幸せな休日〜昨日の私からの贈り物〜
土曜日の朝は、平日よりも静かだ。
窓から差し込む光がやわらかくて、
部屋の空気が少しだけ甘く感じる。
ベッドから起き上がると、
キッチンの端に置いてある布巾が目に入った。
その下には、昨日の夜に連れて帰ってきたバゲット。
「おはよう」
思わず声をかけてしまう。
それくらい、昨日からずっと楽しみにしていた。
布巾をそっとめくると、
バゲットの表面はまだパリッとしていて、
指で軽く押すと、
小さく「パリ…」と返事をする。
その音だけで、胸がふわっと温かくなる。
お気に入りのプレイリストを開き、
流行りの音楽をかけ流した。
部屋を掃除して、洗濯を干した。
スッキリとした気持ちで時計を見ると、
もうお昼時に近くなっていた。
今日はこのバゲットを、
ゆっくり味わうためのお昼にする。
包丁を入れると、
ザクッ、と心地よい音が響いた。
断面には大小の気泡がきれいに並んでいて、
小麦の香りがふわっと立ち上がる。
「絶対おいしいやつ」
昨日の夜から何度も思った言葉が、
また口からこぼれた。
フライパンにオリーブオイルを垂らして、
弱火でじっくり焼く。
油が染みて、
表面がこんがり色づいていく。
焼けてくると、
カリッ、カリッと小さな音がして、
香ばしい匂いが部屋いっぱいに広がった。
その上に、
薄く切ったトマトをのせる。
塩をひとつまみ。
オリーブオイルを少し。
バジルをちぎって散らす。
シンプルなのに、
見ているだけで幸せになれる。
ひと口かじる。
——カリッ。
外側はしっかり固めで、
中はもちっとしていて、
噛むたびに小麦の甘さがじんわり広がる。
そこにトマトの酸味と、
バジルの香りがふわっと混ざって、
オリーブオイルのコクがあとから追いかけてくる。
「……昨日の私、ありがとう」
金曜の夜に買ったバゲットが、
土曜のお昼をこんなに豊かにしてくれるなんて。
食べ終わったあと、
キッチンに残ったオリーブオイルの香りが
なんだか心地よくて、
午後の時間がゆっくり流れていく気がした。
土曜日のお昼は、
“昨日の自分がくれたごほうび”を味わう時間。
そんなふうに思えた。




