晴天ストローム
認めざるを得ない。
夏の暑い中を駆け抜けて、汗をかき、渇ききった喉には、ビールは美味すぎると。
渇きを潤す為に猛烈な勢いで一杯目のビールを空にすると、すぐに二杯目のビールを頼んだ。
「帰りたがってたわりにはノリノリで飲んでるじゃないの」
「だってビール美味いんだもん、仕方ねぇだろ」
魂を麦酒に明け渡してしまった。
その為か最早開き直った口調で絵里に答える。
すると、相手の口から意外な言葉が出てきた。
「貴方って、変に可愛いよね。煙草吸ってる時もそうだし」
激しくむせてしまった。
それを見て長政が以下略。
言った本人も笑っている。
お日様も笑っているのだろうか。
ふと、隣を見ると何故か綾子は不機嫌そうな顔をしていたのが気になった。
「変なこと言うからむせちまったじゃねぇか馬鹿!」
「やっぱり可愛いよ、そーゆーとこ。秀悟クンって童貞でしょ?」
「そうなんですか?」
「まっさかよー、なぁ、秀悟?」
気付いた時にはトイレにいた。
あまり描写するべきではないが、喉がいがいがするとだけ言っておこう。
常に感じていた嫌な予感が的中した訳だが、嫌な気分は一つもなかった。
それもそうだろう、景色がふわふわとしている。
世界はなんて幸せなんだろう!
酩酊状態特有の多幸感に酔いしれながらトイレを出る。
すると、心配そうな表情の綾子が水の入ったコップを手に待っていた。
「秀悟さん、大丈夫ですか?」
「ん、さんきゅー。へいき」
素直に気遣いが嬉しかった。
コップを受け取り水を飲み干すと、空になったコップを綾子に返す。
そこで力尽きたように、その場に座り込んだ。
「あー、もう。ちょっと待ってて下さいね。コップ、置いて来ます」
そう告げて綾子は戻って行った。
力なく座り込んだまま、壁に頬を預ける。
ひんやりとして気持ち良かった。
暫くして戻ってきた綾子に肩を揺らされて目を覚ます。
どうやら一瞬寝てしまっていたようだ。
「大丈夫ですか?立てますか?」
「だいじょうぶです。たてます」
頼りのない笑みを浮かべて親指を立てる。
床に手をつき力を込めて立ち上がるが、足元はおぼつかずにふらついた。




