エピローグ ―それぞれの春―
春の風が街をやわらかく撫でる頃、真希は大学の卒業式を迎えていた。
たくさんの思い出が詰まった講義棟、何度も座ったカフェの窓際の席、そして何より――仲間たちとの絆。夜の不安を抱えていた日々は決して忘れられるものではなかったが、それがあったからこそ、今の自分がいる。
卒業式のあと、真希は弥生と待ち合わせて小さなカフェに入った。弥生はすっかり社会人らしい落ち着いた雰囲気をまといながらも、変わらぬ笑顔で「おめでとう」と真希に言った。
「来年から、同じフロアで働けるね」と弥生が言ったとき、真希の胸に熱いものが込み上げた。
あの夜、涙で語り合った不安も、今では新しい一歩への支えに変わっていた。
その数日後、サークルの後輩・佳奈から「進級できたよ」との連絡が届いた。相変わらず悩みはあるけれど、自分のペースで前を向いている。その報告だけで真希はうれしかった。
3人はそれぞれの生活へと歩み出した。でも、共に過ごした時間は、それぞれの心に小さな光を残している。
不安の夜を越えた先に、ちゃんと朝はやってくる。
そして、自分を受け入れた先に、新しい誰かを支えられる自分がいる。
未来はまだ少し怖い。でも、もう一人じゃない。
笑って、泣いて、転んでも――また立ち上がる力が、彼女たちにはある。
物語はここで一旦幕を閉じる。けれど、彼女たちの人生は、今まさに始まったばかりだ。




