偽りサンセット
瞼を開いて目に映ったのは、この地の獄に大凡似つかわしい少女。
物語のように、そこにいたのは息を飲むほどの美しい少女であったーーとはいかず、髪の毛は不格好に伸び手入れも行き届いておらず、肌は土埃で煤けている。
とは言え、決して醜女という訳ではないのだろうが、いや、寧ろ住人のように飾り立てればそれなりの容姿になるようには見えたが。
しかし、とにかく、今目の前にいる少女はこの小屋のように薄汚れて見えた。
「名前は何て言うんですか?」
少女の言葉に返答を示さなかった為か、今度ははっきりと此方に言葉をぶつけてくる。
年の頃は十五、六だろうか。
疲れ果てた容姿は少女のそれではなかったが、まだ幼さの残る双眸からそう判断した。
「わからない。覚えていない」
「そう......此処では珍しくはないけれど。
暴れたり、慌てたりしないから覚えてるのかと思ってた。大抵此処に来る人は、最初の三日ぐらいで死んじゃうかーー」
「こうなっちまうんだよ」
少女の言葉を遮るように後ろから男の声がした。
年の頃は成人したばかりだろうか、自分とあまり変わらないように見えるその男はボロボロの上着を脱いで自らの欠損した左手を示して見せた。
「此処に連れてこられた日に見張りを殺して逃げだしてやろうと思ったらさ、奴ら犬をけしかけやがった。犬に噛まれた腕は腐ってきてね、切り落としたのさ」
不便そうに上着をもう一度羽織りながら、男は此方に嘲りのような笑みを向けた。
「此処で長生きできるのは力のない従順な女や老人、俺のように悪運が強い奴。あとは、お前のような臆病者さ」




