第71話 特定
「……あれ?」
思いっきり叫んで、思いっきり魔力を込めたのに、反応が無い。
クロガネが――発動しない!?
「えっとぉ? いま、なんか必殺技っぽい名を叫んでましたよね?」
ウノがニヤニヤとした顔で見てきやがる。
「……うっ」
「その様子だと不発だったようですね。ドンマイ」
恥ずかしい。けど、今はそれどころじゃない。
クロガネが出せない。ならば今ある手札で何とかするしかない。
「かかれ!!」
蛇屋さんの号令で襲い掛かってくる人工オーパーツ集団。
「伏せろ如月!」
「は、はい!!」
「【飛燕爆葬】+【風巻】……!」
右手に火炎を、左手に風を溜め、頭上で両手を合わせる。
「【爆葬嵐花】!!!」
巨大な爆風を巻き起こし、襲い掛かってきた連中を吹き飛ばす。
「魔法を融合させた……!?」
「まったく……本当にあなたは異端ですね」
「……葉村さん」
後ろから、小声で如月が喋る。
「……少しだけ、あの2人の気を引いてください」
「……わかった」
如月がやりたいことはわかる。
「魔法式構築完了……」
俺の奥の手はクロガネだけじゃない。
「【幻影自在陣】!!」
分身4体を生成。ウルに5人で襲い掛かる。
「特級魔法……!」
ウルは動揺する。この手はウルには見せていない。ギルドデュエルでやむなく温存したことが功を奏すとはな。
ウルは分身2体を弾き消すことに成功するが、残りの2体の拳を腹に受ける。
「ごはっ!?」
怯んだウルに、とどめの一撃を本体の俺が叩き込もうとするが、ヨーヨーの回転刃に進路を塞がれた。
「ちっ!」
「ほんっと、何者だよアンタ……!」
ウルと蛇屋さんの視線が俺に誘導された瞬間、
――ガン! ガン!!
ウルと蛇屋さんに銃弾が当たる。2人共ギリギリでオーパーツで防御したものの、楔が2人に突き刺さった。
「おやおや、これは……!」
「やられた!」
如月の拘束弾! マジで優秀だな!
「今です葉村さん! 夜猫さんを!」
分身2体と共に建物の壁を駆け上がる。
「そいつは危険だ。ここで仕留めろ!」
蛇屋さんの後ろに控えていた人工オーパーツ使い達が襲い掛かってくる。俺は分身2体に奴らの処理を任せ、単独で廃ビル2階に突入する。
「夜猫!」
夜猫は頭から血を流し気絶しているが、呼吸・脈拍共に問題なし。出血量も大したことない。
俺は夜猫を抱え、外に脱出する。
「!?」
割れた窓から外に飛び出すと――すでに如月がウルに倒されていた。
如月は地面に叩きつけられており、意識を失っている。ウルは何やら如月の首飾り、ひし形の宝石の付いたネックレスを左手で持ち、観察している。
「これはこれは……とんだ拾い物だ……!」
アレは如月のオーパーツ……だが、機能しないスクラップだったはず。
「如月!!」
そうだ……ウルは自身を弾くことで拘束をすぐに解ける。ちくしょう……頭から抜けてた!
「彼女は貰っていきますよ。葉村志吹さん」
「待て!!」
ダメだ。ウルに全力で逃げられたら追跡は不可能。ならば……!
(【探機】+【消気】!!)
蜂の形をした召喚獣を出す。ただ【探機】で出す時と違い、保護色になっている。
召喚獣を義手で握り、空中で投げる。
(【忍者蜂】!!)
【忍者蜂】はウルの背中にくっつく。
「それでは」
ウルは如月の腕を左手で握り、自身をオーパーツで弾いて瞬間移動する。そのまま自身を弾き続け、俺の視界から消える。
「くっっっそ、が!!!」
ウルは消えたが、まだ蛇屋とその部下の人工オーパーツ集団が居る。
気絶した夜猫を庇いながらコイツらを倒すことは不可能。
……如月のことは心配だが、今は……退くしかない。
「悪い如月、すぐに助けに行くから……!」
俺は奴らに背中を向け、逃走する。
「逃がすな!!」
当然追いかけてくる人工オーパーツ使い達。
「……【印爆雷】」
俺は足の裏から踏むと爆発する魔法陣を設置する。俺の後を追ってきたオーパーツの使い手たちは【印爆雷】を踏み、ぶっ飛ぶ。
【虚動幻影】による攪乱、【印爆雷】や【八方塞】による足止め、これらで相手の数を削り、単独や2人、3人程度で突っ込んできた奴は接近戦で倒す。これを繰り返していく内に追っ手はいなくなった。
夜猫を連れ、地上に帰る。
――負けた。
如月を取られた時点で、俺の負けだ。
だけど最低限の事はした。俺は【忍者蜂】と視覚を共有し、ウルの逃走経路を把握することに成功した。
ウルは俺の知らないルート……恐らくギルド協会非公認のエレベーターで地上へ帰還した。そして東エリアへ行き、ダンジョンフィールドがある八番地区へ。それからとある時限迷宮に入っていった。そこまで見届けたところで【忍者蜂】のエネルギーが切れた。
迷宮の形はピラミッド。わかりやすい。これならすぐに特定できる。
そうか……そこがお前らのアジトか。
「見つけたぞ……」
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