第3話 真実
新しい家についたばかり、荷物もまだ解いていない状態で俺達は椅子に座っていた
もったいぶらせていたことがついにわかるのだ
「・・・俺が何でここに呼ばれたのか、教えてくれ」
俺がそういうとクーヘンは俺のほうを見つめとんでもないことを口にした
「ゼロン、キミはこあの村の人間ではない・・・そしてこちらのお母様も君の本当の母ではない」
訳が分からない、いきなり何を言って・・・俺はあの村の人間じゃない?
急にそんなことを言われて理解しろというほうが無理だ
子供のころからあの村で過ごし、物心をつく頃にはあそこにいた
18年間俺はあの村で育ってきたハズだ・・・
「う・・・嘘ですよね!?だって私と彼幼馴染ですよ!私は彼と一緒に小さいころから過ごしてきました!」
「嘘ではない、お母様なら知っているハズだ・・・キミのことも」
俺は母のほうを見た、母は驚いた表情ではなく悲しそうな表情をしていた・・・
母の顔を見て分かってしまった、本当の母親ではなかったということを
「冗談だろ・・・か、母さんはじゃあ・・・俺の本当の母親は誰なんだよ!」
「すべて話す、だから落ち着いてくれ」
クーヘンは俺を見て、冷静に答えた
俺は力が抜けたように椅子にもたれかかった
「・・・落ち着いたか?続きを話してもいいか?」
「・・・わかった、全部話してくれ」
俺がそういうとクーヘンはまた一呼吸をついて、真剣な眼差しで俺のほうを見た
「そもそもキミは王国生まれなんだ、キミのお父さんでもあるモリンスは私の親友だった・・・キミが生まれた時のことを知っている、私もその場に立ち会ったのだからな」
「・・・いきなり本当の父親の名前とか、親友だとか・・・わけがわからねえ・・」
自暴自棄とも取れる俺の反応を気にもせず、クーヘンは続けた
「モリンスも私と同じように騎士をやっていてな・・・・とはいえ彼は騎士としては三流だった、
出世する私と違いずっと下級騎士として過ごしていた・・・けどあいつはあいつなりに強い思いをもってもいたんだ、王国や家族を守りたいと・・・その思いを糧に毎日鍛錬に励んでもいた」
先ほどまでの真剣な眼差しと違い、クーヘンはどこか嬉しそうな顔をしていた
「私もあいつも色々夢を語り合ったりしたが・・・あいつはあの日以降姿を消した」
「あの日以降・・・?」
「キミの本来の母でもあるミネルバが突如行方不明になってしまったのだ、そしてキミの父はミネルバを探すといって王国を出た・・・それが18年前の出来事だ・・・あいつと約束をしたんだ
もしあいつが戻ってこくることがなかったら大人になった息子を鍛えてやってほしいと・・・そのために私は今回キミをこの王国に連れてきたんだ」
どうやら俺の親はどちらも行方不明らしい、そして父親の残した言葉が俺を王国で鍛えろということだ
「キミの父は託したのだろう、もし自分が死んだらキミに母を見つけてほしいと・・あいつはもう帰ってくることはない、だからこそ約束を果たすためにキミを連れてきたんだ、明日には正式に騎士団に入団をするんだ、2年間騎士として立派に成長をしたらキミは旅に出て自分のお母さんを探す旅に出るんだ」
「一つ言わせてくれ、勝手なことを言っているとわかっているか?」
俺は怒りに満ちていた、いきなり連れてこられたら2年間修業しろ、そしてそれが終わったら母親を探す旅に出ろといわれ・・・あまりにも勝手すぎる、約束だか何だか知らないがあまりにも勝手すぎる
「ハッキリ言うが俺は自分の本当の両親の顔なんて知らないし一緒に過ごした思い出なんてない!
なのに今になって好き放題いいやがって・・・納得が行かない!」
「わかっている!キミの人生を変えてしまうようなことだっていうのはわかっている・・だがあいつだって辛かったはずなんだ、わが子を置いて旅に出るなんて・・・」
大の大人二人が情けない表情をしながら声を荒げていた、その光景を見ていた母もミーンも何も言うことができなかった
外からは風の音が聞こえる、いつもは心地よさを感じた風の音が今日はうっとおしく感じた
昨日今日だけで何度この静寂を体験していたか、不快な静寂を何度も何度も体験した
だがこの静寂をいつも切り開いてくれるやつがいた
「・・・わ、私も騎士になれますか!?彼と同じ稽古をつけてもらえますか!?」
いつもミーンが静寂を切り開いてくれる、だが今回ばかりは何故その判断に至ったのかと俺は怒りでいっぱいだった
「お、お前!何言ってんだ!・・・いや、わかる、お前は幼馴染だ・・・探せというんだろ・・!?」
「そうだよ、確かに貴方にとっては本当の両親とかわからないかもしれないけど・・・お父さんが託したんだよ?お母さんをしてほしいと・・・。
当時どんな状況だったのかわからないけど、私は思うな・・・貴方なら必ず願いを果たしてくれると。
だからこうして今、全てを知る日が来たんだと思う」
「だ・・・だが・・・俺は・・・」
「2年間一緒に頑張って強くなろう!私も探すの手伝うから!」
いつもそうだ、こいつはいつも勝手に判断をして勝手に俺を巻きこむ。
今回もそうだ、勝手にその気になっている。
「騎士を務めている女性は多い、キミが本当に騎士になるのならば・・騎士団の入団を認めよう」
「・・!ハイ!お願いします!」
「あっ・・・!お、おまえ!」
「もう決めたから!・・・ゼロン、貴方はどうするの?村に帰る?」
他人事なのになぜここまで真剣になれるのか、俺が逆の立場なら探すのを手伝うなんて言えない。
女性は強い、俺よりもずっと・・・
「・・・俺は村に帰るぞ、付き合ってられないからな」
「いいよ、私が代わりに見つけてきてあげるから・・・・貴方は村に戻っていつものように草原で昼寝をしていればいいわ」
こいつは一度決めたことを捻じ曲げることはない、とても頑固でとても強い奴だ・・・。
俺より小さいのに本当に強い奴だ・・・
「・・・わかった・・・やってやるよ・・!さっさと全部終わらせてまたあそこに戻るぞ」
「・・・!ふふ・・・よかったわ、幼馴染が意気地なしじゃなくて!」
「決まりだな、では明日改めて迎えに来る・・・ゼロン、キミの決断に感謝する」
そういうとクーヘンは家を出た
話はまとまったように見えたが俺はまだ一つ聞きたいことが残っていた
「な・・なあ母さん・・・今の話が本当ならば母さんは何なんだ?本当にただの他人なのか・・?」
不安な声で俺は聞いた
「・・私はねぇ・・・18年前に夫を亡くして一人っきりだったんだよ、あの人をなくして私は生きていくのが悲しくなったんだ、あの人のことを追いかけようと何度も死のうと思ったよ。
けどそんな時さ、村の草原で赤ん坊を抱えた一人の騎士様に出会ったんだ」
「・・・その赤ん坊が、俺か・・・」
「騎士様に言われたんだ、私が戻ってくるまでの間だけこの子の面倒を見てくれませんか?
そう言われ私はあんたを育てることにしたんだ、何もわからなかったけど当時の私にはあんたという存在ができてから死ぬわけにはいかなくなったのさ・・・このまま何も知らないで、親子として過ごすのはできなかったみたいだけどねぇ・・・」
最後のほうは何を言っているのか聞き取れなかった、うつむいていた母だが顔を上げいつもの笑顔に戻った
「けど!全部わかった以上もうしょうがない!お前はお父さんの遺志を継いで本当のお母さんを見つけてくるんだよ!・・・お前は大きくなったが私にとってはまだまだ子供よ!子供は親のいうことをちゃんと聞くもんだよ!」
「・・・フッ・・・へへ、もうガキじゃねえよ!」
「そんなのは私に一人前になった姿を見せてから言うんだね!・・私も村には戻らないといけない、だから今日はあんた達の門出を祝って豪華な料理を作ってやらないとね!」
母は持ってきた荷物の中から見慣れた食材を取り出し台所で調理を始めた
今日の夕食はシチューのようだ
「騎士になるとか不安なことはまだまだあるけど・・・私達ももう大人なんだから頑張るわよ!
明日からは全然違う生活が始まるわ!平和ボケするんじゃないわよ!」
ミーンはめいいっぱいの笑顔で俺のほうを見て、いつもの調子に戻ったようだった
母のシチューが完成しテーブルの上に置かれた、野菜は昨日と違いいつもの切り方だ
今日のシチューはいつもと変わり映えのない母のシチューだった




