第52話 雪原の戦い
1撃1撃が大地を、大気を揺るがす。
斧を義手で受ける度、全身に衝撃が走る。
「ちいいいいいいいっ!!!」
スピードは互角、だがパワーはあっちが圧倒的に上!
「ごふっ!!?」
飯塚の斧にのみ注視していた俺は、飯塚の伸びた左拳にわき腹を殴り飛ばされた。
雪原を3回バウンドし、雪山の岩壁に背中を打ちつける。
「……斧だけじゃなく、体のサイズ変更もできるのか……!!」
「そのとーり!! これぞ俺のオーパーツの真の力さ!!!」
飯塚は体のサイズを3倍に膨らませ、突進してくる。受けきれないと判断した俺は何とか雪原を転がって突進を躱す。飯塚は岩壁に突っ込み、巨大な穴を作った。
飯塚の真っ赤な三つの瞳が俺を見下ろす。
「ちょこまかすんなよ葉村く~~~ん!」
「クソ……!」
俺の義手に、弾丸がぶつかる。
「如月……?」
弾丸は弾け、緑色の煙を出し、俺の傷を癒していく。
【万迦快煙】を込めた弾丸か! 助かった!
「ちっ! 裏切者がよぉ……!」
飯塚は岩壁に手を喰い込ませ、岩の塊を引っ張り出す。
目線は俺じゃなく――遠くに見える如月。
「やめろ!!」
「死ねよぉ!!!」
飯塚は岩の塊を投げる。
如月は冷静に、岩の塊に弾丸をぶつける。弾丸は弾け、岩に8本の楔を打ち込み座標を固定、空中で静止させる。
【八方塞】を込めた弾丸だな。さすがだ如月……!
そんで、隙ありだ!
「うぐっ!!」
俺は飯塚のわき腹に義手を突き刺す。
「テメェ……!」
「よそ見すんなよ。お前の相手は俺だ」
飯塚のわき腹の肉を抉り取り、そして――
「【幻影自在陣】!!」
4体の分身を生成する。
「一気に決める!!」
5人で飯塚を囲み、同時に攻撃を仕掛ける。だが――
「!?」
飯塚は真上に大きく跳躍し、体を10倍ほどに膨らませた。
「ドォーン!!!」
大の字で落ちてくる飯塚。
本体の俺は何とか飯塚の開いた股の間に飛び込み、躱すが、分身は全て潰されてしまった。
「【幻影自在陣】までも……! だがよ!!」
俺はうつ伏せに倒れ込んだ飯塚の背中に乗り、首元まで駆ける。
「ちぃ!!」
「これで終わりだ!」
首筋に義手をねじり込む。
「ぐああああああああああああああっっっ!!! いでぇ!!!!!!」
このまま首を切断してやる!!
「――なんちゃってぇ!!!」
「!?」
飯塚の首が、急速再生する。
首に刺した俺の義手は肉に絡まれ、動かなくなってしまった。
飯塚の体が3メートルほどまで小さくなる。同時に肉の圧力が強まった。
「なっ!? こんな再生能力、赤眼のミノタウロスには無かったぞ!!」
「俺を雑魚モデルと一緒にすんじゃねぇよ!! 超速再生に自由可変の肉体と斧! これが俺の真の力!!! 俺は――最強になったんだよぉ!!!!」
飯塚の背中や肩から無数の手が生えて、俺に向かって伸びていく。
「う、おおおおっ!!?」
全身を掴まれる。腕も脚も胴も――首も。
このままじゃ絞め殺される……!
――ボウッ!!!
「!!?」
誰かが、飯塚の全身を炎で焼いた。
炎が飛んできた方を見ると、見知らぬ男が真っ赤な杖型のオーパーツを握り、立っていた。
「いい加減にしろ化物め!!」
誰だ、アイツ……。
「うおおおおおおっ!!」
大剣を持った女性が飯塚の頭に飛び乗り、その大剣で俺の体に絡みついた腕を斬り裂く。
俺は腕を引き抜き、飯塚の首を蹴って飯塚から離れ着地する。同時に、俺の傍に大剣を持った女性も着地した。
「大丈夫かい?」
「アンタらは……」
俺の前に、さっきの杖を持った男性、大剣を持った女性、ブーメランを持った男性が立つ。
「ギルド“ビーストファング”の者だ。アイツは俺達の獲物だ。手を出すな!」
ブーメランを持った男がそう叫ぶ。
「まさか……行方不明になっていた連中か!」
「行くぞお前達! アイツらの仇を取る!!」
3人は怒号を飛ばし、飯塚に向かっていく。
飯塚は3人をニッタリとした笑みで見下ろしていた。
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