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♪2.はじまり

 登校初日。俺は朝、気が重くあまり学校に行く気になれなかった。昨日の始業式は校長が気を使ってくれて休んだ。明日に備えるように、だとさ。

「はぁ……」

思わず溜め息がこぼれた。その時、ドアをノックする音が響く。

「悠聖? 起きてるの? 学校、遅刻するわよ」

……母さんだ。

「今行くよ」

そう返して重たい腰を起こし、学校に行く準備を整えた。


 玄関で靴を履き、ドアを開ける。

「行ってらっしゃい」

その声に振り向くと母さんがいた。

「……行ってきます」

素っ気なく返して、家を出る。久しぶりのその会話に、俺の気分は少し軽くなった。


 一切走ることなく、学校へと向かう。ギリギリの時間で着き、元々教えられていた教室に向かった。廊下を歩いていると、担任らしき男の声が耳に入ってくる。

「──おい、鑑。いないのか」

俺はその教室のドアを勢いよく開けた。

 ガンッ……!!

「今、来ました」

そう言って、担任を見、そして教室を見回す。……予想通りの反応。女子も男子も、前の学校と何ら変わりない、馬鹿の集まりだ。

 そんな中、一人の女子に目が止まる。他の奴らとは明らかに違う反応だった。

(……何だ、あいつ)

……どこかで、見たことがあるような気がした。


 俺は唯一空いていた席に座る。彼女の隣の席だった。未だに感じる彼女からの視線にそちらを向くと、いきなり目をそらされる。一瞬見えた彼女の目は、まるで信じられないものを見たかのように見開かれていた。窓にうつる彼女の顔を見ると、その目には涙が浮かんでいる。


「──おい。おい、九条。次、お前」

担任の呼んだ名前に違和感を覚える。

(──九条、だと……?)

呼ばれた彼女は何事もなかったかのように起立した。その時、揺れた彼女の黒髪が目に入る。瞬間、あのメールの写真に写っていた女の人の姿が脳裏をよぎった。

(──まさか)


「──九条 楓桜です。よろしくお願いします」


 ──九条 楓桜。その名前を、忘れるはずがなかった。

 ……兄の……あいつの、恋人の名前だ。


 その姿を見るのは久しぶりだった。兄は彼女が写った写真を、付き合い始めた中2の頃にしか送ってこなかったから。

 あの写真と比べると、今の彼女は大分大人びた印象だ。そして、どこか儚い雰囲気を纏っている。窓の外で散る桜の花が、より一層彼女を引き立てているような気がした。……綺麗だと、素直にそう思った。


 自己紹介を終えた彼女は、座るとすぐに俯いてしまった。

 彼女にとって、俺は目障りにしかならないだろう。ただ辛い思いをさせるだけの存在。


 俺は彼女から目線を外し、おもむろに外の空を見つめる。そうなるしかない彼女との関係が、少し悲しく思えた。


 


 


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