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霞んだ景色の中で  作者: ざっく
霞んだ景色
13/27

練習試合

 いざゆかん!


 土曜日、千尋は自分に気合を入れながら

 学校に向かった。

 案の定、そこは人だかりができていた。

 本当は、少し早めに来て・・・ということは思ったのだが、偶然に西田先輩と行き会ったりなんかしたら、気まずすぎるので、時間ぎりぎりに来た。

 多分、剣道部員はすでに集まってウォーミングアップなどしているだろうなという時間に家を出た。

 避けてどうするという意見は今は聞きたくない。

 告白はする気でいる!頑張る!

 だけど、その前に嫌そうな顔をされたら、その決意は空気の抜ける風船よりも早く、ぴゅるるると飛んで行ってしまうだろう。

だから、試合終了までは見つかりたくない。

 ・・・・・・でも、試合は見たい。

 西田先輩の試合の姿。見たことがない。見たい。格好いいに違いない。見た過ぎる。

 ということで、小さな体を割り込ませて、下の窓からのぞいてみた。


 もう試合開始5分前だ。

 レギュラーだろう5人が、正座で座っているのが見えた。

 西田先輩もいる。5人の真ん中に大きな体がどんと座っていた。

 一番端っこが、多分、荒垣君。逆の端っこに、この間千尋を「こんなの」呼ばわりしていた、部長と呼ばれていた人が座っていた。

 目を閉じて、精神統一とかしていたのかもしれない西田先輩が、ふと目を開けて、こちらを見た。

 ちょうど直線上にいたためか、しっかりと目が合ってしまった。

 しまった!

 と思うものの、ここで引っ込むと、もう戻れないので、目をそらすだけにした。

 気づかれていないと思いたい!

 

 試合が開始されると、周りの女子の黄色い歓声が上がる。

 「先鋒、前へ!」

 審判の先生の声で、防具を被った荒垣君(多分)が、前に出てきた。

 「きゃあああぁぁん!」

 ぎょっとしたように、試合相手の生徒たちが周りを見ていたのが分かった。

 ですよね。私もちょっと、びびりました。


 剣道の試合は、早すぎていまいちよく分からない。ルールも知らない。

 だけど、最後に審判の先生が旗を上げる方なのだろう。

 荒垣君は勝った。ものすごい声援だった。

 次は、負け。

 なんとなく、周りの女子の熱がなくなった。

 最後の挨拶のためだけにいるのかもしれない。

 そして、西田先輩。

 防具を付けてしまって顔が見えないが、立ち姿が、他の誰よりも背筋が伸びて格好いいと思う。

 顔が見えないのをいいことに、さっきまでそらしていた視線を戻して、一挙手一動を追いかけた。

 あれ、まだ試合始まる前だけれど、負けておちこんでいるかのように、防具の顔部分を左手で覆って俯いてしまった。

 どこか痛いところでもあるのだろうか。

 部長が何か声をかけて、振り払うように竹刀を両手で持ち直し、構えた。


 掛け声とともに打ち合いが始まった。

 ・・・・・・と、思ったら終わった。

 西田先輩の方の旗があがったから、勝ったのだろうと思う。早すぎる。

 さすがに、ちょっとおもしろくない。

 でも、防具を脱ぐ姿を期待して、わくわくしながら見ていると、座っても脱がなかった。

 隣の人になんか話しかけられているけれど、脱いでくれない。あれえ?


 試合は結局、4対1で勝利した。

 4番目の人が勝った時点で決着はついていたのだけれど、練習試合という事で、全員試合をしたらしい。

 西田先輩が防具を取って、飛び散る汗とか、首を振る仕草を見たかったのに、他の人が試合をしている間に素早く脱いでしまったらしく、見逃してしまった。

 残念すぎる。どうして時間差で脱いだんだろう。

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