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ナルルは異世界を旅します。ぶい。  作者: 鬼京雅
日本ワールド編です
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日本ワールドです。車に乗りますよ。

 日本ワールドに来ました。

 夜の国道を二人の美少女を乗せた一台のメタリックレッドの乗用車が田舎の国道を走ります。

 その一人は輪廻を司る美少女魔法使いである私、ナルル。

 もう一人は召使い……じゃなくて同じく魔法少女のミルキーです。

 今は車という乗り物を魔法で動かしています。

 とりあえずミルキーは連れて来ました。

 彼女を上手く使うと私も楽ですから。

 楽しいし。


「ミルキーは運転が上手いですね。関心です」


「上手いですねじゃないわよ! 何でこんな細かい魔法操作をする車の運転なんかしなきゃいけないの? これ結構キツイわよ」


「いいじゃないですか。私が簡単に出来る事も出来ないなら私を超える事なんて出来ませんよ?」


「ぐぬぬ……そうね。確かにそうよ。アンタなんて簡単に追い抜いてやるんだからね。今は胸しか勝ってないけど、いつか全てを追い越すわ」


「胸でも私が勝ってますけどね。私はC寄りのBカップなので」


「はぁ? アタシがC寄りのBよ。アンタはAカップでしょ。アタシより体重が軽いんだからアタシの方がデカイのよ」


「お尻が。ですね」


「違うわよ!」


「前見て、前」


「わかってるわよ……ぐぬぬ」


 魔力で車をコントロールしているミルキーは運転に集中します。

 集中してくれないと事故が起きます。

 安全運転を心がけていきましょう。

 ぶい。


「おっぱい戦争は私の勝利として、それよりも天気がおかしくなってきました。イクオダ村に急ぎましょう」


 空には稲妻がゴロゴロと鳴り響き、雲行きが怪しくなってきました。

 窓ガラスから天を見るミルキーは言います。

 天を見るミルキーって何かゴロがいいですね。

 ミル・ミルキーだと甘い感じがします。

 ナル・ナルルだとナルシストっぽいので羨ましいかも。

 そしてミルキーは言います。


「ワープした時に何でちゃんと座標が合ってないのよ? 座標が合ってればこんな車なんて使わなくても良かったのに」


「そうれはミルキーの体重が予想より重かったので計算が狂いました。残念」


「アタシは痩せてるわよ! アンタの計算ミスを人のせいにしないで!」


 ポツリ、ポツリと車の窓ガラスに当たる雨粒を見てミルキーは言います。

 助手席に座る私はアクビをしながらポテトチップスを食べます。

 この世界はお菓子がおいしいですね。

 たまりません♪

 ぶい。


「海苔海苔、塩塩、元気がでるよ♪ 海苔海苔、塩塩……」


「変な歌を歌うな。天が怒ってるわよ」


「怒ってません。ただの自然現象です」


「雷が鳴ったらオヘソ隠さないとオヘソ取られちゃうんだから!」


「それは迷信です。まさか信じてたのですか? ぷぷぷ」


「は? アンタはもうオヘソ無いかもしれないわよ……迷信なんて……迷信なんて……」


 半泣きで歯に青のりをつけながらミルキーは呟きます。

 そして油っぽい指先を私の服でふきました。


「コラ。やめなさい」


「天のお怒りです。残念っ! きゃああ!」


 ゴロゴロッ! と雷が鳴り、ミルキーは嫌なタイミングで鳴るなと顔をしかめます。

 時刻も夜の七時過ぎで早めに目的地であるイクオダ村に着きたい為、ミルキーは法定速度より早いスピードで車を急がせます。

 すると、国道の真ん中に猫が数十匹群がっているカカシのようなものが見えました。


「なっ! ナルル! 何かにつかまって!」


「あーれーっ」


 キキィー! と急ブレーキをかけてミルキーは車を止めました。

 半分寝かけていた私は前屈みになりつつ現状を確認します。


「道の真ん中にカカシが置いてありますね……しかも猫が群がってる」


「あれカカシじゃなくない? 微妙に動いてるし……人間だよ」


「人間? 人間だとしたら気味悪いですね」


「人間じゃなくても気味悪いでしょ」


「そうですね。一応確認してみましょう……あれがプラネットスフィアからこの世界が離れ出している原因かもしれません」


 ドアを開けようとドアノブに手をかけると、窓ガラス越しに黒い影が映ります。


「……?」


 私の目の前には猫まみれの老人の顔がありました。

 不気味な老人は二ッと微笑むと、老人にまとわりつく猫達も二ッと笑いました。


「怖い」


「キモイ……」


 とミルキーの呟きを横で聞きながら、私は四次元ブラジャーから警察手帳を出し窓を開けます。


「ちょっとおじいさん。国道の真ん中で立ち尽くすのは危険ですよ」


「……随分若い警官だ。これはこれはすまない事をしたね。私は猫売りじいさん。猫はいらんかえ?」


「いりませんよ。とりあえず道路の真ん中には出ないで下さい。この国道は車の通りは少ないとは言え、危ない事は危ないので……」


 警察手帳を四次元ブラジャーの内ポケットにしまい、窓ガラスを閉めようとした私の顔の横に顔を出したミルキーは、


「ねぇ、おじいさん。この辺に民宿とか旅館ない?」


「その脇道を少し行ったイクオダ村に民宿が何件かある。もうすぐどしゃ降りになるから泊まるとええ。夜道で車がスリップしたら危険だからのぅ」


 よろよろと猫売りじいさんは国道を歩いていきます。

 すると、雷鳴と共にどしゃ降りになりました。

 イクオダ村の場所を知って喜びたいのですが、車の中の二人は唖然とします。


「……いきなり降る量じゃないですね。流石にこの雨じゃ視界が悪くて夜道の走行は無理です。急ぎましょう」


「じゃあ飛ばすわよ。にしても滝のような雨ね……あのじいさん大丈夫かしら?」


「……どうでしょうね。あのおじいさんは一瞬目を離したら、どしゃ降りの中に消えましたよ。でも大丈夫でしょう。猫なんかを身に纏ってるくらいの変人ですから。猫好きに変人が多いのは私はこの前地獄で学びました」


「そうよね猫好きには変人が……ってアタシの事!?」


「そうです。貴女が変なミルキーです。変なミルキーったら変なミルキー♪」


「変なミルキーったら変なミルキー♪ ぶっとんだ!」


「わぉ」


 私への当てつけのようにミルキーは車を急加速させました。

 ゴロゴロ……と闇の空に黄色い稲妻が低く響き、天候を更に悪化させます。

 そして、私とミルキーは古ぼけた民宿の駐車場に車を止めて民宿を訪ねました。

 一匹の黒い猫が二人の背中を見て立ち去ります。

 私達を出迎えたのはこの世界でいう小学生くらいの少女でした。


「ころそ、ころそ、なーにでころそ。ころそ、ころそ、ホウキでころそー」


 ホーキを振り回し物騒な事を言い、走り去りました。

 困ったものです。


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