表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/38

十九、ラダと氷?

 客人用の部屋が一部屋しかなく、その上ライラたちが夫婦だとノフには嘘をついたから、ライラとラダは一つの部屋に泊まることになっている。

 ラダは部屋の床に毛布を敷いて、底に寝転がり目を瞑った。


「ラダくん、聞いて」

「聞かん。明日の早朝にここを発つ。もう寝ろ」

「寝るって言ったって……ラダくん、せめてベッドに寝て」

「できん」


 ラダは強情で、だったらライラは。


「ライラ?」

「ラダくんが床で寝るなら、私も床で寝ます」


 ラダから少し離れた床に横になる。ほら、冷えて体が痛い。ライラが小刻みに震えていると、ラダが起き上がる気配がした。そしてそのままライラの体が抱き上げられて、ベッドの上に降ろされた。


「ラダくん」


 いまだ、床に寝ようとライラに背を向けたラダの服の袖をつかむ。ラダは振り返らない。ライラはもう一度、


「ラダくん、一緒に寝よう」


 一瞬だった。ラダは振り向きざまにライラを押し倒して、ライラの上に覆いかぶさった。ラダのせいで天井が見えなくなる。ラダの顔が、暗くてよく見えない。


「オマエは、誰彼かまわず一緒に寝るのか?」

「……ラダくん、だから、譲れないの」

「……はぁ」


 ライラの上からラダがのき、次にはベッドが軋む音。ライラはラダと距離を置いて、ベッドにもぐりこむ。ライラは毛布をラダとふたりでかけて、きゅっと目を瞑った。ラダの息使いが向こうに聞こえる。


「ラダくん」

「……」

「もう寝ちゃったか」


 ライラは天井をぼうっと見た。この北の地は寒く、四季がほぼない。しかし、オスロほどではないから、年中雪に包まれているわけでもない。だが、一年中寒いから、きっとこの場所なら。


「でも、氷を運搬する間に溶けちゃうし」


 眠れなくなる。考え事をするとどうにも眠れなくなる性分で、ライラはラダを起こさないようにベッドを起き上がり、部屋を後にした。


 リビングには、ワインを飲むノフの姿があった。


「なんだい、眠れないかい?」

「あ、はい」

「飲むかい?」

「いえ、未成年なので……」


 ライラはダイニングテーブルの椅子に座る。向かいのノフに、なんとなく聞いてみる。


「夏にかき氷を出したいんですが、冬ならともかく、夏に氷って保存できないですよね」

「なんだい、藪から棒に。確かに、安定して氷を手に入れるには、氷魔法では弱すぎるね。オスロから運んでも保存する場所がない。今の人間の魔法力は王族でも極わずかだから、氷を作り出せまい」


 ワインを一気にあおって、ノフが笑った。


「地下室を作ればいいんだよ。そこに氷を保存すれはば、溶けることなく保てるだろう」

「地下室?」

「穴を掘って、地下室を作るんだ。地下室の下と上には、藁を敷き詰めて保温するんだ。氷室っていってね。先人の知恵さ。まあ、オスロに行けば、氷なんて手に入るが。しかしあそこは氷を独占する国だから手に入るまい」


 ワインをグラスについで、ノフが顔を赤くしながら上機嫌に語り出す。


「オスロの氷は、それは見事さ」

「見事?」

「ああ。彫刻の技術が磨かれていてね。我が国にも、なにかと行事の際は見事な彫刻を贈られているんだ。まるで刃物かガラスのように鋭いものさえ」

「そうか、そっか。そうか!」


 がたた、と立ち上がって、ライラはその場に跳ね上がった。これで、あとは氷を薄く削る機械が出来上がれば、このメニューを実現できるだろう。その技術は、羽国のものと、オスロのものを組み合わせればいい。ライラは早くラダに話したいのを我慢して、


「じゃあ、おやすみなさい」

「ああ、よく寝な?」


 今一度、あてがわれた部屋に入っていく。真っ暗な部屋にラダの寝息が聞こえる。明日の帰りの馬車で、これからのプランを練ろう。氷室を作れば、このメニューは一年中提供可能になる。今はちょうど冬だ。今のうちに氷を王都の氷室に保存すれば、きっとこのメニューは、革新を起こす。

 そしてもうひとつ。氷を使えば、ラダの母の殺人の証拠を隠滅できる。つまり、ラダの母は鋭利な氷で殴られて死した。その部屋は、真夏にも関わらず暖炉が燻っていた。それは、凶器の氷を溶かすために、暖炉に火をつけ氷を投げ入れたからだ。ハルト皇子の母の部屋から見つかった凶器は、不自然だった。殴る際に柄を持っていたのなら、そこに血が付着するはずがない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ