパフスリーブ、爽やかなミントグリーンのものになったものの……。

 どうしても色気を出したいらしい婦人の願いで、首もとから鎖骨当たりを透け感のある布で覆う、セクシーデザインになってしまい……。

 内心に頭を抱えている。


 あれなの? これも悪役令嬢だからかな!?

 セクシー路線から抜け出せない自分の手を、じっと見つめる、わたしなのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ