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こんなのありか?? 転生者全員私、乙女協定でクズ男を断罪します!

掲載日:2026/09/10

「アリサ・イーダンナ! ボクはキミと婚約破棄をする!」


 舞踏会のお披露目会、まあよくあるイベントで婚約者のコモノ・ウラギール侯爵に私は婚約破棄を言い渡された。


 やった、思ったとおりになった!


 変な話だけど、私はこの世界が恋愛小説の中だと知っている。いわゆる転生者と言われるやつね。

 思えばこの変な小説世界に転生後、コイツに嫌われるために私はいらない苦労をしたっけ。

 花嫁修行はミス、料理は黒焦げの消し炭、ダンスでは転倒、いいとこまるでなし。


 こんな私を嫁にしたら間違いなく苦労するわよ。だからアンタは原作通りに、あの悪役令嬢のサリアと一緒になりなさいな。

 私はあの内面までもイケメンのゴルド・メンタリティ公爵様と一緒になるから。


 サリア・ヨコヤーリ。原作小説で婚約破棄の後、私の代わりにコモノ侯爵と一緒になる悪役令嬢、ピンク髪でコミカライズされてたけど、ピンク髪=頭の軽い悪役令嬢を地で行ったような外見。見た目からして性格悪そうね。

 ほら見るからにあの興味なさそうな……え?


 冷たく私を見下ろす彼女、さあ、言いなさいよ。そうすれば私は晴れて自由の身なのよ。


「少し……考えさせてください」


 え? アンタもっと短絡的だったでしょ。嬉しいですわーって腰をくねくねしてたのをコミカライズで見た覚えあるわよ。

 でも、結果はもっと違った。


「お断りしますわ、貴方はワタシには勿体無いお方、もっと相応しい方がいるでしょう。ワタシ、自分の領地の経営だけで手一杯ですので……ご機嫌よう」


 えーえーえー!? どうなってるの?? あの悪役令嬢のサリアが内政立て直しだって? 原作では内政ほっぽらかしでコモノと一緒に落ちぶれて辺境追放になったのに。


 そしてさらにおかしいのはアリアお母様。

 原作ではお父様を見捨ててコモノに骨抜きにされていたので私を目の敵にしてこの婚約破棄でサリアと年甲斐もなく張り合う醜い女の争いを見せたのに、今はお父様にべったりで新婚夫婦のように手を繋いでいる。


 どうもコレが演技でないみたいで、お父様はお母様がコモノと一緒にいることすら気づかないはずの原作と違い、お父様から離れるどころか他の女が近寄ってこないように睨みをきかせている。

 娘の私に対する態度は原作のように辛辣なはずなのに、なんだか違和感を感じるくらい。どこか不気味だわ……。


 確か、母も原作ではコモノに惹かれ、私の父である夫を捨てるはず。

 ところが母は彼を見てもまるで他人のふり。むしろ、もう一人のイケメン公爵を申し訳なさそうに乙女のような目で追いかけているけど、年を考えなさいよ、年を。


「あなた、どこかでお会いしました?」


 という顔。


 おかしい。何かがおかしい。



 婚約破棄自体は成立。しかし悪役令嬢のサリア・ヨコヤーリは領地にこもって何かやっている。

 まるでコモノに構おうとしないどころか、会うこと自体完全シャットアウトみたい。


 そしてお母様はお母様で何かお父様に料理を作ってるけど、アレってどう見ても日本の食事よね、お母様もひょっとしたら転生者なのかしら。

 となると、ヨコヤーリ嬢も転生者の可能性がある。


 そう考えないと、この原作無視の流れを三人で作っている説明がつかない。


 でも原作とは全然違う。

 私は原作のクズ男、コモノと婚約破棄したことでようやく本命のゴルド公爵に正式にアプローチすることができる。


 ゴルド公爵とコモノ侯爵、比べるのが失礼なレベルの月とスッポン、いや、フルーツパーラーの高級プレミアムレアチーズケーキと10円から値上がりしたうまー棒、いや、食べられるだけうまー棒に失礼か。


 あーこんなこと考えてたらスナック菓子のぽてるこ食べたくなってきた。あのサクサクのジャガイモ、仕方ない、ジャガイモならあるはずだから揚げて作ってもらおう。


 ——と思ったら、台所にお母様? 普通はシェフに任せるわよね。

 で、何を作ってるのかと思ったら、ジャガイモを細く切って油で……って、アレどう見てもフライドポテトよね。

 本来この世界にある技術じゃないわよ。やはり、お母様も日本人の転生者で間違いないわ。


 あーこの匂い、ついフラフラと引き寄せられるー。


「アリサ、なんですか、はしたない」

「あ、お、お母様。申し訳ありません。ついつい、いい匂いに釣られて、それ……少しくれませんか?」

「ダメッ」


 あ、そういえば原作でお母様は私に辛くあたってくるんだったっけ、匂いにつられたとはいえ、原作のことすっかり忘れてた。


「コレはあの人のものなの。欲しかったら自分で作って食べなさい、材料ならそこにあるから」

「あの人って?」

「決まってるじゃないの、お父様よ。コレディーノダ様よ」


 おかしい、やはりおかしい。原作だと骨抜きにされたお母様が入れ込むのは私の婚約者のはずのコモノ侯爵で、お父様はないがしろにされていたはずなのに。


 なのに、彼女は私のお父様、つまり夫のコレディーノダを大事にしている。原作ならウラギールに夢中になるはずなのに、そんな素振りが全く見えない。


「お父様ほどいい旦那様はいません」


 と言っている。まあ、私がお母様に転生してたら絶対に逃したくない有料物件だけどね、妻に優しい、娘にも優しい、見た目そこそこ、地位もある。

 どう考えても前世でこれクラスの男は婚活パーティーでもお目にかかれない。


 でもお母様が私に優しいとは見えない。

 そういえばお母様、昔私のレアチーズケーキ横取りしたことあったわね。原作のイビリってこういうことだったのかしら。それにしては随分としょぼいイビリだったかと。

 原作ではもっと辛辣だったのに……。


 そしてサリア・ヨコヤーリも、コモノ侯爵に興味がないみたいね。


「ワタシは領地の道路整備と農業改革のほうが忙しいので」


 原作の悪役令嬢とはまるで別人。

 まるで前世の私を見ているかのような働きっぷりだ。でも嫌な顔をしている感じがまるでない。

 そう、やりたい仕事、生き甲斐を見つけた表情というべきか。

 仕事に生きる喜びを見つけたなら、あんなコモノ侯爵に構っている時間が無駄だというのは元転生者同士だとしたら共感するところだ。


もし私が同じ立場だったらやってみたいプロジェクトリーダーみたいなものだし、手柄を上司のババアに横取りされるわけでもないんだから、そんな生き方もできたら楽しそうだと思う。



 とりあえずわかったこと、それは……お母様も悪役令嬢のはずのヨコヤーリ嬢も日本人の転生者だということ。

 そうでないと説明のつかないことが多すぎる。


 お母様は料理のレパートリーがやたらに凝っているもののシェフに作らせるのも自分で作るのもこの世界の標準をオーバーしているレシピの数々。

 私が材料費無尽蔵で、毎日休日だったら作りたかったネットの料理を網羅していると言っても間違いない。


 悪役令嬢のヨコヤーリ嬢は、私が前世で頓挫したり横取りされたようなプロジェクトを豊富で潤沢な資金と人員で完全再現。

 まさかこの異世界でシーズンごとに使い分ける大型のレジャー施設を作るとはとても思わなかった。


 そして、気になった私が二人を呼んだお茶会、下手に誰かに内容を聞かれても困るので、三人だけで部屋で行うことになった。

 お母様とヨコヤーリ嬢が部屋に入る。


「よく来てくださいました、実はお話ししたいことが……」

「コモノ侯爵との縁談でしたらお断りいたしますわ」

「いえ、そうじゃないんです。実は確かめたいことがありまして……」

「アリサ、それはわたしにも関係あるのですか?」

「はい、お母様にも関係あるのです……」


 三人とも互いを観察する。

 そして気まずい空気、お茶が苦く感じる。

 ここでシェフがフルーツのレアチーズケーキを三つ持ってきてくれた。


 すると、二人の表情が少しやわらいだような気がする。

 やはり女子力、女子力は全てに勝る。


 レアチーズケーキが嫌いな女子なんていません。


「……もしかして、あなたも?」

「何がです?」

「まあ、何かしら?」


 何について聞こうとしているのか、探りを入れながらのぎこちない会話。

 しかし直接「転生者ですか?」とは聞かない。

 まだ疑っている。三人だけで話す機会を作る。


 ここで私が原作について確認。


「お母様、ウラギール様のこと、好きじゃないんですか?」


 お母様がきょとんとした顔をした。


「好きになる理由がないでしょう?」

「原作では大好きになるはずです」


 この言葉を聞いたヨコヤーリ嬢のカップが止まった。


「原作?」


 ここで一瞬空気が止まる。


「……その言葉、聞き覚えがあります」


 そう、ここで三人とも転生者ではないかという疑念が生まれる。

 そこで直接的な質問ではなく、私は前世の生活習慣を探る質問をすることにした。


「好きな食べ物は?」

「ハッシュドビーフ」

「レアチーズケーキ」


 私を含め、三人とも固まる。


「駅前でよく行っていた店は?」

「モックバーガー」

「てりやきバーガーが主食だった」


 さらに、私が質問する


「嫌いだった人は?」


 二人とも、


「「前の会社のお局様」」


と答える。


 部下の手柄を横取りし、上司には猫撫で声。

 完全一致。


 まさか、まさかまさか、そんなことが!?



 三人で前世の記憶をさらに照合。

 仕事、通勤、休日の過ごし方、好きな漫画、給料日前の節約生活。


 どんどん一致する。

 そして最後の質問。


 私が聞く。


「……転生する前の名前は?」


 三人が顔を見合わせる。


「せーの!」


「「「紺野亜里香(こんのありか)!」」」


 沈黙。


「……え?」

「……え?」

「……え?」


 そして三人同時に、


「「「こんなのありか!?」」」



 私たちは三人で大爆笑。


「じゃあワタシ、前世では普通の会社員だったの?」

「そうよ。私も。って、あなた私なんだから会社名くらい覚えてるでしょ。転生して良い暮らししている間に忘れたの?」

「わたくしもです。でも会社名は忘れてしまいましたわ。その程度の会社ですし」


 しかも三人とも、別々の世界に転生したはずなのに、なぜか同じ世界に集合している。


 結論。


 神様の転生処理が雑。

 ただし深掘りしない。


「たぶん間違えたんでしょう、仕事テンパる時は処理ミス発生して仕事重複するし」

「雑ね」

「雑ですわね」


 で終わる。

 そして私たち三人は原作について語り合う。


「でも、あの原作……酷すぎない?」

「私、何も悪いことしていませんよ?」

「私なんて娘ですよ?」


 三人とも原作にドン引き。でもコミカライズまでされてるから人気はあったんだろう。

 さらに、女性に対するこの全員不幸にしようという曇らせですらないバッドエンド。


「作者、何があったの?」


 と同情する。

 しかし次の瞬間、


「だからってウラギールを許していい理由にはならないわよね」


 この意見には三人一致。


 三人の紺野亜里香を舐めないで。

 せっかく転生したんだから三人とも別の立ち位置からあのクズ男をギャフンと言わせてやる。

 お母様の私も悪役令嬢の私もこの大逆襲にノリノリだった。さすがは私。


 それぞれがそれぞれの立場からあのコモノ侯爵を追い詰めることになった。

 お母様の私は社交界から。

 悪役令嬢の私は経済的圧力で。

 そして……娘の私は原作で無力化されていた噛ませ犬になっていたゴルド公爵様に協力を依頼、彼は原作の噛ませ犬が嘘のように実力を発揮してくれた。


 多分、あの原作ではゴルド公爵が有能すぎるから濡れ衣で辺境に追放したのだろう。だが、最終的に戻ってきた彼は国全土を巻き込んだ戦乱の末にコモノとヨコヤーリの二人を追放、国は焦土となり誰も勝利者のいない結末だった。


 そう、原作者……話をまとめることができなかったからバッドエンドで全員死なせれば、結末を考えなくて済むって考えだったんだろう……。

 そんなくだらない理由で全員を戦争に巻き込むなっての!


 その前に不幸のてんこ盛りはノシをつけてコモノ侯爵と手下のサンシータ男爵に押し付けてあげますわよ。

 覚悟しなさい、令和のアラサーOL舐めるんじゃないわよ、三人分の私たちの力、しっかり見せつけてあげるから!



 自分同士三人で女子会。

 もう隠す必要もないので、シェフに大量のポテトを揚げてもらい、フライドチキンとピザも用意、異世界? 関係ない、どうせ知ってるのは私たちだけだ。


「やっぱり塩味よね」

「チーズ味も捨てがたい」

「コンソメがあれば完璧なのに」


 私同士の会話なので食べ物の趣向は全く同じ。


「キムチとかチリ・サルサ味欲しいよね」

「「わかるー」」


 ここから一気にコメディ。原作のドロドロどこいった? 原作はレディコミっぽいスマホ漫画になってたのでコミック担当が女性だったのか、それとも原作自体女性だったのか、まあ気にしたら負けな気がする。


 それはそうと、三人とも同じ前世、つまり私と言う名の紺野亜里香なので、趣味も好みも似ている。育ちは関係ないってことね。


 そこでみんなでゴルド・メンタリティ公爵の話になる。

 この名前が出た途端私たちの表情がだらしない笑顔になった、とても他人に見せられる光景ではない。


「そういえばゴルド様って素敵よね」

「分かる」

「私も好き」


 三人沈黙。まあ当然の結果である。


「……全員同じ人間だから、そりゃ好みも同じか」


 ここでお母様の私が、


「でも私はお父様を愛していますから、ゴルド様に手を出すわけにはいきません」


 まあ、不倫という名のロマンスに手を出すほど私は愚かではなということね。


「じゃあどうするの?」

「推します」


 アイドルを愛でるが如き尾推し活開始。

 それを聞いた悪役令嬢の私も展開に納得したのか、レアチーズケーキを一気食い。


 そこで私たち三人は、


 乙女協定


を結ぶ。


その1 相手を陥れない

その2 嘘をつかない

その3 ゴルド本人の意思を尊重する

その4 抜け駆けしない

その5 ただし自分の魅力を出すことには手加減しない。


その6 頭部に手を出したら負け、顔は女の命です。どこかのロボアニメ規定ではありません。


つまり、

「相手を傷つけない。ただし、絶対に手加減もしない」

という非常に健全な恋愛協定。


 これにお母様の私、悪役令嬢の私、そして私がそれぞれサイン。

 紙を三枚用意するのが面倒だった、コピーがあればサインだけで済んだのに。



 ここからの展開は早かった。さすが私。

 見た目だけならバリキャリと見られていたみたいで、じゃあなんでモテなかったのかが自分七不思議の一つだ。


 三人が協力してコモノ・ウラギール侯爵を潰す。乙女協定の開始よ。

 ここは同じ人物だからこその連携プレーを見せる。意思疎通ができない? 自分相手ならまずその心配はないわね。


 お母様の私、アリアは社交界で噂を広げ、貴族の男性たちにコモノが人妻マニアで他人の妻を横取りするのを趣味にしているクズだと拡散。

 少し尾ヒレは付いているけど、実際原作でやっていたことなので事実だ。


 悪役令嬢の私、サリアは領地経営からの兵糧攻め。

 つまり……税収が高く、住民の住みづらい隣のウラギール公爵領からヨコヤーリ領に住民の移住を推進、 インフラを整えて移住助成金も設定、さすがは現代人の私。

 ピンク髪のアホ令嬢のはずなのに、中身が前世の私だから仕事が早い。


 早速文句を言ってきたコモノに対し、悪役令嬢の私が言ったのが……。


「どうせいずれ一緒になるのですから、仕事が少ないほうがアンタも楽でしょ」


 こんな見せかけの言葉に簡単に騙されていた。どれだけ仕事したくないんだコイツは。


 そして私、伯爵令嬢のアリサは原作で噛ませ犬にされたゴルド・メンタリティ公爵にアプローチ、これは乙女協定の内側なのであくまでも一線は超えず女子力で勝負。


 しかしゴルド様、優秀すぎるイケメンなので何をやらせても成功する。

 こりゃ確かに原作者、殺す根拠も作れないから無実の罪で追放の退場にするしか処理できないわ。

 でも結局話が畳めないから、連れ帰ってきて全滅エンドで終わらせた。


 さらに三人とも原作の展開を知っている。


 ウラギールが、


「僕の魅力に女は逆らえない!」


 と言う。

 私たち三人、展開を妨害せずに自身の身だけは魅了無効化のアクセサリー各種で防御。


「でしょうね」


 なぜなら秘密を知っているから。


 ウラギールの魅了能力は悪魔との契約によるもの。

 それもかなりの上級悪魔、だから近寄らないだけでなく魅了無効のアクセサリーで全員防御。


 でも流石に人が多く集まるパーティーではそうもいかない。

 こんな時に王妃様の誕生パーティーの誘いが来てしまった。



 王妃様のパーティーは厳かに行われた。

 王様も出席するはずだったが、どうも体調不良で後で遅れてやってくるという話だ。


 そして、コモノ侯爵は、女性に手当たり次第に声をかけようとするも、その前に立ち塞がる衛兵や貴族本人に追い払われて誰にも相手をされていない。


 また、お母様の私が社交会で会ったご婦人方に流行りのものだと言って魅了無効のアクセサリーを流行らせたのだから、下準備もバッチリだ。さすがは私、マーケティングにも才能を発揮しているとは。


 おかげで貴族令嬢、ご婦人がたは誰もコモノの毒牙にかかっていない。

 原作だとこの場所でコモノが悪役令嬢のサリアをないがしろにし、他の令嬢に辛辣に虐めさせて悦に入っているはずのシーンだ。


 その頃には伯爵令嬢のはずの私は無実の罪で幽閉されていることになっていた。

 理不尽にも程があるでしょ、どれだけ作者は女性に恨みを抱いていたんだ?


 まあ、今回のことで魅了の……しまった! 王妃様には謁見の機会がなかったので魅了無効のアクセサリーが無い。このまま一人でも魅了されてしまうとせっかくの今までの努力がオセロのように全部ひっくり返されてしまう!


 私は王妃様に近寄ろうとするコモノの近くでわざとドレスの裾を踏んでしまったようによろけて彼の体を押した。

 すると、バランスを崩したコモノは高く積まれていたシャンパングラスタワーに突っ込み、シャンパンタワーが音を立てて大崩壊、パーティーは騒然となった。


 コモノと部下のサンシータ男爵は衛兵に囲まれ、身動きも取れない。

 また、彼が持っている指輪が魅了の魔力を持ったものだと判明。


 これで王妃様を誘惑しようとしていた証拠だとして指輪を奪われそうになったコモノが指輪を高く掲げると、その場の時間が止まった。


 悪魔……そう、コモノは契約の悪魔を呼び出したのだ。


「あーあ、やってもうたなー」


 だが、その姿を見た私は唖然とした。

 メガネ、オールバック、スーツ。完全に怖い大阪の金融屋。

 そして、想像通りの関西弁が飛び出した。


「あ、あなたは一体?」

「ワイか、ワイはダーサン・アカンデっちゅー悪魔や。よろしゅーな」


 私たちににこやかに笑顔を見せた悪魔が、鬼の形相でコモノを睨みつける。


「兄ちゃん、契約書ちゃんと読んだ?」


 コモノが悪魔に力を借りようとする。


「ボクはもっと力を!」


 だが悪魔は手のひらを立てて拒絶を示した。

 そして懐から何かの紙を取り出す。


「いや、ちょっと待ち」


 契約内容を確認。って、その紙契約書だったのか、ファンタジーどこ行った?

 そしてトンデモない言葉が悪魔の口から飛び出した。


「女を不幸にした場合、その不幸に応じて力を得る」


 ところが現在、の私たち


 私ことアリサ → 婚約破棄成功

 お母様の私ことアリア → 夫婦円満万年新婚生活

 悪役令嬢の私ことサリア → 破滅回避


 敵対するはずの三人 → むしろ仲良し


 一件も不幸になっていない。


 というより、原作でコモノが女を不幸にしていた理由がこれだったのか! 何その不幸の自転車操業。いわば、不幸ローン・リボ払いってとこか。


 ダーサン、下から見上げるように歯を食いしばった形相でコモノを睨む。


「……兄ちゃん、何一つ成果出してへんやん。ワイかて慈善事業ちゃうねんで、不幸きちんと耳揃えて返してもらわんと、それで追加融資ゆうたかて、不良債権持ちでそれはあかんで」

「そんな馬鹿な!」


 ダーサン、いきなり笑顔になって契約書をペラペラと仰ぐ。


「契約不履行や。力、引き上げるで」

「待ってくれ!」

「知らんがな。契約書にそう書いてある」


 そして、最後に何か黒いモヤをコモノとサンシータから抜き取ると、なんだか不味いものを食べたような表情を見せた。


「そこのあんさんは利子や、これで一応貸してた分は返してもろたで」


 コモノがその場にへたりこむ。どうやら悪魔の力を全て抜き取られたようだ。


「まあ、あんじょう気張りやー」


 そう言ってアカンデと名乗った悪魔はこの場を去った。悪魔、最後まで他人事。



 悪魔に能力を引き上げられ、魅了能力を失ったウラギール。

 私たち三人が原作の証拠・行動・契約内容を突きつける。

 しかしあくまでも未遂、誰も不幸にならずに阻止できた。


 そして王妃様を魅了しようとしたことは国王様の耳に届き、国王様大激怒。

 もうこの後は予測可能回避不可能。


 しかしここで原作ほどの極悪人にはなっていないことも明確にする。

 だから温情をあげよう、ああ私って何って素晴らしいのかしら。

 お母様の私、アリアが問い詰める。


「あなたがしようとしたことは許せません」


伯爵令嬢の私アリサがフォローする。


 「でも、原作ほどの被害は出ていません」


 あ、原作って言っちゃった、まあ誰も気がついていないから結果オーライ。


悪役令嬢の私、サリアが嘆願する。


「だから極刑までは必要ないでしょう」


そして三人で王様に提案する。


「「「国外追放で十分です」」」


 この温度感が大事。

 原作では悲劇になるはずだったものが、今回は未遂で全部止まった。


 ウラギールは国外追放。

 ゴルド様は私たち三人を評価する。

 お父様ことコレディーノダ伯爵はお母様の私、つまり妻との家庭を守れた。


 そして私たち三人の私は仲良くなった。

 言葉で書くと意味不明だが、そうとしかいえないのだから仕方ない。

 そして月一の女子会が定番になった。


 大団円。


 ……と思わせてまだ終了ではない。



 今日は月一の女子会、三人とも私だから何が食べたいかがよくわかっている。

 当然のようにハッシュドビーフから始まり、フライドチキンにフライドポテト、それにピザ。忘れちゃいけないレアチーズケーキにカクテルとワイン、ああこれぞ幸せ。


「じゃーん、実はワタシ、ご報告したいことがありまーす」

「えー、なになに? いい話?」

「はい、実はワタシ、婚約しちゃいましたー。それも、年下なんですー」


 どうやら話を聞くと、悪役令嬢の私ことサリアは、年下のイケメン、シルバリオ・クレバー子爵に猛烈なアプローチで告白され、最終的に根負けして折れてしまったらしい。

 年下は許容範囲外だったのだが、いざ話を聞いてみるとこれがゴルド様とは別の素晴らしい男性、これならサリアが気にいるのも納得だわ。


「おめでとー、今日はパーティーだね」

「ありがとうアリサ、っていうかワタシ」

「そういうこと言うと混乱するわよ」


 でもこれで乙女協定が終わりってわけじゃ無い。

 私とゴルド様ももう公然で婚約発表を待つ状態。

 お母様の私、アリアも、お父様のコレディーノダ伯爵の家にゴルド様が来て挨拶した時に変なアプローチは無しできちんと母親として対応してくれた。

 でもその変な名前入りの扇両手持ちはヤメてほしい。推し活の定番アイテムってのはわかるけどさ。


 で、話の中で出てきたのが、あのコモノ・ウラギールの末路。

 廃嫡されるでもなく、平民になるでもなく、鉱山送りでも無い。まあ未遂で被害者がいなかったから追放だけで済んだからね。


 で、どうやら悪役令嬢の私、サリアが言うに、コモノは追放先の辺境ですごいことになってるらしい。

 フライドチキンをかじりながらサリアが言った。


「あ、そうそう。あのコモノだけどさ、魅了の呪いが自分に跳ね返ってきて、今ゴリラに追いかけられてるんだってさ」

「ゴリラ??」

「ゴリラ??」

「そう、ゴリラ」


 ……ゴリラか、転生者だからわかるこの言葉。まあアイツにはちょうどいいオシオキかな。



 国外追放されたウラギール。


 文明と無縁の辺境。

「ボクは……こんなところで終わる男じゃない!」


 そこへ、巨大なメスゴリラ。


 ウラギールを見る。

「ウホッ」


 さらに後ろから何頭も現れる。


「ウホッウホッ」

「ゴホッ、ウガッ♡」


 服装がボロボロのコモノ・ウラギールが叫ぶ


「なんでだあああああ!」


 その後、ウラギールは辺境のメスゴリラたちに大変モテモテになったという。


 そして――



 完。


面白かった! と思っていただけた方は、ブックマークや、↓の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎評価等、応援よろしくお願いいたします。


ブクマ、評価してくださった方、ありがとうございます。


こんな新作も作ってみました

https://ncode.syosetu.com/n9289ms/


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― 新着の感想 ―
全員揃って中の人が同一人物……以心伝心無敵のトリオですね! 現代飯もいいけど運動しっかりな!!
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