ミルキーと戦います。中々強いですね。
敵の赤髪魔法少女の名前はミルキー。
何か甘そうな名前ですね。
あんな尖った性格の女の子なのに。
「私は天才なので勝てませんよ? 負けを認めてください」
「それを言ったらアタシだって少女よ! 天才だし! バーカ!」
プンスカ! と地団駄を踏みミルキーは怒っています。
地団駄とか都市伝説かと思ってましたが、本当にする人がいるとは驚きです。
ミルキーはおそらくカルシウムが足りてないだけでしょうが怒りっぽいですね。
無駄なエネルギーが消耗してるのが見えるようです。
でも魔法を使え、この地獄を乗っ取ろうとしたからには天才なのでしょう。
しかしですね。
理解されない天才は馬鹿ですから。
とりあえず私は彼女を理解しない方向で行きます。
何か……その方が彼女の心の引き出しから新しい発見があるかもしれないのと、面白そうなので。
「とりあえずどうしますか? 戦います?」
「当然よ! 戦わなきゃアンタ帰らないでしょ? なら戦うしかないじゃない」
「そうですねー。じゃ、ぶい」
瞬間、ミルキーは一気に左に避けました。
「――っとぉ! アンタぶい……とか言ってピースしながら魔法を使うなんて策士ね」
「残念ですね。すでにその岩場に私の魔法はかけられてるのです。変な猫のパンツ丸出しで私を見下していた時からね」
「にゃ! にゃんですって!?」
「にゃ? ほほぅ……にゃという言葉を使うなんて面白いですね。お腹が痛いです。貴女面白い」
ククク……と私はお腹を抱えて笑います。
当然のようにミルキーは怒ります。
うーん、ワンパターンで素敵です。
「にゃ! とか言ったのは猫が好きなだけよ! 猫語を喋れるんだからしょうがないでしょ!」
「猫語とはまた奇怪な。やはり地獄に猫が増えてた理由は……」
「そうよ。地獄を野良猫の住処にしようとしてたのよ。マグマは魔法でろ過すれば水になるし、食べ物にもなる。人間に捨てられた猫の行き場は普通の人間のいない所しかないの」
「だけど、鬼や閻魔大王を倒して住処を失えばその人達はどうなります? 貴女が恨みを買うだけですよ」
「いいのよアタシは。捨て猫のためなら世界だって敵に回すわ」
そのミルキーの覚悟は本物のようです。
でなければ地獄を乗っ取ろうとなどしないでしょう。
私は私の目的の為に決着をつけなければなりません。
全世界を安定させる輪廻を繋ぐ者として、負けるわけにはいかないのです。
私は私の大義を貫きます。
「ネコネココーネコ……ネコネココーネコ」
ミルキーの周囲に魔力の粒子が浮かび、やがてそれは一つの物体になりました。
その主人であるミルキーは叫びます。
「行け! 猫達よ!」
ばばばばーん。
魔力で生み出された猫の爆発が起きます。
無駄な自然破壊ですねーと呟き、私はゆらゆらと魔法猫爆撃を回避します。
そして私もぶいサインをしながら目からビームを出します。
地味かもしれませんが、これはフラッシュによる目くらましもあるので便利なのです。
ばばばばーん。
と、互いの中央で魔力と魔力の衝突が起きます。
こんなゾクゾクする戦いは久しぶりですね。
うーん。
やっぱりミルキーはお気に入りになりそうです。
そして、ミルキーも私の実力を認めてくれたようです。
「中々やるわね。でも貴女の攻撃も当たってないわよ。ベロベロベー! お尻ペンペン!」
また猫のプリントがされたパンツを見せつけミルキーは私を挑発します。
流石にあの臭いお尻を見せられるのは気分が良くないので、お仕置きします。
一瞬で間合いを詰め、両手の人差し指に力をこめました。
「かんちょー」
「ほげぇ!?」
私は尻をペンペンしてるので、浣腸をかましました。
始めての試みでしたが、上手に出来ました。
お尻を抑えてうずくまるミルキーは半べそをかいています。
何か両手の人差し指が穴に入り過ぎた事を感じたので匂いを嗅いでみました。
「……臭い」
「ちょっと! 私の服でふかないでよ!」
「でも貴女の匂いですよ? しょうがないじゃないですか」
「それはそうね……早く拭きなさいよ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
案外ミルキーは聞き分けのいい所があります。
私は生臭い人差し指を綺麗な状態に戻しました。
そして、ミルキーはハッ! とした顔で私を睨んでいます。
「ちょっと! 今のおかしくない!? 何でアンタに私が感謝するの? 何か本当に嫌な女ね。ロリババアのくせして!」
「長い時を生きていますが、ロリババアではないですよ。見ての通りの美少女です。ぶい」
「っとお!? そのぶいって何気ないポーズがら魔法使うのは卑怯よ! ヒーローもののアニメでも変身中とか攻撃しないとかは基本でしょ! お約束を守りましょうね?」
「うーん。隙を見せる方が悪いのでは? ドラマチックな戦いなんてフィクション以外じゃありませんよ」
「ロマンの無い女ね。イライラするわ!」
「そこまで言うならやりますよ……」
そして私は天に祈るポーズを取り、華麗に舞います。
それは、正に水面に浮かぶ美しき白鳥でしか例えようがありません。
自分で言うので間違い無しです。ぶい。
「ロマンは無くても愛がある。愛があって輪廻する。輪廻の美少女、ナルル参上。ぶい」
スゲー! とナルルは尊敬の眼差しで見ています。
ちょっと恥ずかしいですが、頑張ってみました。こんなに羨望の眼差しで見られると赤面します。
あぁ……脈拍が上がる。
「そんな凄いですか? 私なりに頑張ってみましたが?」
「そりゃスゲーわよ! アンタそれが決めポーズなの? 早くやりなさいよ。やりゃ出切るじゃない」
「うーん。ただの即興です。気に入ってくれたなら何よりー」
何か気に入ってくれたので安心しました。
私はそれにより勝利を手にします。
「さっきの即興ポーズをやった時に全ては終わってます。残念でしたね」
「ふざけないで! さっき変身とかのセオリーを教えたでしょ!」
「うーん、知りませんよ。細かい事は知りません」
「知りなさいよバカ!」
「私、少女ですから」
その一言でミルキーは倒れました。
ですが、すぐに立ち上がります。
わーお。
「あの一撃をくらってすぐに立てるとはやりますね。やはり面白い出会いをしたようです。また、会えたらいいな……」
私は微かな願いを込めてミルキーの背中を見送りましたが――。
でも、まだやる事がありました。
「戦いはこれからよ!」
ミルキーは立ち上がり猫屋敷の中へ消えます。
はあ……元気ですね。
私も猫屋敷に侵入します。