第十一話
タコがいない。神秘なる海で、タコのもう一匹が目を覚ました。果たして、もう一匹の蛸は何処へ消えたのか。タコはキョロキョロと辺りを見回した。八本足で捉えた獲物を一緒に食べる相手がいないのだ。タコはキョロキョロと辺りを見回す。あぁ、そうだ。確かあの蛸は昨日「変なメイドやら執事に捕まった」と涙ながら話していたではないか。蛸が涙を流すかどうかなんて知らないが。フヨフヨ、とタコは海中を漂いながら探した。八本足が海中に揺れる。獲物が下に沢山いた。しかし、相手がいなくては、どうもタコが獲物を取る気分にもならなかった。ついでに、二人分もあった獲物を一人で食べたお陰で腹が膨れていたのだ。
猫がどうとかで上手い事逃げだせたのだ、と蛸が得意気に語っていたのを思い出した。タコは暇に任せて、自分達に名前を付けてみようかと思った。そうだな、とタコは思い出した。確か、蛸が自分の事を「タコ」と言う名前で呼ばれた事を思い出したのだ。蛸に人語が分かるかどうかなんて、分からない。ただ、タコはその「タコ」と呼ばれた名前を手掛かりに暇に任せて考えた。
「田子」と「多胡」でいいや、もう。とタコは投げやりにそう出した。しかし、タコのあるか無いかも分からない脳で弾き出したものを応える相手は誰もいない。タコは奇妙な体験をしたのだと言う相手を思い出した。タコは「お前は気が狂っているのではないか」と思った。人間が行う生活が田子にとってどれだけ重要なのか。田子はふよふよと海中を漂った。同時に、気の向くままに海中の波を打つ事にも費やした。
稚拙ながら投稿させて頂きました。な、何も読んでほしいとかじゃないんだからね…///!