偽りサンセット
小汚ない一つの小屋の中で数十人の住人が、テーブルなどはない剥き出しの木の床の上で貧しい食事をしている。
そう人数が多い訳ではないのですぐに正確な人数などわかるものだが、到底数える気にはならなかった。
自分と同じ絶望の数を数えたところでなんの意味があるというのか。
食指が進むような内容の食事ではないが、常に満たされない身にはそれすら有難い。
固く干からびかけたパンと冷えた味の薄いスープを腹に納めると、特に決められている訳ではないが毎日過ごしている自分の寝床である部屋の隅へと移動する。
こんな地の獄でもある種のコミュニティが形成されており、自分以外の者達は楽しそうに談笑を始めている。
そこに加わりたいという気持ちがない訳ではないが、そこに加わってしまえば此処の住人になったことを認めるようで居心地が悪かった。
何故自分は此処にいるのか。
此処は一体どういう場所なのか。
自分は以前何をしていたのか。
此処に来るまでの記憶はなく、この問いに答えてくれる者はいない。
正確に言うと誰かに問うたこともないのだが。
頼りない壁に背を預け、目の前の景色から逃れるように瞼を伏せ、記憶が始まってから幾度となく繰り返してきた自問自答をしていると、やがて初めての変化が起こる。
「いつも一人でいるんだね?」
同じ部屋の中だと言うのに遠くに感じていた人の声とは別に、近くに声を感じ目を開ける。
それは自分に掛けられていた問いだと気付いた。




