既視感スパイラル
「って話があったんだよ」
昼時で賑わう学食の隅。
いつものカレーではなく、ほうれん草のパスタを口へと運びながら目の前の友人に一段落話終える。
「いや、知ってるよ。一昨日は一緒にいたんだから。夢じゃねーぞ?」
尤もだ。
一緒にその場にいた人間にその時の出来事を話すなど馬鹿げている。
しかし、冗談のつもりはなく神妙な面持ちで話を続ける。
「そのあとが問題なんだよ。非常に問題」
「何が問題?」
口の中に広がる嫌いなほうれん草の味に顔をしかめる。
わざわざ嫌いな物を食べたくなるような、そんな気分だった。
「店出て解散した後さ。帰ろうとして駅行ったんだよ」
「ふむ」
長政は呑気に食後の珈琲など飲んでいる。
こいつには話すべきではないのかと思い始めるが、長政以外に話す人間もいない。
かと言って黙っていられるほど意志は強くない。
「財布なくってさ」
「は?だからそれは知ってるって」
真面目な顔で冗談を繰り返したのだと思われたのか、或いは本気でおかしくなったと思われたのか、長政が顔をしかめる。
「いや、だから、カフェじゃなくて、居酒屋。絵里があのまま持って帰っちまってたんだよ」
「あー、そりゃ問題だな。で?」
「電話したら駅まで来てくれたよ」
「絵里さんが?」
「絵里さんが」




