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霞んだ景色の中で  作者: ざっく
霞んだ景色
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剣道部

----結論、見つからない。


 「ねえねえ、荒垣さんって、どれ?」

 突然、由美が隣の女子生徒に声をかけた。

 「ええ?知らずに来たの?何しに来たのよ」

 「噂を聞いて、興味本位」

 「なるほど。・・・あの、隅にいる・・・今、前屈しているひとを押している方よ」

 聞かれた方は、くすくす笑いながら、一人の男子生徒を指さした。

 千尋は、由美の社交性の高さに脱帽しながらも、女生徒が指さす方向へ視線を向けた。

 なるほど。顔の整ったすらりとした体格の人が、前屈補助をしていた。

 「へえぇ。何年生?」

 「呆れた。本当に何も知らずに見に来ただけなのね。1年生よ。1年生で団体戦レギュラーに入って、個人戦でも3位入賞したんだから!」

 興味薄そうに、隅を眺める由美を、ライバルにはなり得ないと感じたのか、親切にいろいろ教えてくれた。

 「なるほど~。あとさ、西田先輩って知ってる?」

 「西田先輩?2年生の?」

 「そうそう!背がすっごく高いって聞いてさ」

 「おもしろがって見に来たの?暇なのね」

 その女生徒も、おもしろそうに由美を見た後、

 「私も2年だから分かるわ。ん~・・・あれ、いないわ。次期部長とか言われてるみたいだから、外で顧問と話してるかも。多分、剣道部で一番背が高いから、見かけたら分かるわよ」

 「ありがとーございます!探してみまあす」

 先輩だと分かったとたん敬語になった由美に、その先輩は笑いながら、どういたしましてと言った。

 今陣取っている場所を、教えてくれた先輩に譲って、由美は千尋を引っ張って人混みを抜けた。


 「由美は素晴らしいよ」

 「自分でも思うわ」

 ようやく人にもまれる場所から抜け出して、千尋はよれよれでため息をついた。

 バーゲンみたいで血がたぎったと、訳の分からない興奮状態にあったらしい。いい場所を確保し、安いから買うんじゃないのよ。欲しいから買うの。それを吟味するには、自分から動かなきゃ獲得できないのよ!などと、バーゲンのための格言を述べてきた。

 由美は別に苦学生でも何でもない。

 普通に両親がそろって、普通の家庭だったはずだが、あるとき突然、バーゲンの楽しさに目覚めて、バイトをしてまでバーゲンに行くという熱の入れようだ。

 競争のような状況で商品を漁るのが楽しいらしい。千尋には全く理解できないが。


 「あ、あれじゃない?」

 由美の視線をたどると、そこには、男子生徒と顧問であろう先生が話している姿があった。

 遠目でもすごく背が高いことが分かる。

 千尋の心臓が大きく音を立てた。

 「よし、回り込むわよ」

 明らかに面白がっている由美が千尋を引っ張って、声の聞こえる位置まで移動した。

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