準決勝が始まります。師弟対決ですね。
準決勝でシズカは私と対戦します。
もう一つの戦いはミルキーと女王。
仮面武道会準決勝第一試合です。
ミルキー対女王の試合が開始されます。
超満員のコロシアムは自分の国の女王が勝つのか、果たして他国からの参加者が勝つのかそんな予想を裏で賭けをして盛り上がっています。やれやれですねぇ。
ポップコーンを食べる私はカルピスを飲みながら観戦します。
ここのポップコーンは塩味がやや薄いので売り子からカルピスの原液を買いました。
そしてそれを付けてポップコーンを食べます。
「デリシャス」
まぁ、カルピスの原液はどんな食材にも合いますからね。
タクワンやモヤシ。納豆にネギなども合いますね。だいたいの野菜はカルピスの原液で炒めておけば美味ですよ。お試しあれ。
でも、私の味覚はおかしいと言う人もいるのでクレームはやめて下さいね。
そんなこんなでミルキーと女王は白熱した戦いを繰り広げています。
クルクルッと女王の剣を空中で回転して回避したミルキーの剣技が炸裂しました。
「ミルキーソードラッシュ!」
「はあああっ!」
キインッ! と両者の剣が鳴り響きます。
こういう音はあまり好きではありません。
まだ、ガラスを引っかく音の方がマシです。
すると、ミルキーの一撃を浴びた女王は腹部を抑えよろめきます。
「アタシのサーベルさばきは高速よ。女王もここで敗北の時が来たようね」
ミルキーの太刀筋は中々のスピードです。
パワーにおいては女王が勝りますが、スピードにおいてはミルキーが優位。
まだ体力を残しているミルキーなら剣技のスピードを活かして勝てるはずです――が、私の目には赤い髪の少女の猫の髪飾りが飛ぶのを見ました。カシャ! という音を聞き、観客達も女王の見えない動きにざわめき立ちます。
「あまり調子に乗るなよ異国人」
女王は怜悧な言葉をミルキーに投げかけます。
唖然とするミルキーは落ちた猫の髪飾りを見つめ、恐ろしい女王を見ます。
「アンタの剣の間合いからは離れていた……のに髪飾りが斬られた? 剣が伸びなきゃ出来ないわよ?」
妖怪の力を知る私には何となくわかりました。
人の体内に流れるオーラ。
またの名ならば気を流し混んでいるようです。
それが見えざる刃となり、剣の先が伸びるように攻撃出来るのでしょう。
そして、ミルキーはそのまま敗北しました。
「仇討ちはしますよミルキー……」
「コラ! まだ死んでないわよ!」
てなわけで、私の試合が始まります。
私の仮面武道会準決勝の相手は仮面王国のメイドのシズカです。
つまり、私の弟子ですね。
「師弟対決ですねシズカ。この数日間の成長を見せてもらいますよ」
「全力でいくよ! わたしの魔力の全てをナルルにぶつけてあげる!」
シズカはホーキを構えます。
私は武器が無いのでぶいサインをします。
そして、審判による決闘開始の合図がされ、私とシズカの試合が始まりました。
「先手はもらうよ! ファイアーボール!」
バババッ! とホーキの先から火炎が飛び出します。
「茶番はいりませんよ。牽制にもならない火炎魔法など無駄です」
その全てを簡単に指で弾き消滅させ、シズカを見ます。
するとシズカはホーキにまたがり空を駆けます。
どうやら空から仕掛けるようですね。
円を描くように私の周囲を旋回し、爆発系魔法を使って来ます。
私がぶいサインをすると、ズバババッ! と試合会場内に花火のような鮮やかな爆発が広がります。
「いい花火ですね。綺麗です」
「……わたしの魔力が展開した後に自分の魔力で彩りを加えて爆発させたの? 凄い……」
「あまり褒めないで下さい。照れます」
ふと、会場を見渡すと観客達は私の芸に感心して驚いています。
けど、仮面があるので本当の顔はわかりません。
なので、その爆風にいたずらします。
「たりら、たりら」
突風を生み出し、観客の仮面を吹き飛ばします。
ブオッ! という風と共に、無数の仮面が舞い上がりました。
ついでに負傷してるミルキーのスカートもめくっておきます。
「ちょっとー! やめてー!」
という声がどことなくしますが無視です。
サービス、サービスですよ。
男性達の反応を見れたのは収穫ですね。
ちゃんとスケベ心はあるようです。
素顔を晒して混乱が生まれる会場で一人楽しんでいる私はVIP席にいる女王を指差しました。
「……」
その女王は般若の仮面を変える事は無く、私を見下ろしています。
その女王に私は問います。
「既に仮面が外れて観客は素顔を晒しています。この状況では試合にならないかもしれません。どうしますか?」
「仮面はないけど、試合は再開してもらおうか。二度の偶然は許さないぞ白髪の少女」
「えぇ、偶然は起きません。必然なら起きますけど」
「……」
仮面女王は私に言葉を返す事は無く、審判の合図で試合が再開されました。
観客達は互いの久しぶりに見る素顔に驚きながら、武舞台を見ます。
ホーキを抱え仮面女王の反応にビビってたシズカは言います。
「やっと再開したか。でもナルル凄いね。やっぱり師匠だわ」
「そうですよ。私は凄いのです。だって少女ですから」
「わたしは美少女なりー」
「あ、コラ。私の方が美少女です。真似しないでー」
ふと、私の周囲で魔力の反応が高まります。
同時に爆発しました。
「ほう……初めに私の周囲を回ったのは魔術式を地面に仕込んでいたのですね。でもツメが甘いですよ」
爆発の砂煙の中にシズカを見つけました。
「ホーキはフェイクだったのですね――」
「そう、わたしの魔力でホーキをダミー人形にしたの。これで終わりだよナルル!」
背後からシズカが迫ります。
甘いですね。
私の身体能力はこのくらいでは反応してしまいます。
「あれ? これも……フェイク?」
「ンゴンゴ……直撃を受けたのが本体だよ!」
片方の先のツインテールの結び目が解け、垂れ下がりました。
髪への攻撃は許しませんよ?
「急成長しますね。ですが、決勝があるので今日はここまでです」
「まだ……」
「まだですね。ですが貴女はもっと強くなれます」
シズカの腹部に正面からの一撃をくらわして、倒しました。
「ドラゴンパワーですね」
どうやらシズカは龍の血筋の少女のようです。
この血筋は魔界の人間の血筋です。
それ故に魔力が高いのです。
実戦でシズカの謎がわかって良かったです。
そして、私はミルキーを倒した仮面王国の女王との決勝戦を迎えます。




