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第67話 パワハラ再び?

 朝比奈夕凪と朝比奈夜猫は美少女姉妹として人気だった。美亜のやつが良く嫉妬丸出しの批判をしていたな。

 夕凪さんは俺の2つ上で、夜猫は同い年だ。


「夜猫ちゃん、もしかして夕凪ちゃんは精神に……」


 夜猫は頷く。


「わかった。外で話そうか」

「……ごめんねお姉ちゃん。これ、お姉ちゃんの好きなお菓子いっぱい買ってきたから食べてね」

「あ……ありがとう……夜猫」


 俺たちは病室を後にし、5階のバールームで夜猫より話を聞く。


「夜猫ちゃん、夕凪ちゃんの病状は?」

「PTSD。簡単に言うと、トラウマを思い出すと発作を起こす病気です」

「復帰は……」

「今のところは……無理ですね。体が治っても、戦うことはできないと思います」


 メンタル的な部分でシーカーを引退する人間は少なくない。オーパーツでも精神までは強化できないからな。ただでさえ血生臭い職業だ。時には人が死ぬ様を見るし、ホラー映画でしか見ない化物を相手にすることもある。言っちゃなんだが、当然のようにシーカーをやれている人間の方が異常と言える。


「原因はやはり、例の襲撃か」

「そうです。オーパーツを剥ぎ取られ、生身になったお姉ちゃんを……奴らは……踏みつけて……!」


 夜猫は怒りを表情に出しながら語る。

 如月は「酷い……」と顔を背けた。


「相手は全員男で、お姉ちゃんは寄ってたかって暴力を振るわれたから……きっと、凄く怖かったんだと思う。魔物よりも、ずっと……」


 夜猫は丸テーブルに乗せた拳を握る。


「……絶対に許さない。アイツらは私が倒します。お姉ちゃんの跡は、私が継ぎます!」

「夕凪ちゃんのオーパーツを受け継ぐ気かな?」

「はい!」

「オーパーツを受け継ぐ? そんなこと可能なのか?」


 オーパーツは適合者しか使えない。そう簡単に譲渡可能なわけがない。


「彼女たちは特別なんだよ。2人は同時に託戦の儀を受け、2人は同時に同じオーパーツに選ばれた。マント型オーパーツ、クロシュ・ハントは2人を包み込んだんだ」


 そんな事例、聞いたことない。かなりレアな事だろうな。姉妹だから魂の形も似ていたのかもしれない。


「結局夜猫ちゃんがオーパーツを譲って、今に至るというわけだ」


 自分も適合したのに姉にオーパーツを譲ったのか。

 信頼か、愛情か。なんにせよ、大切な姉だったんだな。


「私も捜索に混ぜてください! お願いします!」

「いいよ~。葉村君と如月ちゃんと一緒に行動するといい」

「はぁ!?」「えぇ!?」


 ジトーっと、夜猫は嫌そうな目で見てくる。


「アンタら、どっちがシーカー?」


 コイツ、俺達のことまったく知らないのか。

 だとしたら、一旦ここは……。


「こっちの女子がシーカーだ。名前は如月小雪。俺はサポーターの葉村志吹だ」

「ふーん、等級は?」

「Cだ」

「C!? 嘘でしょ。こんな足手まといが居て勝てる相手じゃないです!!」


 夜猫はアビスに訴えかける。


「僕らについてきたら君が足手まといになるよ。いくら適合しているとはいえ、まだ完璧にオーパーツを扱えるわけじゃないでしょ?」

「それは……はい。たまにお姉ちゃんに借りて練習してましたけど、実戦は全然……」


 夜猫はキッと睨んでくる。


「見るからに弱そう……腕、なんか変だし。こんなのと行動するぐらいなら私だけで……」

「夜猫、言うことを聞きなさい」


 一色さんがなだめると、夜猫は背中を丸くする。


「一色先輩……で、でもぉ」


 いきなり撫で声になったな。一色さんに弱いのか?


「我儘を言う子は、嫌い」

「うぅ……わかりました。従います」

「それでいい」


 一色さんが夜猫の頭を撫でる。すると夜猫は本物の猫のように喉をゴロゴロと鳴らした。


「夜猫ちゃんは一色ちゃんに命を救われたことがあってね、それ以来一色ちゃんにベタ惚れなんだ」


 アビスが小声で教えてくれる。


「さてと、早速調査を開始したいけど……手がかりがないんだよねぇ。そのオーパーツ集団、痕跡を完璧に消しているんだ。足跡や魔力の残滓(ざんし)も、途中でパッタリ途切れている」


 転移(ワープ)系のオーパーツか。

 いきなり集団で現れたり、どのギルドも追跡できていないことを考えるとそれしかないよな。


「夜猫ちゃん。襲ってきた相手の特徴とか、細かく教えてくれない?」

「全員無個性な男でした。ガラが悪い、ぐらいしか特徴は……あ! 1人だけ、女が居ました。その女は特徴的でしたね」

「どんな特徴があった?」

「頬から首に掛けて蛇のタトゥーがありました。確かハクダ、とか呼ばれてましたね」


 俺と一色さんは目を合わせる。

 その特徴と合致する人物に、俺たちは会っている。


――蛇屋永華。


 地下街の番人を名乗っていた女性だ。


「アビス様」


 一色さんが伝えてくれるようだ。


「そのタトゥーの女性、零番地区で見かけました。我々には蛇屋永華と名乗ってました」

「零番地区か。よし、早速調べよう――と言いたいところだが、僕があそこに行くと目立ち過ぎるな」


 ネームバリューが高すぎる。

 アビスが地下街に降りたらすぐさまその噂は地下街全域に広がるだろう。もし蛇屋さんが今回の襲撃事件に関わっているとして、アビスが来たとわかったら必ず身を隠す。


「地下街の捜索はそっちのチームに任せようかな」

「はい! お任せください!」


 夜猫は興奮気味に立ち上がる。


「ほら、行くわよ部下共!」

「まさか、お前がこのチームのリーダーなのか?」

「当然でしょ!」


 夜猫はバックパックから黒いマントを出す。


 ――クロシュ・ハント。


 自在に伸縮するマント。その対応力の高さは周知されており、オーパーツの中でもかなりの当たりの部類だ。


「……待っててねお姉ちゃん。お姉ちゃんを虐めた全員の首、取ってくるから……!」


 夜猫の翡翠の瞳が妖しく輝く。

 どこか危うさを感じずにはいられない奴だ。


「マジで足引っ張たら許さないから。特にサポーターのアンタ!」

「うっ……」


 この感じ、思い出すな……あの成瀬美亜(パワハラ女)を。

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