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第11章:「弱さを見せられる場所」

春の風が冷たく感じる夜だった。


弥生は、真希の部屋の扉の前で立ち尽くしていた。目は腫れ、頬には乾ききらない涙の跡があった。ドアが開くと、真希はすぐにその異変に気づいた。


「弥生先輩…?」


「……今朝、ね……」


弥生は小さな声でぽつりぽつりと話し始めた。


「オムツ……決壊して。気づいたときには、シーツに…また、地図を描いちゃってて……」


視線は俯いたまま、手が震えていた。


「このところ、夜も全然ダメで……ちゃんとトイレでできてない。テープタイプに、厚めのパッド入れてても……朝まで持たなくて……」


言葉の端々に、悔しさと自己嫌悪が滲んでいた。

そしてついに、堪えていた涙が溢れた。


「私……もう、どうしたらいいのかわからないの」


真希は、言葉を返さずにそっと抱きしめた。


少し前までの自分なら、どう慰めていいかわからなかった。

でも今は違う。佳奈と出会い、誰かを受け止めることの重さも、支える勇気も知った。


「大丈夫だよ。失敗したからって、弥生先輩の価値が変わるわけじゃない。私、ちゃんとわかってるよ」


その言葉に、弥生の肩が少しだけ震えた。安堵か、涙か、わからない。


「……ねえ、真希。お願い……今日、一緒に寝てもいい?」


その声はかすれていて、でも必死だった。


「1人で眠るの、今日はちょっと……怖いんだ」


真希は、静かにうなずいた。


「もちろん。先輩が安心できるまで、ずっと一緒にいるよ」


2人はその晩、こたつに入って温かい飲み物を飲みながら、夜更けまで語り合った。


真希は、佳奈と出会って自分が少しずつ変われたことを話した。

佳奈がどんな家で、どんなふうに泣きながら朝を迎えているのか。

それでも諦めずに、笑おうと頑張っていること。


弥生は静かに聞いていた。ときおり、涙を拭いながら。


「……真希は、強くなったね」


「ううん。支えてくれる人がいるって、強くなれるんだと思う。私も、弥生先輩に支えられてきたから」


やがて布団に入った2人。

外では春の風が、やさしく窓を揺らしていた。


心細さを少しずつ手放しながら、2人は静かにまぶたを閉じていった。

朝がまた、少しだけ優しく訪れることを願って――

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