表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/77

第76話 アドバイス

 喫茶店。

 1人、美味いコーヒーを飲む。

 チェーン店の喫茶店で、朝からそれなりに人がいる。パンケーキが名物らしいが、それは如月が帰ってきてからだな。

 如月が攫われたってのに、何をこんなにのんびりしているんだ、と思うかもしれないが、一度落ち着きが欲しかった。短期間に色々な情報を頭にぶち込まれて混乱気味だったからな。


(とりあえず、作戦までにやることは決まっている)


 グローブの嵌った右手を見る。


(クロガネの復活だ)


 前、クロガネを出そうとしたが出なかった。そういえば飯塚と戦った時以来、クロガネを出したことがない。


 なぜだろう? なぜ俺はウル達と対峙するまでクロガネを出そうともしなかったんだ?


 迷宮に潜っている時は俺がシーカーであることを隠して行動していたから、明らかなオーパーツであるクロガネの使用は控えていた。

 だが部屋で1人の時とか、いくらでもクロガネを試せるタイミングはあったはず。なのに俺はクロガネを出そうとしなかった。無意識にわかっていたからじゃないのか? 今の俺にはクロガネが出せないと。


 この問題を解決するため、開発者であるユンさんにメッセージを送ってみたのだが、


『数値上ではクロガネを出す条件は揃っている。ゆえにクロガネを出せない原因は数値では測れない部分、(すなわ)ちお前の魂によると考える。つまり、オリジンをクロガネに昇華させるためには何らかの精神条件が必要なのだと考える』


 精神条件……漫画の主人公とかは怒りや悲しみ、希望や絶望をきっかけに覚醒することがある。それと同じで、俺の何らかの感情がオリジンをクロガネに変えるのに必要なんだ。


 飯塚にぶっ飛ばれた時、俺は何を考えていた?


 怒り……は違うな。飯塚に怒りはあったが、あの時は目の前の状況に対応することに必死で怒りとかは頭から消えていたと思う。


 絶望……はあり得る。飯塚との戦力差、あまりの状況の悪さに絶望はしていた。だけど、そういう後ろ向きの感情で覚醒したとは考えづらいな。


 テセウスと戦うためには対シーカーオーパーツであるクロガネは必要だ。作戦までにどうにかして引き出す方法を見つけないとな。


「ん?」


 スマホが鳴る。

 開くと新着メッセージが入っていた。


『11時00分、本部1階トレーニングルーム集合 by朝比奈夜猫』


 いつの間に俺の連絡先を……一色さんが教えたのか?

 トレーニングルームか。目的はわかる。ちょうどいい。どうせ如月抜きじゃ迷宮に潜れないし、体を慣らすには実戦が1番だ。



 --- 



 時間通りトレーニングルームに行くと、そこには石造りの壁や屋根が広がっていた。


「ピラミッド内部をイメージしたのか」

「そうよ」


 夜猫と夕凪さんが広間にはいる。


「夕凪さんは……もう体は大丈夫なんですか?」

「ああ。()()心配ない」


 『体は』か。


「君のことは聞いている。オリジンに選ばれた最強のサポーター、葉村志吹君」

「最強のサポーターはちょっと誇張が入ってますけど……」

「ていうかお姉ちゃんさ、コイツの情報私知らなかったんだけど! なんで教えてくれなかったの!」

「共有のフォルダには入れたぞ。お前が見なかっただけだ」

「うっ……!」


 夕凪さんはきっと、夜猫にオーパーツの使い方を指南していたんだろうな。


「志吹君」

「は、はい」


 夕凪さん、めちゃくちゃ美人だから名前を呼ばれると緊張するな。


「君には夜猫の実戦相手になってほしい。本当は前線に出て欲しくないんだが……言って聞くタイプでも無いのでな。せめて自衛できるぐらいの強さは身に着けてほしいんだ」

「わかりました。その代わりじゃないですけど、夕凪さんに後でちょっと質問していいですか?」

「? ああ、構わない」


 クロガネのこと夕凪さんにも聞いてみよう。シーカーとして経験豊富だしな。


「それと夜猫、手合わせの前に俺からお前へアドバイスしてもいいか?」

「アドバイス?」

「ああ。サポーターからシーカーになった人間だからこそ、できる戦法というものがある」


 俺と夜猫はサポーターからオーパーツ使いになったという共通点がある。だから俺のノウハウはコイツにも活かせるはずだ。


「へぇ、面白いじゃない。聞かせなさいよ」


 俺は夜猫に教える。俺なりのクロシュ・ハントの活用法を。

 夜猫はそれを聞いて納得したのか、笑みを浮かべた。


「なるほどね……! いや、確かにクロシュ・ハントとの相性ばっちりだわ」

「話には聞いていたが、流石だな志吹君。私にはできない使い方だ」

「夕凪さんの使い方は繊細さが必須ですから、夜猫が夕凪さんと同じ使い方をしても下位互換になるだけです。夜猫は夜猫なりにクロシュ・ハントにアプローチしないと」

「……言い方はちょっとムカつくけど、まぁいいわ」


 それから夜猫と夕凪さんと共に修行に励んだ。

 夜猫への指導、そして俺自身の体の慣らしをする。


 今日は1日夜猫への指導で終わった。

【読者の皆様へ】

この小説を読んで、わずかでも

「面白い!」

「続きが気になる!」

「もっと頑張ってほしい!」

と思われましたらブックマークとページ下部の【★★★★★】を押して応援してくださるとうれしいです! ポイント一つ一つが執筆モチベーションに繋がります! 

よろしくお願いしますっ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ