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朝のメロンパンは、魔法みたいだ

朝、目が覚めた瞬間に思ったのは、

「今日はちょっと気持ちが重いな」ということだった。


理由は特にない。

寝不足でもないし、嫌なことがあったわけでもない。

ただ、胸の奥に薄い雲がかかったみたいだ。


そんな日は、決まって家の近くのパン屋に向かう。

焼きたての香りが、私の気分をそっと持ち上げてくれるから。


店の前に着いた瞬間、

甘くて温かい空気がふわっと鼻先をくすぐった。

バターが溶ける匂いと、焼けた砂糖の香り。

それだけで、心の曇りが少し薄くなる。


「メロンパン、焼き上がりました〜」


その声を聞いた瞬間、体が勝手に動いた。


袋から取り出したメロンパンは、

表面のクッキー生地がまだほんのり温かくて、

指先にサクッとした感触が伝わってくる。




ひと口かじると、


——カリッ。


薄いクッキー生地が軽く割れて、

その下からふわっとした生地が押し返してくる。

中の柔らかさが、舌の上でゆっくりほどけていく。



噛むたびに、

外側のサクサクと内側のふわふわが交互にやってきて、

甘さがじんわり広がる。

砂糖の粒がカリッと弾ける瞬間が、なんとも幸せだ。



「……ああ、今日もなんとかやっていけそう」


自然とそんな言葉が漏れた。


手に残る温かさが心地よくて、

歩く足取りもさっきより少し軽い。




甘いものを食べると、

胸の奥に小さな灯りがともる。

それが私にとっての“整える”ということなのかもしれない。


家に戻ると、

台所に立つ気力もゆっくり戻ってきていた。

夜は野菜を刻んで、スープでも作ろう。

パンの軽やかな甘さとは違う、

じんわり体に染みる味が恋しくなる。


パンの香りと、台所の湯気。

その二つがあれば、私は今日も大丈夫。


そんなふうに思えた朝だった。

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