ンゴンゴ魔人をとめます。
シズカの魔力大覚醒が始まり、大魔法発動してしまいます。
魔力大覚醒は街、都市を破壊する覚醒の中でも最高位の覚醒です。
シズカの覚醒は仮面の国を消してしまうでしょう。
試合会場は混乱に満ちていますね。
ミルキーは暴走するシズカの魔力に吹き飛ばされました。
やれやれ。
「ンゴンゴーーー!」
「この魔法はシャインザッパー? いけない――」
この一撃は山一つを吹き飛ばします。
魔法着弾による衝撃でこの王国など消し炭になってしまうでしょう。
「ワープ」
シュン! と私はシャインザッパーの放たれた直線上にワープします。
そして、両手でぶいサインをしてそれを受け止める魔法を発動させます。
「……とうとう覚醒してしまいましたか。シズカは途方も無い魔法使いになりましたね。後は精神が成長すれば安定しますが、まだそれは先のようです」
ンゴンゴー! と獣のような叫び声を上げながらワープしたシズカは周囲の街を破壊しています。
完全に魔力に呑まれていますね。
このままでは本当にこの仮面の国はシズカの魔力で消え去ります。
「ミルキー。とりあえず時間を稼いで下さい。シズカの注意を一分だけ私から逸らしてくれればいいです」
「一分も? 正直、あれは覚醒というより暴走よ? このままだとあの子の命が危ないのもわかるけど、こっちがやられるレベルの魔力……アンタ並みになる才能を秘めてるわね?」
「流石はミルキー。冷静な判断ですね。精神が安定すれば私並みに魔法使いとして成長はします。はっきり言って化物を発見してしまいました。彼女はプラネットスフィアを歪める元凶に簡単になる存在です」
「なら何でアタシにやらせるの? アタシだってあんな一撃を何度も耐えられないわよ!? 数発くらったら完璧にアウトでしょあの威力じゃ?」
「下手すれば死にます。けど、あの暴走状態では生半可な魔法使いではどうにもならないでしょう。それに人間の通常の力による争いならあまり干渉したくはありませんが、彼女はこの仮面の国を消滅させてしまいます。なので止めなければなりません。それが出来るのは貴女だけですミルキー」
「アンタは……何でアタシをそんなに……」
困惑した顔でミルキーは私を見ています。
真面目に話してるのはこれが初めてでしたっけ?
丁度いいので私の本心を告げます。
何か告白みたいで恥ずかしいですね。
「私の背中を預けられるのはミルキーだけです。貴女がいれば私は安心して魔法に集中出来ます。どうかよろしく」
「……確かにアンタの背中を預かれるのはアタシしかいないわね。マジにはマジで返してやるわよ。あんなトーシロの魔法使いを抑えられないようじゃ、赤の魔法使いミルキーの名が廃るわ。やってやろーじゃないの!」
とうとうミルキーがシズカ鎮静化作戦を引き受けてくれました。
「では後でキスをしてあげましょう」
「は? いらないわよ。それよりカンピョウがいいわ。カンピョウ。よろしくねー!」
バッ! とミルキーは周囲をやたらめったら破壊する暴走シズカの注意を引きに行きます。
唖然とする私は困惑しながら呟きました。
「何でカンチョウがいいのでしょう? ミルキーは変態に覚醒したようです」
とりあえず私はミルキーに最高のカンチョウをしてあげようと思いつつ、魔力を溜めます。
そして街の広場でシズカとミルキーの戦いが始まります。
「ンゴンゴー!」
「このアホメイド! アタシはこっちよバーカ!」
魔力を全開にしたミルキーは暴走シズカの気を上手く引いています。
そして白銀の魔力が私の全身から漲ります。
ゆっくりと……確実に大きな魔力が両手に溜まります。
「レロレロペロペロあーれあれ。レロレロペロペロあーれあれ。シュッシュポッポ、シュッシュポッポ、チッチッチッ」
ズバババッ! と爆発、火炎、水流魔法がミルキーを襲っています。
暴走シズカの動きと魔法の選択をギリギリまで確認しながらミルキーは対処しています。
本当は攻勢に出て戦いの主導権を握りつつ、注意を引きたいのでしょうがミルキーは優しいのでそういう事はしません。
そういうミルキーだからこそ、任せられる役なのです。
心が折れず、完全な闇に染まらない者にしか私の背中は任せられません。
すでに魔法少女服がボロボロのミルキーは冷や汗が流れ、瞳孔が開き出しています。
魔力を全開にしながらそれを発射する事なく溜め続けるのは精神的にも肉体的にも辛いです。
ミルキーに限界が訪れました。
「もう少し……もう少しです」
魔力のチャージまで後、もう少しです。
すると、暴走シズカの火炎魔法がミルキーに直撃しました。
あれ、ちょっとヤバイですかね?
「ふんがーっ!」
恐ろしい事に、その魔力をミルキーは一気に食べてしまいます。
火炎を食べるなんてあり得ないですね。
でも、膝をついてしまいます。
そしてミルキーから全開魔力が消えました。
スゥ……と寒気のするような魔力の持ち主である暴走シズカが私を見ます。
すかさずミルキーが叫びました。
「ゴメン、ナルル! アンタの異常な魔力がバレたわ!」
「わかってます。後十秒ですが、ギリギリ間に合いませんね……どうしたものかな……」
「ンゴンゴーッ!」
と暴走した子犬のようにシズカは飛んで来ます。
私の膨大な魔力を吸収してやろうというようですね。
これはシズカに怪我をさせなくてはならないようです。
仕方なく私は両腕はチャージしていて使えないのでツインテールの毛先に魔力を集中させます。
この一撃でバランスを崩してもらうしかありません。
「シズカ……静かになってもらいますよ」
「ンゴンゴ!」
「では遠慮無く――!?」
私がツインテールの毛先から魔力を放とうとした瞬間、仮面王国の女王が現れました。
その若き女王はサーベルでシズカのホーキを弾き飛ばします。
「助太刀するわ。このシズカを止めればいいの?」
「いえ、もう魔力は溜まりました。後は見学してて下さい」
「あら、そう。私が来なくても良かったかしら?」
「いえ、ホーキを飛ばしてくれた事でシズカがそれを取りに行ったので素晴らしい仕事をしてくれました。後の事はお任せを」
「この国の女王なのに家臣に対して何も出来ないなんてね」
「最後のシーンは譲れません。だって私、少女ですから」
そしてホーキを回収したシズカに精神魔法をかけます。
「精神、安心、しんしんシーン!」
「ンゴ……ンゴ……」
シズカは精神が安定し、私は安心します。
というか寝てしまいました。相当疲れていたからですね。
そしてミルキーに褒美としてカンチョウをします。
ですが、ミルキーは悶絶しながら怒ります。
「カンピョウとカンチョウを勘違いしました。なので拭きます。臭いので」
「コラ! アタシの服で拭くな!」
「自分の匂いですよ? いいではないですか」
「……確かにそうね。拭いていいわよ……っておい!」
これにて仮面王国の事件は決着しました。
プラネットスフィアも安定し、新しい仲間も出来ました。
最近は出会いが多いですね。
私の日頃の行いがいいからでしょうね。
さて、最後の締めを行きましょう。
行きますよ?
せーの……ぶい!




