タイラントゴブリンの巣です。
タイラントゴブリンの巣に来ました。
ちなみにタイラントゴブリンはちょっと魔法で操作しています。
もう人を相当食べているので、人間に倒されても文句は言えません。
先頭に立つシズカにタイラントゴブリンは言います。
「グハハハッ! お前も食べてやるぞ! それとも蝋人形にしてやろうか!」
「このホーキがある限りは負けない!」
二人の戦いが始まります。
一進一退の攻防が続きますが、シズカは魔力をほとんど使えていません。
「まだ動きながらでは魔力を溜められませんか……」
シズカが魔力をタメている隙に相手は動きます。
そこも計算に入れなければなりません。
素早く動くタイラントゴブリンはシズカを吹き飛ばし、跳躍しました。
ホーキを抱えて立ち上がるシズカは目の前にタイラントゴブリンがいない事に気づきます。
「あれ? いない?」
「バカめ! 後ろだ小娘!」
棍棒を振りかざすタイラントゴブリンはシズカの背後で言います。
あっ! とミルキーは動きますが、私は制止します。
「そう、きましたか」
完全に背後を取られていたはずのシズカは一つの閃光と共に勝利しました。
どうやらホーキに溜め込んでいた魔力を背後に放出したようです。
武器を媒介にするのも魔術師の特権ですね。
でも、私はステッキもファイアーウッドロッドもありません。
いいんです。
私には皆を笑顔にするぶいサインがあるのですから。
「ナルル! ミルキー! やったよぶい!」
「それは私の決め台詞ですよ」
「いーじゃないの。弟子でしょ。師匠を受け継ぐのが弟子ってもんよ」
「確かに……」
私はとても手強い弟子を持ちました。
そして、召使いもいます。
「誰が召使いじゃ!」
と、召使いが何かを言ってますが無視します。ぶい。
そして日付は変わり私達は準々決勝へ向かいます。
※
準々決勝当日――。
武舞台にいる女王は観客達をなぶるように言います。
「どうやら不正を働いている魔女達がいるらしい。その者はすでに自分でわかっているだろうが、不正を働いていた以上処罰は下す」
観客達はざわめきます。
周囲の人間を互いに見ていますがそこに犯人はいません。
あー……と思いながら私は呟きます。
「あー、不味いですね。公に女王と戦えなくなるかも」
『え?』
ミルキーとシズカは同時に反応します。
私も流石に焦ります。
このまま仮面女王とこの仮面王国の国民である観客の前で戦えないとなると、厳しいものがあります。
この仮面王国の現状を変えるには仮面女王の心の闇を払い、敗北という二文字を突きつけるしか方法がありません。でないと、プラネットスフィアが安定しなくて私もこの世界に来た意味がないので困ります。
「どうしたものかな……いっその事、もう女王と戦おうかな?」
その呟きにシズカは言います。
「女王といきなり戦うの? それって結構不味いよね?」
「そうよ。今までの試合の意味が無くなるわ。もし戦ったらお尋ね者のまま仮面王国から追放されるだけじゃない?」
……ほう。
何かミルキーはとてもまともな事を言いますね。
案外、私が暴走しても抑えてくれそうです。
なので、これからSASHを遠慮無く使ってもいいでしょうか?
最近、そこそこ強い敵のいる世界へ行くので戦うのが面倒な時があるんですよね。
折角仲間が出来たので一気に片付けて、一気に終わらせて帰る――といきたいのも山々です……が、仲間達も私の背中を守れるようになってくれないと困ります。
そんなこんなで、私は仲間の成長を選びます。
折角出来た仲間ですからね。
でも、たまにスカッとする為にSASHは使うでしょう。
酔う時もありますし。
そして、これからは酔わされる事も覚悟せねばなりません。
ミルキーもシズカと手を組んでイタズラをされると流石の私も引っかかります。
混乱する私達を追撃するように女王は言います。
「ここから魔力の使用を許可する。そして魔女達が優勝出来ない場合、魔女達の全てはこの仮面王国を守る守護者として未来永劫働いてもらう」
「……なるほど、なるほど」
準々決勝からは魔法の使用許可が降りました。
どうせ使うなら正々堂々と使えという女王の話です。
これなら何の問題もありませんね。
明らかに女王は私達を敵視し、注目しています。
戦いたい――という感情さえ抱いているでしょう。
一安心する私はミルキーとシズカに言います。
「なので正々堂々と行きましょう」
そして、私の準々決勝が始まりました。
「えいえいえい、やーやーやー、とーとーとー、ちっちっちっ」
火炎、氷結、電撃、爆破系の美少女系無双コンボを叩き込みます。
美少女無双で相手を倒します。
VIP席にいる女王は仮面の奥の顔を見せぬまま立ち尽くしています。
そして、弟子であるシズカとの準決勝を迎えました。




