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青春勇者少女と魔法使いとまだ見ぬ青い春  作者: 黒桐


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9/10

青春勇者と魔法使いとまだ見ぬ青い春(2)

 青い空の下、暖かい日差しが降り注ぎ柔らかな春の風が俺の頬を撫でていた。


「んー! 晴れてて気持ちー」


 気持ちよさそうに背筋を伸ばす俺の横の御伽さん。

 昨日の一件から翌日、俺たちは学校の屋上のベンチに横並びで太陽の日差しを浴びながら平穏な時を過ごしている。

 御伽さんはバックから上機嫌でじゃ〇りこを引っ張り出すと横でもぐもぐと食べ始める。


「おいしー。いやー学校が早く終わる日ってなんか特別感あるよねー」


 今日は学校が昼で終わりなのだが、呼び出しを喰らい俺は今ここにいる。


「あぁそうだね。それで昨日言っていた要件とはなん……何かな? 御伽さん」


「ん、あーそれはねー、っていうか喋り方!」


 御伽さんは持ってじゃ〇りこをビシッと俺の方に向ける。


「? 喋り方がどうかしたのかな?」


「またよそよそしくなってる」


「そ、そうだろうか? まぁ丁寧じゃない口調になってた時もあるかもしれないが……いやしかし同級生」


「それに、出会った時以外ずっとそんな感じの喋り方だったよ? 気づいてなかった?」


「な、そうだったか……!?」


「そーそー。今更そんな喋り方いいってー」


 そう言いながらじゃ〇りこを口に放り込む御伽さん。

 いつの間に……。しっかり円滑なトラブルのない学校生活のための口調を心がけていたはずだが……。

 御伽さんはじゃ〇りこ飲み込むとこちらへ体を向けた。


「私たちは一緒に敵と戦い、友情を交わした友なんだし! それともあの時言ってたのって……」


 御伽さんはジト目でこちらを図る様に見つめてくる。


「あ、あぁ、いやそんなことはない。俺と君は友達だ、うん」


 慌てて俺は御伽さんに友達だということアピールする。

 すると、彼女はすぐに笑顔を浮かばせる。


「ふっふっふっー、でしょ?」


 どうも自分は彼女のペースに巻き込まれがちだ。そこまで悪い気はしないが。

 そう考えていると、御伽さんはすくっと立ち上がる。


「というわけで! しよ! 親睦会、兼、お疲れ様会!」


「お疲れ様会……?」


 ニカッと彼女は笑う。


「そ! せっかく影も倒して問題解決なんだからお祝いもかねてパーッとやろうよ!」


「お、お疲れ様会か……。うん、いいな、せっかくだ。パッーといこう」


 あまり自分では思いつかないであろう提案ゆえびっくりしたが、なるほど、そういうのもたまにはいいだろう。


「何か考えているのか?」


「ううん、考え中なんだけどね……あ、そうだ!」


 御伽さんは俺が乗り気な態度を見て楽しそうに鞄を広げてスマホを出す。


「でさ、交換しようよ! L〇NE!」


「L〇NE……」


「そ、お疲れ様会の内容も一緒に考えれるし、やっぱりこーいうのあった方が便利だって!」


「あぁ、勿論いいよ……そういえばまだ交換してなかったな」


 俺は御伽さんと連絡先を交換する。御伽さんは画面に何かをタップし始める。

 すると『よろしくねー!』という言葉と共にスタンプが連打されて送られてくる。

 楽しそうにこちらを見つめてくる御伽さん。それに応えて俺も『よろしく』という言葉と共にスタンプを送る。


「あははっ」


「くっ」


 何てことは無いやり取り、けれど、どうも可笑しくってお互いに笑ってしまう。


「いやー、なんか青春って感じ! 帰ってきたかいあったよー! こうやってもう一回普通の学生生活送るのがずっと夢だったからさー」


「うん、それはこれからは夢が叶いまくりだな。……どんなことをしたいとかはあったのか?」


 空を眺める、春の風が桜の花びらを連れ去ってどこかに運んで行ってるのが見える。


「うん、そりゃあ勿論! 考えてんだよずっと、もう一度学校に行ってねー、勉強して部活して、友達とマック食べてオシャレしてさーそれで後はー……」


「後は?」


 急に喋るのをやめる御伽さん、どことなく頬が赤い気がする。


「あーえっと……いや、何でもない! 秘密!」


「? そうか」


 彼女はじゃがりこをまたつまみ出す。

 まぁ彼女にもそれぐらいのことはあるだろう。ん、鞄から振動音が……。

 俺は鞄を開け、上に被さっていたイヤホンをベンチに置いてスマホを取り出し確認する。

 誰かからのメッセージのようだ。


「なんだ、吉野か……『モテる方法を教えてくれマジで』……無視でいいか」


「あ、イヤホンだ、なんかちょっと意外かも」


「いや、どうしてだ……」


「んーなんか、そーいう俗っぽい感じあんまりしなそうな雰囲気だから?」


「いや、普通にするが……音楽はよく聴いててこういう何でもないような時間の時によく聞くんだ」


「へー」


 御伽さんの注目はイヤホンに映る。


「どんな曲聞いてるのー? 聞かせてよー」


「ん? あぁいいが……」


 スマホを取りイヤホンジャックにイヤホンの端子を入れる。

 そうして、イヤホンの部分を探そうとすると、「はいっ!」と自分の耳に片方を入れた状態で御伽さんがイヤホンを渡してくる。

 いつの間に一緒に聞く展開に……。いや、構いはしないのだがこういう状況は少し恥ずかしさが。

 そう考えながらイヤホンを耳にはめると雑多に音楽を選び再生する。


「あーこれ最近よく流れてるやつ!」


 片方のイヤホンから流れる音楽に御伽さんは耳を傾ける。


「うん、どうも耳に残って、聞いてるうちに好きになって」


「あはは、あるある。いいよねーここ」


「あぁ」


 イヤホンから流れる軽快なテンポと爽やかな曲調。


「ここもいいんだ」


「ねー。…………ってか二人でイヤホン分けて音楽聞くとかよく考えたら……」


「? すまない御伽さん。『ねー』から先がうまく聞こえなかったんだが……」


「あーいや! 何でもない! ほんと! 何でもないんだよ!」


 手をバサバサと動かす御伽さん。


「? そうか」


 流れるミュージック。少し恥ずかしさはあるがこういう穏やかな時も悪くない。

 それにしても御伽さんはこういうイヤホンを分け合って聞く状況でもあまり照れたりはしないのだろう。

 そう考えていると、横を見ると御伽さんは顔を背けて足をゆらゆら動かし始めていた。

 テンションでもあがっているのだろうか、まぁ、いい曲だからな。

 曲

 もラスサビに入り一番の盛り上がりどころだ。

 そう思っているとチラリと御伽さんが視線を向けていることに気づいた。


「ね、……あのさ、せっかく友達なんだしさ、名前で呼び合おーよ? 御伽さんじゃなくてさ」


「! それは……うーん、それは恥ずかしい気も……」


「えーでも普通の話し方なのにそこだけ苗字にさんは変だと思うけどなー」


 御伽さんは少し口をとがらせる。


「わ、分かった…………勇奈さん」


 そう言うと同時に御伽さんは満面の笑みを浮かべるのだった。


「ん! えへへこれからもよろしくね! 護君! ……んーいや、まもっち!」


「まも……!? あ、あぁ……ふふっ、よろしく」


 まもっちに言いたいこともいろいろあったが、思わず素直に笑顔で返してしまった。

 曲が終わる。少し気恥ずかしさもあるが、これが彼女の言う青春というやつなのだろう。

 中々悪くない。

 異世界から帰ってきた少女。最初はどうなることやらと思っていたがこんな展開なら望むところだ。

 彼女と過ごす青い春、こんな日々も俺が望んでいた何の変哲もない平和な日常の一部なのだろう。

 願わくは、こんな良くある日常が続かんことを───



 ぐわん、と曲がる空。

 そう、形容するのが正しい光景だった。


「「!?」」


 風が猛烈に吹き、俺たちのいる屋上の上、空間がぐにゃりと曲がりそこから途轍もない魔力があふれ出す。


「この感じ、まるで、御伽さんのときのような……幻影の結界を張る!」


 俺はとっさにイヤホンを外し立ち上がると、魔法で咄嗟にあたりに一般人に見えないように魔法による幻影を張る。

 これで何が来ても安心だが……。


「なにこの魔力……!」


 御伽さんもイヤホンを外し、立ち上がり驚きながら上を見上げる。


「間違いない御伽さんと同じときの魔力の波長だ!」


「え!? それって私みたいに異世界から誰か来るってこと!? 心当たりないけどー!?」


 空間からあふれ出した魔力が魔方陣を構築し、輝きだす。

 見たことも無い異質な形の魔方陣。

 来るか……!

 俺は魔法をいつでも発動できる状態に構え───


「でも、あの魔方陣の感じどこかで見たことあるような……」


 より一層輝く魔方陣、するとその中から何かが現れる。

 あれは……何だ。白い、何か……髪か? 人だろうか。

 ニューッと出てくるそれは白い髪に青いローブを着た人の様で。

 しかし、あの大きさはまるで子供……。

 そう考えながら警戒していると……。


「あーーー!!!」


 大声で指をさす御伽さん。


「!? どうしたんだ!?」


「た、多分私の仲間!」


「仲間……?」


 戸惑っているとまるで押し出されるようにスポンと魔方陣から出てきた青いローブの誰か。

 御伽さんはその人物が落ちそうな場所まで走るとバシッと受け止めた。

 だ、大丈夫なんだろうか。魔方陣は役目を終えたのか輝きを失い消えると空間の歪みもすぐに消える。


「───!」


 御伽さんに逆さで抱き留められた誰か苦しそうにもぞもぞしている。


「ちょ、ちょっと待ってねー! よいしょ!」


 御伽さんはそのままくるっと件の人物を半回転させる。


「ぷはーっ。久しぶり、ユナ、元気、してた?」


 ローブがふわりと浮かびめくれる。そして、そこに表れるのは白い髪に幼い顔立ちの顔。


「ラーニャ!!??」


 御伽さんはその人物……背丈や格好からしてまだ幼い身であろう少女を見て目を丸くさせている。


「し、知り合いなのか……?」


「あ、うん! 私の異世界の時のパーティの仲間で魔法使いの子……でも、どーやってここに!? 世界を渡るにはすごく大変なんじゃ……」


「うん、だから、頑張った」


「が、頑張った!? ってゆーか日本語も!」


「うん、ユナたちが喋ってるの見て、覚えた。すごい?」


「う、うん。こっちに来たこともそうだけど。流石にすごすぎだよラーニャ……」


「えっへん」


 彼女は器用に御伽さんに抱き上げられながら胸を張る。


「ここがユナの世界……そこにいるの、誰?」


 彼女は俺を見ながら首を傾げる。


「お、俺か!? あぁ、俺は雨夜護。その勇奈さんの友達だ……」


「あ、うんそーだよ私の友達」


「友達……ほんとに? ……怪しい……」


 そして少女は御伽さんから降りるとそこからともなく自分の背丈ほどはある杖を取り出し俺に向けて構える。


「わーわー、落ち着いてラーニャ! ほんとだよ! こっちに来てた魔王の影もまもっちと一緒に倒したんだから!」


「影が……? なるほど……ユナも大変、だったの」


 かつんと杖を地面に立て取り敢えずは臨戦態勢を解除してくれる彼女。

 あ、危ないぞ……この少女。


「ユナも……って、ラーニャも何かあったの?」


 それにしても何だろう、なんだか。


「ん、大変なことがあった、だからこっちに逃げてきた、みたいな?」


「た、大変って。他の皆は?」


「ユナの知り合いは皆無事、でもどうにかしないとまずい、かも」


 嫌な予感がする。


「まずいって?」


「下手すると二つの世界が危ない、だから、どうにかしないと。ね、ユナ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? 出来るならそっちとも一緒に、話したい」


「ほ、他の転移者……!?」


 予想だにしなかった展開の連続の末に一切知らなかった情報がいきなり飛びだし俺は唖然とする。


「あー言ってなかったっけ? 私の他に転移してきた女の子も結構いて……何人か一緒に戦って帰ってこれてたっぽいけど……そっかー知らないなぁ……」


「なら、ユナだけでいいや。でも出来るだけ見つけよう」


「うんそうだね……っていうかホントに元気そうで良かったー、また会えたー」


 御伽さんは涙を浮かばせながら少女をギュっと抱きしめる。


「ふふ、私も、嬉しい」


 抱き返す、少女。

 いや、いやいやいや。


「世界は大変、だから、そっちも手伝ってもらう」


 少女は俺の方を見ながらそう告げる。


「お、俺もか……」


「うん、まずはここを拠点にして……私たちとの世界もつなげやすくしないと……」


 な……俺の一族の領地でやるのか?

 御伽さんはすくっと立ち上がりやる気を見せる。


「よーし! 困難とかまだよくわからないけど私も頑張るよ!」


「うん、それじゃあ、他の転移者待つ。ユナが帰った来た時とは別の波長、魔方陣に組み込んだ。私たちの世界に関する者、転移者なら気づける合図、みたいなもの」


「あーここで待つだけでいいんだ……んーでも転移者同士かーバトらずに行くといいなー」


 いや、ここ俺の領地なんだが、俺の治める土地……。


「ま、ラーニャもまもっちもいるし何とかなるか!」


「ん、任せて」


「がんばろーね! まもっち!」


 望んでいた平穏な世界は秒で終わりを告げ、何とも途轍もない展開になってしまった。

 俺の……省エネ主義の、平凡な……。


「あ、あぁ……」


 震える手でグッとハンドサインをし、応えて見せる。


「よーし! がんばろー!」


「おー!」


「お、おぉ……」


 皆でこぶしを突き上げる。

 壊れ征く平和、危なげなワード。恐らくは当分は眠れなくなるであろう、予想される過酷な日々。

 考えただけで胃が痛い。俺の日常は一体どうなってしまうのだろうか。

 心のどこかで諦めをつけながら、目の前の元気に笑う二人の少女を見てため息をつきながら。


「はぁ……もうなるようになればいいか、やれやれ。……まぁ頑張りますか……」


 なんて、ラノベの主人公みたいなことを俺は呟くのだった。

短編ではありますが例によって反応がゼロなので考えてた続きを書くか迷ってます。

でも一応軽く前日譚みたいなのを今日か明日出します。まぁここまで見てる人いるか分かんないので報告しても意味ないかもしれませんが。

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