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第41話 義手とグローブ

 光が散った地点に到着する。

 そこで俺達が見たのは、瓦礫に埋もれる凛空と、それを見下ろすウルの姿だった。


「凛空!」

「おやおや、3人揃ってしまいましたか」


 一色さんがウルを警戒し、俺が瓦礫をどかして凛空を助ける。


「おい、大丈夫か!」


 凛空は重傷、とまでは言わないが、もうリタイア一歩手前の怪我をしていた。肩は外れているし、右足はズタボロだ。

 俺は凛空を仰向けに寝かせる。


「……志吹、良く聞け」


 凛空は声を振り絞る。


「アイツは、間違いなくA級上位並みの力を持っている……!」

「なんだと……」


 そんな奴がなんでわざわざフェンリルなんかに入るんだ?


「オーパーツはあの右手のグローブだ。能力は、触れた相手をぶっ飛ばす。自分を飛ばして高速移動したり、攻撃を跳ね返したりできる。シンプルだが厄介な能力だ」


 唯一謎だったウルのオーパーツの能力……これは貴重な情報だ。


「……助かったぜ凛空。それを伝えるために、ここまで粘ってくれたんだな」

「ああ。悪いが俺はここまでだ。もう足が動かねぇ。――ギブアップだ」


 凛空の発言を聞き、協会員が転移クリスタルで現れる。


「数原凛空のリタイア宣言を聞きました。数原凛空を回収します」

「はい。お願いします」


 凛空は協会員に連れられ、場を離れる。

 俺は一色さんの横に立ち、ウルと向かい合う。


「随分と優しいんだな。凛空が能力を伝えるまで待ってくれるなんてよ」

「ここまで私から逃げ延びたご褒美みたいなものです。それに能力がわかった所で対策はできませんよ、私の能力に弱点はありませんから。彼の今の説明は無駄、というやつです」


 ウルは自分にグローブで触れる。瞬間、ウルの姿が消える。

 俺は体を反転させ、義手を振るい、背後に回ってきたウルを狙う。ウルがグローブで義手を受け止めようとしたので、義手をグローブに触れる寸前で止め、左手から無詠唱で【蒼炎】を起こし、ウルの腹にぶつける。


「むっ!」


 ウルは数メートル後ずさる。二文字魔法なのでダメージはほとんどないな。


「凛空からアンタの能力を聞いていたから対応できた。――無駄じゃなかったな」

「ふふっ。初見でここまで完璧に対応できるとは驚きましたよ。でも……あなたは対応できても、お隣の方はどうですかね」


 コイツ……やはり見ていたか。

 そう、俺は今の動きに反応できたが、一色さんは反応できていなかった。一色さんを狙われるとまずい。


「まずは……」


 またウルはグローブで自分に触れ、高速移動する。

 次の瞬間、ウルは一色さんの背後に移動していた。


「こっちからです!」


 ウルは空中で蹴りを繰り出す。

 俺は一色さんを抱きかかえ、ウルの蹴りを回避する。


「ほう。1人抱えて私と戦うおつもりですか?」

「一色さん、大丈夫ですか?」

「……だ、大丈夫じゃない」


 一色さんは鼻血を流している。

 顔も赤い、目も虚ろだ。


「え!? どうしました!? まさか攻撃を受けたんですか!?」

「ち、違う。下ろしてほしい。1人で逃げられる」


 一色さんは近くの廃墟の上層階に右手を向ける。


「【突竜鎖】」


 一色さんは鎖を右手から発射し、廃墟の5階窓際に先端を噛ませ、鎖を縮めて5階まで上がっていく。


「逃がしませんよ!」


 追いかけようとまたグローブで己を触ろうとするウル。


「「【光点軌盾】!!」」


 俺と一色さんは同時に光の壁を発生。

 一色さんはウルの正面に、俺はウルの真上に光の壁を発生させる。この状態で上か正面に飛べば壁にぶつかる。左右にスライドしてからじゃ追撃は間に合わない。ウルは飛ぶのをやめ、右手で正面の光の壁に触れ、吹っ飛ばして破壊する。


「お二人共優秀ですねぇ」

「おとなしく、俺と一騎打ちしてもらうぞ」

「構いませんよ。あなたには非常に興味がありますから」


 1対1、俺とウルは向かい合う。


「葉村志吹。あなたは色々な意味で異端だ。サポーターの身でありながら単独で迷宮を50階層以上踏破したり、独学で大量の魔法を会得していたり、サポーターらしからぬ身体能力を持っていたり……そして、あの赤眼のミノタウロスを単独で倒したり、ね」

「!?」


 おかしい。

 あのミノタウロスは表向きにはアビスが倒したことになっているはず……。


「秘密はその義手ですか?」

「さぁな。俺もお前に興味が湧いてきたぞ。やっぱりタダの新入りじゃないらしいな」


 ヒリヒリと、空間に緊張が走る。


「……」

「……」


 俺とウルは同時に飛び出し、そして義手とグローブをぶつけ合った。

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