猫の仮面をした召使いが来ました。
私とシズカは仮面王国の商店街を歩きます。
すると、猫の仮面をした変な仮面の少女が歩いて来ます。
仮面からこぼれる赤いストレートの髪で、誰だかわかります。
「素顔でいてはダメですよミルキー」
「素顔じゃないわよ! 猫の仮面よ!」
「そっちの方が素顔よりいいですね」
「……そう? やっぱり私仮面を選ぶセンスあるよね……ってコラ!」
「と、ノリツッコミをしている変な魔法少女が私の召使いのミルキーですシズカ」
「どうも召使いのミルキーです。ってナルル!」
おどおどするシズカも自己紹介します。
「初めまして! わたしはシズカ。仮面の国のメイドです」
「やけに背が低いけど、アンタいくつ?」
「12です」
「……私の三つ下ね。けど、やけに胸がこんもりしてるけど、そこに猫でも入ってるの?」
ミルキーも気付いたようです。
メイド服に隠れてよくわかりませんが、このシズカが隠れ巨乳だという事を。
じれったいので正解を教えます。
「ミルキー、お手」
「にゃー」
「ほいさ」
『にゃー!』
と、私がミルキーの手をシズカの胸に押し付けた為に二人は驚いて叫びます。
シズカの隠れ巨乳を知ったミルキーは屈辱の表情を浮かべながらも握手をしました。
そんなこんなでシズカもミルキーに慣れました。
こういう時、ミルキーは人当たりがいいので楽ですね。
シズカは魔法の才能があるのでこれで魔法少女三人が揃いましたね。
後は妖怪などの魔力を使わない敵と戦う時に肉弾戦が出来るクンカがいるので心強いですね。
私一人だとこの二人を守りきるのは厳しい時が来るかもしれませんから。
そんなこんなで、私は二戦目、三戦目も勝ち上がります。
剣での戦いにも慣れました。
斬り合いの瞬間に魔力を込めるだけで結構相手を倒す事が出来ます。
ちょっとズルですが、魔力を使ってバレないようにするのもテクニックですから。
文句があるなら審判のイシコに言って下さい。
審判のイシコは石のように硬い意思で審判の職務を全うしてるので、不公平な事はしません。
でも結構ボーッとしてるのでズルをするチャンスはあります。
武道大会も後半戦。
残す所は準々決勝からの大一番になります。
私やミルキー、シズカの戦いを見て確実にこの仮面の国の住人は仮面の奥の素顔の感情を露わにするようになりました。
これには女王も精神的にダメージが行くでしょう。
自分で生み出した仮面の国が他国から来た人間に変えられてしまう。
そんな事は誰であっても許されるはずはなく、女王の仮面の奥の顔がどうなっているかとても楽しみです。
「さて……」
今日は武道大会の休暇日なので街の外れにある草原に来ています。
ピクニックだと言い、ミルキーにツナサンドとタマゴサンドを作らせたのですが、何故かその隣にはカンピョウサンドがあります。
「私の好きなツナとタマゴサンドにカンピョウの匂いが染み付いています……」
「カンピョウ最強なんだからいいじゃない。ねーシズカ」
「うん。それなりにカンピョウ美味しいよ? ミルキーが言うほど美味しくないけど、ナルルも食べたら?」
溜息をつきながら私はそのカンピョウ臭いツナサンドを食べ、ミルキーに怒られるシズカはホーキを抱え逃げます。そんなこんなでピクニックも終わり、今日の本題に入ります。
シズカの魔力の修行に付き合うのです。
この子の魔力量は普通ではないので、私が特訓しなくては魔力大覚醒が起こった場合この国は消し飛ぶでしょう。
それを自らの体験で知ってるミルキーも手伝ってくれます。
「では行きますよシズカ」
修行の開始としましょう。
景気づけにパチン! と指を鳴らします。何となく鳴らします。
さて、ミルキーに注意せねばなりませんね。
「ミルキー、鼻くそをほじったのをダンゴにして草むらに飛ばさないで下さい。モンスターが来ますよ」
「バレてた? って、鼻が痒いだけよ! アタシがそんな事するわけ……」
「わたしの方が飛ぶし」
シズカは鼻くそをほじりダンゴにして投げます。
怒るミルキーは対抗しました。
「アタシの方が飛ぶでしょ!」
「……はしたない」
私はそんな事はしません。
安心を。
そんな鼻くそ飛ばしをしてるからかどうか、タイラントゴブリンが現れました。
身体が大きく、棍棒を持って威嚇しています。
彼は肉食なので人間すら食らいます。
海のサメ、リクのタイゴブですね。
タイゴブって微妙な略なのでやめましょう。
ホーキで掃除をしてるフリをして逃げようとしてるシズカに言います。
「これはいい修行ですよシズカ。一人で戦ってみなさい。もしもの時は加勢しません」
『しないの!?』
「はい」
二人は驚いていますが、基本的に加勢するつもりはありません。
すでに魔力大覚醒が初まりつつあるので、一人で魔力を制御して戦ってくれないと困るのはシズカとこの仮面王国です。魔力大覚醒が始まってしまう時にある程度の魔力コントロールを覚えてないと、膨大な魔力に呑み込まれ死亡する事もあります。
ミルキーの魔力大覚醒の時は運が良かっただけです。
奇跡は何度も起こらないので、確実に皆が生き残る方法で魔力大覚醒を乗り切ります。
シズカは大事な仲間ですから。
「ほらほらシズカ。タイラントゴブリンが待ってますよ。デートの誘いには乗りましょう」
「いやいや! デートじゃないし!」
「なら誘いましょう。えい」
「えー! わたしのホーキがぁ!」
愛用のホーキを投げます。
シズカは追わざるを得ません。
ホーキが落ちたそこにノーラキャットがいました。
か弱いノーラキャットはタイラントゴブリンに連れ去られます。
「ミルキー、シズカに泣きまね演技をお願いします」
「……わかったわよ」
ミルキーは泣いています。
ホーキを抱えて戻って来るシズカは驚いています。
「さて、ノーラキャットの子供がタイラントゴブリンに攫われてしまいました。どうしますかシズカ?」
「助けに行くよ! だってミルキー猫好きだし!」
「よろしい。ではレッツらゴー」
「レッツゴー!」
……?
どうもこの子は自分のノリを通そうとしますね。
修正します。
「私の弟子ならレッツらゴーです。いいですね?」
「えー、レッツゴーでいいじゃん。面倒だし」
「面倒ではありません。ら、を付ける事で凄い頑張ってる感を出さずにいられるのです。疲れるので」
「いや、パワー必要でしょ! 疲れるのはしょうがないよ。だって生きてるんだから!」
「……確かに」
と、シズカに説得されてしまいました。
この弟子は侮れません。
「でもナルルの言う通りにするよ。わたし、バカ弟子がぁ! とか言われたくないから」
そんな事は言いません。
だって私、少女ですから。
そして私は言います。
「素晴らしいです。いーこいーこ」
「えへへ、くすぐったいよ」
そんなこんなで忘れられるミルキーは大げさに泣きます。
そして私達はシズカを先頭にタイラントゴブリンを追いかけます。
意気揚々とホーキを片手に歩くシズカの背後にいる私はふと言います。
「ミルキー、演技ヘタですね」
「しょうがないでしょ! こっちも必死よ!」
「テンションは低めでお願いします。バレてしまうので」
「うぅ……ナルルめ」
と、ミルキーは猫を攫われた事でテンションが低い設定を保ちます。
なのでミルキーの頭を撫でてあげました。
「いーこ、いーこ」




