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第42話 拍動

「くっ!」


 俺はグローブに触れた瞬間ぶっ飛ばされ、廃車に突っ込んだ。


「あなた馬鹿ですか? さっきこのグローブの能力を聞いたでしょう」

「吹っ飛ばされることはわかっていたさ。ただ実際に吹っ飛ばされる感覚を知っておこうと思ってな」

「?」


 いま、吹っ飛ばされたことで色々わかった。

 まず飛ばされただけじゃダメージはない。そこから何かに激突することでダメージが発生する。簡単な話、何もない空間に飛ばされた所でダメージは無いということだ。それはつまり、奴が使っている高速移動はノーダメージで使えるということ。しかし高速移動中に何かにぶつかればただではすまないということ。

 そして吹っ飛ばしの速度にも差があるということがわかった。俺の体重は70kgほど。アイツは背が高くとも細身だから65kgぐらいだろう。アイツの方が明らかに俺より速く吹っ飛んでいた。体重によって吹っ飛ぶ速度は変わる、というわけだ(多分)。


 奴のオーパーツの活用法、攻撃方法は何となく見えてきた。


「それでは、まずは体術勝負といきましょうか」

「望む所だ」


 俺は廃車から出て、飛び出す。ウルはグローブによる高速移動で俺の背後を取るが、俺はすぐに振り返りウルの右拳を避ける。

 ウルは俺を吹っ飛ばそうと執拗に右手を出してくるが、それゆえに読みやすい。俺はウルの右手を潜り抜け、懐に入り、左の肘を腹に入れる。


「やりますね」

「!?」


 確実に入った――と思ったら、ギリギリで左手を挟み込まれていた。

 俺は義手で追撃しようとするが、それより前に奴の右手に背中をタップされ、地面に向けて吹っ飛ばされた。


「がっ!!?」


 ウルは地面にめり込んだ俺にさらに右手を振り下ろしてくる。俺は義手で奴の右手首を掴んで止める。


「【八方塞】!」


 ウルに8本の楔を打ち込み移動を封じ、立ち上がって右拳を握る。


「【風神演舞】」


 ウルが呟くと、ウルの周囲に竜巻が巻き起こる。

 竜巻は一気に広がり、俺は竜巻に巻き込まれ吹き飛ばされた。


「ちっ! 四文字魔法も使えるのか!」

「ええ、まぁ、これだけですけどね。あなた方のように何個も使えはしませんよ」


 ウルの右肩に刺さった楔が壊れる。ウルは自由になった右手で己に触れる。すると残った7本の楔が粉々に散った。

 ウルは己に吹っ飛ばしをかけることで無理やり楔を剥がしたんだろう。完璧な対応……戦闘経験の多さが伺えるな。


「確かに……A級上位の力はあるな」

「いやいや、まだそこまでの力は見せてませんよ」


 ウルは腰に掛けたポーチに左手を突っ込む。


「私の真髄はここからです」


 ウルがポーチから出したのは、1発の弾丸。

 全身に冷や汗が浮かんだ。


 もしも重さで吹っ飛ぶ速度が変わるなら――

 弾丸の速度は一体―― 


「まずい……!」

「さすがは察しが良い」


 ウルは弾丸を左手の親指でコイントスするように上に弾く。

 そして空中でくるくる回る弾丸に、右手のグローブで触れる。


(弾丸の向き! グローブで触れた角度! 奴の目線から着弾点を読め!!)


 カァン!! と乾いた音と共に弾丸は飛ぶ。

 速すぎる! 影を辛うじて追える程度……!

 俺は何とか弾丸の軌道を読み、義手の手のひらで受ける。弾丸は義手に当たると粉々に散った。

 義手から肩に伝わる衝撃――これはヤバい。義手以外で受けたら貫かれる! 【光点軌盾】も容易く撃ち抜かれる威力!!


「素晴らしい! これも防ぐのですか!!」


 ウルはまたポーチに左手を突っ込み、そして――


「では、これならどうです?」


 ウルは左手をポーチから出す。

 握りしめられた左手を上げ、ゆっくり開く。左手から零れ落ちるは8発の弾丸。ウルはひらひらと落ちる弾丸全てに、右手で撫でるように触れる。



――カカカカカカカカン!!!



 最早予測で何とかできるレベルじゃない。体を横向きにして狙える面積を縮小、右腕を縦にして脇から頭までを義手でカバーする。

 当然、義手でカバーした部位以外は無防備。背中を、腰を、脚を、弾丸が掠める。


「つぅ!?」


 弾丸が掠めた部位から血が噴き出る。浅くはないダメージが入る。


「やはり弾丸の数が増えると命中精度が落ちますね」


 俺は、焦っていた。

 ウルの強さに対して――ではない。


「なん、だ……!?」


 弾丸を受けた後、

 義手が、カタカタカタカタと震え始めた。



――義手(オリジン)が、おかしい!!!



 震えは止まらず、さらにドクンドクンと脈打つような音まで聞こえ始めた。


「や、ばい……!!」

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