第12章:新たな約束と、前向きな変化
夏休みに入っても佳奈の様子はどこか沈んでいた。
真希が問いかけると、佳奈はぽつりとこぼした。
「このまま…変わらなかったら、ママが……もっと厳しくなるかもしれないの」
プレッシャーと不安が積み重なり、佳奈の状態はさらに悪化していた。朝起きると布団が毎日のように濡れていて、先週は一度も成功しなかったという。
真希は静かにうなずき、そっと佳奈の手を取った。
「佳奈、今のままがつらいなら……もう、自分を責めるのやめて。オムツってね、恥ずかしいものじゃないよ。安心を得るための、大切な道具なんだよ」
そう言って、自分と弥生もずっとテープ式の夜用オムツで過ごしてきたことを打ち明けた。
「ママに、ちゃんと話してみたら?“完全に治るまで、私は毎晩オムツを使います。途中で投げ出さないから、見守ってほしい”って」
佳奈は迷った。でも、真希のまっすぐなまなざしに背中を押された。
その夜、佳奈は母とじっくり話し、正面から自分の意思を伝えた。
母は最初戸惑ったが、佳奈の真剣な決意に折れ、夜のオムツ使用と共に「失敗への対応」も見直す約束をしてくれた。
そして、その晩から佳奈は、小学生以来のテープオムツを自分の意志で着け、前向きな一歩を踏み出した。
真希は「良かったね、これから一緒に頑張って、オムツ卒業しよう」と優しく励ました。
しかし佳奈も真希も、依然として毎晩たっぷり濡れてしまう状況は続いていた。
それでも、佳奈は心の重荷が少し取れたことで、以前より明るく、少しずつ自分に自信を取り戻していった。
秋。真希は就職活動へ気持ちを切り替え、スーツを着て面接に挑む日々が始まる。
「昼も夜も失敗ばかりだけど、それでもやれることをやるしかない」と、自分に言い聞かせながら。
弥生は旅行会社で繁忙期の夏を走り抜けていた。連日の業務と不規則な生活、夜の失敗も多く、落ち込む日もあった。
でも、真希と時々話す電話やメッセージが、彼女にとっての救いだった。