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第66話 朝比奈夜猫

「人工オーパーツが最低でも11、か」


 蒼鍔は俺のことを見る。


「オリジンとか名付けて特別扱いしていたが、所詮、賊でも作れる贋作だったか」


 コイツは……いちいちムカつくな。


「一応言わせてもらうけど」


 ユンさんはタバコを握りつぶし、蒼鍔に鋭い視線を送る。


「疑似オーパーツを作ることはそこまで難しくない。肉体を寄生先にするならばな」


 声色こそ冷静だが、目が怒っているな。

 ユンさんはオリジンの開発者。それを馬鹿にされたら怒るのは当たり前か。


「つまり、ユンさんは今回の襲撃者のオーパーツは魂媒体ではないと?」


 空木さんの質問にユンさんは頷く。


「肉体を媒体とすれば身体強化の術式も作りやすいし、魂の代わりとなる浄化物質を核とすれば簡単に退魔属性も得られる。その代わり、肉体媒体のオーパーツは通常のオーパーツと違って成長や進化は見込めず、さらに不浄物である肉体を媒体とするためオーパーツの浄化作用が毒となり肉体を蝕む」


 なんで肉体を媒体にすると成長が見込めないのか、その辺りはわからないが、とりあえず肉体媒体のオーパーツについてまとめると……。


■利点■

・量産可能

・即実用可

・恐らくメンタルのブレがオーパーツに影響しない


■難点■

・体が壊れる

・成長しない

・恐らく体調や体格がオーパーツに大きく響く


 と言ったところか。


「私から言わせれば欠陥品だ。あんなのとオリジンを一緒にしてほしくはないな」

「同じだろ。どちらも純正なオーパーツには届かない欠陥品だ」

(みずか)らの知見の狭さを認めず、同様に(けな)すことで己は間違っていないと主張するか。牛肉とカエルの肉を間違えても『どちらも同様に不味い肉だ』と言えばお前は恥をかかずに済むのかな? 楽な生き方で羨ましいよ、蒼鍔」


 ユンさんは怒りを通り越して呆れたように言う。


「俺に斬られたい人間が多くて困るな。お前が造ったオーパーツも、新たに出てきたオーパーツも、等しく斬り伏せてやればわかるだろ。どちらもカエルの肉だとな」


 このギルド……空気悪っ!


「……もういいや。勝手に続けるよ」


 アビスは喧嘩を止めるのも面倒になり、構わず話を続けるようだ。


「実は時限迷宮を奪われたのはこのギルドだけじゃない。他のギルドが所有する時限迷宮も同様の被害を受けている。つまり、敵の狙いは僕らではなく時限迷宮そのもの。もっと言えば、迷宮に眠る物資だな」


 時限迷宮ではアマツガハラで取れないような特別な魔石やドロップアイテムが取れる。迷宮のボスを撃破すると『宝玉』と呼ばれる魔石の上位互換と呼べるアイテムも手に入る。


 時限迷宮は宝の山だ。だからこそギルド協会が厳密に管理し、ギルドに分配している。


 時限が来るまでに出来る限りアイテムを回収し、時限直前でクリア。そしてアイテムのほとんどをギルド協会に献上。見返りとして何%かの魔石とドロップアイテムがギルドに配られる。


「タピロはすでに攻略され、時限迷宮の核である宝玉も回収された。そのせいで上はお怒りだ。このままではギルドランキングの降格は免れない。だからこちらも全力で事態の解決に当たる」


 アビスは指を3本上げる。


「いま我々が担当する時限迷宮は3つ。とりあえずこの3つを守護する。A級迷宮『リノケロ』を蒼鍔君に、同じくA級迷宮の『クネリ』を空木さんに、C級迷宮『ニフテリ』をユンさんに任せる」


 そして。とアビスは俺に視線を合わせる。


「僕と一色ちゃんのペア、そして葉村君と如月ちゃんのペアで襲撃犯の特定をする」


 ユンさん&蒼鍔&空木さん、A級組は全員防衛で、

 俺と如月、アビスと一色さんで敵の攻略、ってわけか。


「たまには時限迷宮で牙を研ぐのも悪くない、か」


 蒼鍔は分担に納得した様子。

 一方空木さんは疑問があるのか、手を挙げる。


「なんです空木さん?」

「マスター、襲撃者に接敵した場合、どれぐらいダメージを与えていいですか?」


 うん。まぁ、大事なことだな。極端な話、『無傷で捕らえる』と『殺しても構わない』ではやり方が大きく変わる。恐らくそのラインを決めるのはギルド協会。そして、すでに襲撃者に対するガイドラインは出ているはずだ。


「情報さえ取ればどれだけダメージを与えても構わない。一応、殺しはやめておいてよ。敵が格上なら話は別だけどね」

「了解です」

「あと質問が無ければ解散とするけど」


 誰も質問をしないので、


「はい解散。みんな頑張ってっちょ」


 蒼鍔と空木さんとユンさん、A級組は足早に部屋を去る。


「葉村君と如月ちゃん、もう少しだけ付き合ってもらえるかな?」

「構わないけど、どこに行くんだ?」

「夕凪ちゃんの病室だ」


 襲撃に遭ったA級シーカーか。


「わかった」

「私も大丈夫です」


 アビスと一色さん、如月と一緒に地下2階のメディカルルームへ。

 奥の病室に夕凪さんは居た。

 頭に包帯を巻いている。顔の青あざがまだ目立つ。


……手酷くやられたのがわかるな。


 こんな綺麗な女性の顔を傷つけるなんて、酷い連中だな。


「調子はどうだい?」

「すみません。暫くは……戦線復帰できそうにないです」

「そっか。こちらのことは気にせず体を休めてくれ。辛いと思うが、敵の情報が欲しい。覚えていることを――」

「覚えて……いる、こと――うっ!?」


 夕凪さんの呼吸が乱れる。

 汗が滲み出て、顔色が悪くなる。メーターにも異常が出始める。


「夕凪ちゃん……?」

「やめて!」


 扉から少女が入ってくる。

 猫耳のような髪の癖がある少女だ。


「事情は私が説明するわ。お姉ちゃんにあの事を思い出させないで!」


 お姉ちゃん……つまり朝比奈夕凪の妹か。

 確か名前は……朝比奈夜猫。

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