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蛆の王  作者: 多田野 盆蔵
救いの声と救われない声
19/22

晴天ストローム



結論から言うと結局、自身の独力では席に戻ることは出来なかった。

自分より幾分も華奢な相手の肩に掴まり、ふらふらと席へと戻る。


「よ、ご両人!お熱いねぇ」


綾子に頼りながら身を投げ出すようにして椅子に座ると、それを見た絵里が面白そうに口笛を鳴らした。


「うるせぇな。煽り方が古いんだよ。同じ姉妹だってのに偉い違いだよな」


先程までのように悪態が返ってくるのだとばかり思っていた。

普段から口が良いとは決して言えないが、女性には比較的控え目に接してきたつもりではあった。

ただ、酒の力と絵里の性格から気遣いが失われていたのだろう。


「そうだね。秀悟クンの言う通り」


絵里は笑っていたが、今日のこれまでの絵里の笑みではなかった。

自嘲気味で、何処か寂しそうな笑み。


「そろそろ、私帰るよ。綾子、秀悟クンをよろしく。いや、逆かな?」


「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!」


矢継ぎ早に言いたいことだけ残していくと、絵里は帰っていった。


向かいには、酔い潰れて壁を枕に眠る長政アホ

自分の隣の綾子は、困った様子で此方に視線を向けていた。


「ん、綾子ちゃんも帰りなさいな。俺はアホ叩き起こして帰りますので」


「えっと、秀悟さんも大丈夫じゃないのに、置いて帰れないですよ」


「大丈夫、それ、もう起きてる」



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