晴天ストローム
「え?」
綾子が問うが早いか、寝ているように見える長政に目の前の手羽先の骨をぶつけると、すっとんきょうな声をあげる。
「ぬあっ!きったね!お前、投げるのならなんか他にあるでしょーよ」
「な?」
脂がべったりとついた鳥の骨を顔にぶつけられ目を開けた長政は、頬を手拭いで擦りながら恨めしそうに此方を見る。
仕返しとばかりに投げ返してきた手拭いを受け止めようと手を伸ばすも、視界がぼやけて結局は顔に受ける嵌めになる。
「なにするんですかー、長政さんー。お前の顔を拭いた手拭いなんて綾子の靴の裏より汚いって絶対」
「秀悟さん、酷いです!」
汚物を扱うように手拭いを指先でつまみ、鼻を塞ぎながらひらひらと揺らす。
そして、心底嫌そうに舌を出して顔をしかめて見せると、珍しく綾子が強い口調で批難してきた。
育ちの良さそうなお嬢様に有りがちな正義感だろうか。
長政と共に驚きながら、視線は綾子に集中する。
すると、綾子は一瞬恥ずかしそうにはにかんだ後、茶目っ気たっぷりに付け加えた。
「私の靴は、そんなに汚くないですよ?」
その瞬間、自分の脳裏の嫌な予感の正体を理解した。
まさに、青天の霹靂だった。




