妖怪の巣窟の魔の森に行きます。
キツネに似た妖怪・カマイタチは駐在所方向に向けて歩き出します。
「行きますよミルキー」
「えぇ、ナルル警部」
駐在所付近まで来た私達は周囲を見渡しました。
しかし、カマイタチの姿どころかここにいたはずのリカすら見かける事は無いです。
「どこですか? ……カマイタチはどこへ? 墓地の上の猫神の社にでも逃げたましたか? 奴がここを通ったかどうか片山駐在にでも聞いてみますか」
私達は駐在所の中に入りました。
「片山はいないのですか。またどっかで遊んでいますね……」
「あのクソ駐在本当に使えないわね!」
はぁ……と思い、イスに座ります。
背もたれに体重を預けつつ、机の上にあるせんべいの箱を開けて食べます。
「目当ての人物がいなくて困りますね。どこかで新しい事件でも起きているのですか……?」
ふと、地下の牢屋へ続くドアを見ました。
少しドアが開いており、風の力でギイィ……とドアが更に開きます。
「キャアア! やめてぇ……!」
『!?』
遠くから聞こえた少女の悲鳴に私達は驚きます。
そして、駐在所を出て外を見ました。
(……)
外の景色は相変わらず落ち着いていて、変わった様子はありません。
すると、また同じ悲鳴が遠くから聞こえました。
ゆっくりと私は背後を振り向きます。
「悲鳴の場所は地下の牢屋ですね。カマイタチめ」
「なら行くわよナルル警部」
「抜け駆けはいけません」
地下の牢屋へのドアをくぐり、地下への階段を降りました。
息を殺し、足音を立てぬよう素早く進んで行きます。
「……あれ? キツネが……」
妖怪カマイタチは石化してます。
どうやら石化能力のある妖怪にやられたのでしょう。
制裁ですかね?
ミルキーは石化したカマイタチに蹴りを入れます。
そして、その少女の悲鳴は断続的に続いています。
私は壁から顔半分を出し、通路を見ました。
(……一番奥の俺がこの前いた場所に片山がいますね。あの声の少女はリカ……?)
半信半疑ですが、深呼吸をしたと共に疾風が如く駆けました。
「動かないで下さい片山さん」
「!?」
シュタタ! と黒猫は私の足下をくぐって逃げ出し、片山と呼ばれた人物は振り返ります。
そして溜息をつき私は言います。
「片山さん……一体何をしているのです?」
そこには、半裸のリカがいました。
そして、全裸の片山が驚いた表情で私を見つめています。
肌の露出し、涙を流すリカを見たミルキーは怒りが増し、
「何をしていると聞いている!」
ガスッ! と片山に蹴りを入れてリカの前に立ちました。
ミルキーは制服のジャケットを脱ぎ言います。
「リカちゃん服を着て。もう安心だよ」
震えるリカは乱れた着衣を直し、散らかる衣服を着ました。
おかしいですね。
リカが妖怪ならこんな人間にやられるわけは無いです。
ミルキーはリカを助けています。
今は様子を伺いますか。
口元を抑える片山は呻き声を上げます。
「片山さん、まさかこんな事をしていたとはね」
「ち、違う! 俺は……俺は違うんだ!」
「どう違うのです? その姿で少女が裸ですよ? 言い逃れは出来ません。素直に白状しましょう」
「違うんだ……!」
震える片山はリカを見ます。
リカは冷たい視線を片山に送ります。
そしてミルキーは言います。
「片山、とりあえず貴様を逮捕するわ。わけは署にて……ってここが署だね。じゃ、逮捕」
腰から手錠を出したミルキーは片山に近寄ります。
口を開き、唖然とする片山はミルキーに体当たりをし逃走しました。
「ぐっ! 逃げてどうなるの片山! リカちゃんはここを動くかないで! いいね?」
うなづくリカを残し、ミルキーと私は片山を追います。
階段をかけ上がり、ドアを開けると片山は床に転がっていました。
そして私は手錠を片山にかけようと手を掴みます。
「俺はロリコンじゃない!……俺は子供なんかとヤリたくない……俺は、俺は……!」
独り言を言う片山は突如暴れだします。
ミルキーは言います。
「片山! お前の言い分は後で聞く! おとなしくしろっ!」
必死にミルキーは身体を押さえつけ、手錠をしました。
しかし、片山の暴走は止まりません。
「助さん! しっかりしなさい!」
片山を羽交い締めにしようと私も近づきますが――。
「ばっちぃです」
「オシッコ!? 片山! やめろっ!」
わめきながら片山は小便を私達に撒き散らし、駐在所から逃走します。
不意を突かれた私達は再度片山を追います。
全裸で走る片山は駐在所の裏を流れる川の上の小さな橋で止まりました。
「悪いのはこの村の妖怪だ! 駐在所の屋根の上で白骨化する田口巡査もこの村に殺されたんだ! この村を総括する意思にな!」
「片山! やめろ!」
小橋の欄干に乗った片山は下の川を見ました。
「あんたらもこの村に関わった以上、村の意思に巻き込まれる! あんたらが余計な事をしなければ俺は死なずにすんだんだ! ちきしょーーっ!」
叫び声を上げ、片山は川へ向かって落下しました。
ゴツリ! と川のほとりにある岩に頭を激突させ、川に流されて行きます。
「……」
「助さん! ボサッとしないで!」
「はい」
二人は流される片山の救出に向かいました。
でもミルキーが流されました。
やれやれ。
※
そして川の下流には片山の石化した死体がありました。
やはり片山を操っていたのはリカだったのです。
そして石化の力を持つのもこの少女でした。
リカがこの村の駐在を幻術で抱かれているフリをして操っていたのでしょう。
つまり、あの駐在は一人でイッてたようです。
幻術や妄想は怖いものですね。
下流から先に駐在所に戻り、その妖怪・リカを追い詰めた私は言います。
「この村では貴女と猫売りおじいさんが怪しいのは明白です。人間に化けた妖怪は何かが普通ではありません」
「よくわかったわね」
「少女ですから」
「答えになってないわよ」
そして改めて私は思いました。
「妖怪……ですか。だから寝ている時も私の魔力結界に反応しなかった。殺意さえあれば魔力が無くても反応はしたので、あれは警告だというのはすぐにわかりましたよ」
「察しがいいなら早々に立ち去るべきだったよ。もう遅いけどね」
やはり妖怪が暗躍してるようですね。
だからこの世界がプラネットスフィアから離れようとしてるのですね。
このリカの背後には大きな妖怪がいるようで面倒な事になりそうです。
日本ワールドには妖怪というものが多いみたいです。
不可思議な現象は妖怪の仕業のようですね。
魔法とは違った力を使うようです。
そしてリカは言います。
「妖気のカーテンは解除したげるわ。魔の森で殺してあげる」
砂かけ幼女を追って私は魔の森に向かいます。
ミルキーは後で来ると思うので先へ進みます。
確かに妖気のカーテンで覆っていたせいか、こんな場所は感知できませんでした。
さて、妖怪退治へレッツらゴー。