地獄ワールドとお別れします。
閻魔大王達との別れが来ました。
地獄がプラネットスフィアとリンクし、人の魂が巡る輪廻が安定したので私は地獄とおさらばします。
閻魔大王の間にて、お別れの話をします。
「では輪廻を司る私の仕事はこれにて終わりました。なので帰ります」
「そうか……ナルルには世話になった。この息子との関係もナルルのおかげで良い方向に向かっておる。感謝するぞ」
閻魔大王は深々と頭を下げました。
微妙に瞳に涙を溜めていますね。
そこまで私は感謝されるような事をしたわけではないのですがね。
その辺は閻魔大王の感情なので良くわからないです。
まぁ、仕事をして感謝されるのはありがたいですけど。
そして、閻魔大王の息子であるジュニアが話しかけてきます。
「……ナルル! 行っちゃうのか! 俺はナルルの事を――」
「私は輪廻を司る旅人です。色恋沙汰は御法度なのでゴメンなさい。地獄の女性と関係を持って下さい」
「うぎゃー! ソッコーでフラれたよ! くそー!」
ダッシュしてジュニアは閻魔大王の間から逃げ出します。
ちょっとストレート過ぎましたかね?
でも、私は輪廻を司る存在なので色恋は出来ないのです。
ゴメンなさい。
大きなアゴをかき、閻魔大王は言います。
「すまんの息子が。最後の最後まで迷惑をかけてしまって」
「いえいえ。私もストレート過ぎました。中々オブラートに包めないものです」
「いや、色恋沙汰はハッキリしてくれた方がいい。ましてや異世界の人間だ。付き合う事にでもなったらジュニアの奴はこれから地獄で困る事になるからのぅ」
「困る……と言いますと、ジュニアはこれから何をするのでしょう? ミルキーが置いて行った猫の世話?」
ガハハ! と笑う閻魔大王は言います。
それにしてもこの人の声は鼓膜に響きます。
「猫どころではない。ワシには世継ぎがおるからな」
「となると、ジュニアは……」
「そうだ。正式に、閻魔大王の世継ぎとして命名する」
ほう、良かったですね。
ジュニアはこれから閻魔大王の息子として厳しく育てられるでしょう。
これでまぁ安心でしょう。
閻魔大王が健在で無いと、地獄は成り立ちませんから。
死んだ人達も困りますし。
「ここは悪さをした死者がたくさん来る場所なので気を引き締めて仕事をして下さいね」
「わかっておる。これより地獄は元の厳しい世界に戻る。いや、以前よりも悪人に対して厳しい世界にな」
「いいですね。期待してます」
「では、外まで送ろう」
「はい。そこの影で隠れてる貴女も行きますよ」
私は柱の影で隠れていたミルキーに言います。
ミルキーはここに集めた猫達の処遇がどうなってるか気になって閻魔大王に会いに来たようです。
腹を叩く閻魔大王は言います。
「安心せいミルキー。あの猫達はこの地獄でちゃんと世話をしてやる。とって食ったりしないから安心しろ」
「ありがとう……閻魔大王」
そして、ミルキーを連れて私は外に出ます。
そして小惑星ナルルに帰る為に魔法・トラベリングプラネットを使いゲートを開きます。
「えいえいえい、やーやーやー、とーとーとー、ちっちっちっ」
火炎、氷結、電撃、爆破系の美少女系無双コンボを叩き込みます。
すると、どこからか私を呼ぶ声がします。
どこかで聞いた声ですね。
まぁ、無視しときますか。
「おい、ナルル! 無視すんな!」
「ジュニアですか。もう元気になりましたか?」
「あたりめーよ! 俺は何てったってこの地獄を支配する存在だからな!」
「支配するってまだジュニアでしょう。気が早いですよ」
「気は早い方がいいんだよ! 俺が閻魔大王になったらまた来いよ!」
「えぇ、閻魔大王になれたら……ですけど」
「じゃーなナルル!」
「えぇ、サヨナラ」
そして、トラベリングプラネットのゲートが閉じて行きます。
そして最後の仕上げをします。
「……」
私は全身の魔力を開放し、全身全霊、天破侠乱、世界が天上に上る満面の笑みで言います。
これが――私の全ての力を込めた――。
「ぶい!」
これで完全に地獄の人間達は強制的に笑顔になります。
美少女の笑顔は世界を断つほどの武器なので最後に使うのです。
私とミルキーは地獄の人間達に手を振り、そのゲートをくぐり抜けました。
地獄の重い空気から解放され、新しい仲間であるミルキーと共に小惑星ナルルに戻ります。